IK MULTIMEDIA iLoud Precision MTM(2024/1/6追記あり)
昨年(2023年)の11月に購入候補のモニタースピーカーを比較試聴したことは、以前、コチラに書きました。その結果、僕が選んだのが、このIK MULTIMEDIA iLoud Precison MTM(以下iLoud )。年末に滑り込みで入荷して、早速、年末年始の仕事で使ってます♪
◉購入時のライバル
購入検討時に一番ライバル視したのはNEUMANN KH 150でした。本当は、もうだいぶ前から気に入ってたKS DigitalのC5やC8、そして2022年のInter BEEで衝撃を受けたC100を狙ってたんだけど、もはやスピーカー本体による音響補正は必須だと思ってたのと、予算的な問題(特にC100)で、泣く泣く除外することに。やはり自宅スタジオで使うことを考えると、単体で補正できることはとてもありがたい。僕はいままでもSonarworks SoundID Referenceを日本正式上陸時(Reference 3だったかな?)から愛用してきてたんですが、その効果に感涙するとともに、DAWで書き出す際のバイパスの手間や、セーフティのために12dB近く音量が下げられること(手動で解除は可能)など、細かなストレスがあったのも事実。単体補正できると、これらがすべて解決するので、作業効率も上がると考えたわけです。NEUMANNは一番最初のKH 120が発売された頃から、その誇張のない素直な出音に信頼感を持ってました。その後、KH 80 DSPで単体補正が実装され、それに続くKH 150、KH 120 Ⅱも補正対応で出てきました。今回欲しかったのはローエンドまでしっかり再生できるメインモニターだったので、サイズ的にKH 150かなと思って比較したんですが(3WAYのKH 310も気になってたけど、現状、単体補正できないし高いので断念)、どちらもその要件は満たしつつも、iLoudは音がシャープで定位感に優れる感じなのに対し、KH 150は低域〜中低域が太めで音がガツッと前に出てくるような迫力のある出音でした。これはiLoudがMTM(ミッド・ツイーター・ミッドとういう並びの変則2WAY)構成で、仮想同軸を実現してるのが理由かも。僕は同軸の定位感とか、音の隙間が見えるような感じが好きなので、まったく迷いなくiLoudに決めてましたね。(唯一、KSD C100には後ろ髪引かれたw)
◉実際に使ってみての感想
試聴は宮地楽器 RPMさんのスタジオルームで行いましたが、スピーカーは設置環境で印象が大きく変わるものも多いです。実際に自宅スタジオに導入したiLoudの印象は以下の通り。なお、設置は1.6m間隔で立てたZaorのスタンドの上に御影石のボードを敷き、その上にIsoAcousticsのアルミ製スタンドを使って横置きで乗せてます。
・やはり単体補正は必須!
補正前の音も良いんですが、やはり低域が出るぶん、暴れも大きくて。なので、やはり補正は必須かなと。補正作業は付属のマイクを本体背面のXLR端子に挿し、本体のボタンで行うのが基本ですが、2台をそれぞれUSBでパソコンと繋げればX-Monitorというソフトからも測定開始の操作が行えて便利でした。マイク設置箇所は4ヶ所を指定され、左右それぞれ単独で測定する点がSonarworksと違うところ。
ご覧の通り、超低域〜中低域にかけて大きく暴れてます。低音の吸音・調音と言うのはとても難しいので、こういった箇所をテクノロジーで解決できるのは素直にありがたいですね。ただ、やはりベーストラップなどで物理的に調音してから補正した方が結果は良くなると思うので、今後はその辺りにも手を出していけたらなと。
ちなみに、X-MONITORには様々なスピーカーをシミュレートする機能があるんですが、まぁあまり使わなそうかな。そういう場合は、実際に他のスピーカー使うので。
・解像度がやたら高い!!
