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町工場の消費者向け商品開発について

日本のものづくり中小企業(町工場)は、後継者不足や下請け問題など様々な問題を抱えています。他の業界を経験した後継者が新たな取り組みとして消費者向け(to C)商品の開発を行い、下請け脱却を目指している姿も見かけます。しかし商品開発や企画を行った経験がないため苦労している企業も多く存在しています。今回の記事では私が町工場の商品開発を見て感じることを記載します。※全社がそうであるとは思っていません。

町工場のto C向け商品開発の目的

企業によって様々な目的があると思いますが、ここでは三つに分類します。

1:本気で to C 商品の売上をあげたい企業
2:従業員のやりがいの向上に重きを置く企業
3:新たな繋がりを求めている企業

全ての企業がto C商品で成功したいとは思っているものの、他の目的も同時に存在するため歪んだ商品開発になってしまいます。ではなぜ2、3のような目的が生まれるのか?

◆従業員のやりがいの向上に重きを置く企業
日々同じ商品を作り続けるストレスや無茶な納期指定によるストレス。技術力はあるが自由に表現できる場がないなど、従業員のモチベーションを保つことが厳しい環境です。新たに商品開発を行うことで、自らの仕事が目に見える形で世に出ていくことに喜びを感じれたり、作りたいモノを自由に作ることができるため従業員のやりがいに繋がります。

◆新たな繋がりを求めている企業
町工場の性質上地域の方や同業種の繋がりが強く新たなビジネスが生まれにくい。商品を開発することで、自社の技術サンプル品として展示会などに出店することで新たな繋がりを創出できる。

このように企業によって様々な目的が存在しているため、まずは何のために商品開発を行うのかを理解する必要があります。しかし本気で売上を伸ばしていこうとする企業であっても、”モノを作ること”に関してはプロではあるが、商品企画や販売方法など”モノを売ること”に関しては素人であるため陥る失敗があります。

作りたいという想いが先行してしまう

良い物を作ろうとしたり、培ってきた技術力を入れ込みすぎた結果、市場価格を無視した価格の商品になってしまう事例をいくつか見てきました。消費者は価格同等か、価格以上の ”価値” を感じた時にお金を出します。そこには競合他社の存在もあります。競合商品と比べた時の優位性は何なのか。スペック、価格、デザインはどうなのか。自社の商品だけでなく他社の商品を気にする必要があります。

同時に売り先も考える必要があります。自社の商品とクラウドファンディングとの相性は合っているのか?資金を募りたい気持ちはもちろん分かりますが、一度販路に関しても思考をしてみることが重要です。

ここまでの話はマーケティングの理論である

商品(Product)をいくら(Price)で販売し、どのような販路(Place)でどのような販促(Promotion)をかけていくのかという4P。

市場・顧客(Customer)の動向をきっちりと追い、自社(Company)の資産を如何に活かすかを考え、競合(Competitor)を分析するという3C。

本などで学んだことがあっても実際にものづくりを始めてみると、良い物を作りたいという想いが先行してしまい見えなくなりがちなポイントです。

町工場の物語を推しすぎな点

ドラマやドキュメンタリー番組の影響もあり、町工場の話になると”後継者問題や大手企業からの圧力” といった苦労しているイメージがあります。新たに異業種から携わる方々はそういった状況から ”救う” という感覚を持っている方もいるのではないか?むしろ ”対等” という視点に立っていれば安易に物語にしようと思わないのではないか?町工場の努力を必要以上に美徳なものと捉え、ストーリー化しているコンサル企業やデザイナーが多く存在していることが気になります。

そもそも、消費者はその企業の物語などどうでも良いです。商品に価格同等、価格以上の価値を感じ、付加価値としてストーリーが存在することは重要です。かけ離れた売価を補うためにストーリーをくっつけているようでは消費者は価値を感じません。

まとめ

私も何度も商品企画に携わってきましたが、売れるかどうかは世に出していないと分かりません。だからこそどれだけお客様に寄り添えるかが最も重要なポイントだと思っています。あのお客様に喜んで買ってもらうにはどうすれば良いか。ということを思考錯誤していくうちに、自然と価値のある商品ができあがってくるものだと思います。

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