スピーカーの解像度というのは実際に聴かないと分からないもの。コレでいろいろな音楽を聴いていると、使い古された表現ですが、いままで気づかなかった音がたくさん聞こえてくる!いままではごちゃっと一緒くたに聞こえてたものが、それぞれの音が分離して聞こえるので、気付きやすくなる感じ。これはトランジェント特性(音の立ち上がり、立ち下がり)が良いというのも関係してくるかも。つまり、アタックが正しく再現されるので、音のカタチが見えやすくなるんです。
そうなると、小さな音の再現性も高まるので、ディレイ(エフェクト)の数やリバーブの消え際なんかもいままでよりも見えやすくなる。ダイナミクス表現も高いので、そのディレイやリバーブがスピーカーの奥方向に消えていくような処理がされてる場合は、ちゃんとそのように聴こえる。これは素晴らしいですね。
低域の解像度も高いので、ベースラインがいままでよりもはっきりくっきりと見えてくる。ベースがバシッとセンターに定位して、どんなフレーズを奏でているのかがしっかりと分かります。
・欲しかったレンジ感を実現している
モニター買い替えの動機のひとつにレンジの広さ、特に超低域が見えるものが欲しいというものがありましたが、しっかりこの点にも応えてくれてます。僕の仕事は音楽だけではなく、MAや効果音制作なんかも手がけているので、これはとても重要。送られてくるロケの同録素材なんかは超低域に暗騒音が入り込んでることが多々あるんですが、そういったものを処理するのに30〜40Hzあたりがしっかりと見えるモニターが必要なのです(いままでは超低域が見えるヘッドフォンを併用して対処)。また、映画用の効果音なんかも低域を意識しないと迫力が出せません。サブウーファーを導入するという手もあるんですが、僕は2.1chという構成があまり好きではなくて……。サブウーファーが受け持つ帯域でも指向性を感じてしまうので、やるなら2.2chだけど、設置スペースや電源の問題もあるので、なるべく2chで実現させたかったのです。
中域や高域に関しても違和感はまったくないですね。KH 150などNEUMANNのスピーカーは若干高域が丸まってるように感じるんですが、この点もこちらを選んだ理由のひとつ。逆にいうと、iLoudの方がNEUMANNより派手めに聞こえる感じ。僕はクリエイトとエンジニアリングの両方をするので、iLoudの方が都合がいいと感じたのでした。
・アンプのパワーがあって快適
以前使っていたスピーカーはアンプ出力がトータル82Wで、しかも本体ボリュームを最大にすると音が少し歪みっぽくなってしまうものだったので、少し下げ気味にして使うと、オーディオI/F(RME Fireface UFX)のライン出力を+24dBu設定にしてもSonarworksの補正を入れると欲しい音圧を得るのにギリギリで余裕がない状態でした。けど、このiLoudはトータル175W、背面のボリュームをユニティ(センター)にしててもかなりの大出力なので、音量に不満を感じることがなくなりました。
・ストレスが減った!
冒頭に書いたいままでのストレスがすべて解消されました!これは作業効率にも繋がるし、精神的にも良いですね、やっぱり♪
・音質や機能の改善や追加が期待できる(2024/1/6追記)
本スピーカーは内蔵DSPにより制御されている。入力された信号は96kHzでADされて処理される。つまり、内部でプログラムが走っているわけだ。なので、メーカーから提供されるファームウェアのアップデートで音質や機能の改善や追加が期待できる。事実、直近のファームウェアアップデートで低域の補正精度が向上している。こういった将来性は、純アナログスピーカーでは望めないので、DSPスピーカーの面白いところかもしれない。
◉最後に
まだ使い始めて1週間ちょいで、エイジングもまだまだだろうけど、2023年最後の買い物は大正解だったなと満足してます♪ 比較試聴したスピーカーの中では圧倒的に安かったというのもあるけど、純粋に音が好きだったというのが大きいかな。まぁ、ちゃんと施工したスタジオと潤沢な予算を持ってたらKSD C100とハードウェアの補正システムとか入れてたかもしれないけど、現状の仕事道具としては文句なしの逸品ですね!あっ、ひとつだけ気になったのは、付属の電源ケーブルがちょい短いから宙に浮いてしまい、奥の機材庫から重いシンセとか引っ張り出す時に引っかけそうで怖いので、今後、もう少し長めのオーディオ用電源ケーブルとかに替えるかも。
あと、今年はバランスチェック用のデスクトップモニターも新調する予定😁