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患者のあり方、医師の立ち位置(あくまで個人的意見)

いつもは患者はさんづけにするのだが、並びの関係上こんな題にしてみた。
僕は自分の立場もあるのだが、ほぼほぼ偉そうに振る舞わないし、患者さんに声を荒げることはない。本日久しぶりに声を荒げた(?)というか少し上から目線の物言いをした。それにはこんな考えがあって、こんな価値観からだという話をしようと思う。
これに関しては僕が正しいとも思っていないし、反論もあると思う。むしろ、患者さん側の意見を聞きたい。僕はどうしても医療家系に生まれた関係で純粋な患者さん側の気持ちというものになれないし、シンプルに知りたいと思う。
表題にも書いているが全ての医師がこういう考えというわけではなく、あくまで個人的な価値観だということはご了承いただきたい。

まず、そもそも医療というのはお節介だと僕は考えている。基本的に病気は自己免疫で治すもしくは治るものだ。
それを現代科学や医療を使ってより早く、より良く、場合によっては自己免疫では治らない病気を治したりするものだ。特に内科関係はそういうものが多いだろう。
外科や歯科になるともう少し技術が介入するので、医師側が治している感はより出るかもしれない。

僕はなぜ医療をお節介と言っているかというと治すのはあくまで患者さん自身だからだ。たとえ外科や歯科であっても患者さん自身が治りたいから病院に行くのであって、医師側から治しますよと治療を押し売りしているわけではない。
まぁ事故で意識なくて緊急時とかは別になるかもしれない。その場合は今回割愛する。

これが大前提だ。だからといって医師側が偉そうにする理由もない。数ある病院から自分のいる医院に来たのだ。これは『』だと思う。お互い敬意を持って接すればいいのだ。医師側が偉そうにする理由もないし、患者さん側がお客様気分で「お客様は神様だろ!」という風に偉そうにするのも違うと思うのだ。まぁそもそもサービス業でも客側が「お客様は神様だろ!」というのはかなりナンセンスだ。言うなれば「私は神だ」と言っているのと同じなのだから。
病院の中には「患者様」という病院があるが、僕の価値観からするとそれもナンセンスだ。あくまで対等な人間同士が『』あって知り合った。ただ、それだけなのだ。

この価値観の僕が明確に声を荒げたのが1回、上から目線で話をしたのが今日を入れて2、3回ある。今まで見てきた延べ人数から考えると千人に1人というより万人に1人ぐらいの割合だ。声を荒げたのは明確に喧嘩を売ってきたおじさんというかおじいさんの喧嘩を買ったのだ(もちろん暴力はしていない)。これは僕も若く正直もうちょっとやりようがあったと思う。淡々と出禁にすれば良かった。そしてなぜかそのおじさんはその後ウチの病院に定期的に通うようになる。「なんでやねん!」

そして、今日もそうだったのだが、上から目線で話をすることがある。それは話を聞かない相手、もしくは「黙ってこっちのいうとおりしてくれたらいいねん」というタイプのひとだ。
このタイプのひとは普通に話を聞いてもこちらの言うことは聞かないし、僕の上記の価値観と立場からすると、患者さんっていうのは自分の身体を良くしたくてきている。それには専門的な知識や技術が必要できている。たまたまなのか『』があって選ばれたのがウチの病院だ。
専門的な知識や技術のないひとが医師の話を聞かないなら何しに病院に来たのか?意味がわからない。医師は患者さんの話を聞く必要がある。現状を把握するためだ。そこから検査などをし、導き出した答えである治療法を患者さんに話をする。大体1つということはないので、複数の選択肢の話をする。
原則科学的な根拠に基づく方法しか提示できないので、患者さんの望むものがない場合もあれば、厳しい選択を迫ることもある。

例えば、患者さんにがんがあったとしよう。それは患者さんも自覚していたものとする。治療についての説明段階とする。

治療法としては外科的な方法、内科的な方法、放射線治療があったとする。
複合的な組み合わせた治療や、患者さんの年齢を考慮したら痛みだけ取ってあえて治療しないと言うのも方法に上がるだろう。
3つの方法と組み合わせで7通り、治療しないという選択肢も入れて8通りの説明をしたとする。
そこで患者さんが「私は宗教的に外科的な手術はできない。抗がん剤は毒だ。放射線治療なんか放射能にあたるだけだ。身体にいいわけがない。どれも嫌だ!」と言われたとしたらどうだろうか?「では、痛みだけ取って治療しない方向でいきますか?」というと「ここは病院だろ!治せ!治せないのか!ヤブ医者か!」と言われたらどうだろうか?
万人に1人とかの割合だが、こういうひとが本当にいるのだ。
治療法も全部説明した。組み合わせや、なんなら治療しないと言う選択肢も与えた。どれも嫌だ。気持ちはわかる。そういうこともあるだろう。
僕が考えるどれも嫌だなという患者さん側の模範解答は「先生の話はわかりました。ただ、現状聞いてすぐでは方法を決めあぐねています。一度持ち帰って家族と相談します。」だ。これなら医師側の回答としては「わかりました。専門的な話も多いですし、わからないところがあれば何度でも説明しますので、遠慮せずに相談してくださいね。」となるわけだ。
散々説明して話の内容を理解しようともせず「治せ!治せないのか!ヤブ医者!」と言われて誰が相手できますか?そのタイプのひとは明かに僕に対して敬意がないというかバカにしているので、僕も敬意なく対応する。「僕は魔法使いではありません。回復呪文を唱えたら病気が治るみたいなこともありません。科学的根拠のある治療法を提案し、患者さん自身が選ばれたものを提供するだけです。ご不満であればセカンドオピニオンという制度もありますし、他の病院に紹介状を書きます。他の病院に行かれたらどうですか?」とか、「私は専門家であなたは素人です。専門家の話を聞かないであなたは病院に何しに来たんですか?あなたに都合のいい魔法が病院にあるとでも思ったんですか?」とか、まぁそこだけ切り取れば僕が痛いヤツだろう。
僕の友人の歯科医師は、自分が服用している薬がわからないひとに「この歯が痛いから抜け!」と言われて「現在服用している薬がわからないとできない。」と言ったら「オレが言った通りしたらいいんや!」と言われて静かにブチギレ「わかりました。ただ、最悪抜歯が原因であなたが死ぬ可能性があります。あなたは自分の決断で死ぬからそれでいいですよね。文句も言えないでしょう。でも、あなたの家族はどうですか?歯科医院で抜歯したら死んだってなったら僕を恨みますよね?そんなことになったら僕はこの歯科医院も歯科医師も辞めないといけない可能性があります。従業員もいます。あなたが死んだら僕と僕の家族、従業員の生活の面倒みてくれますか?あくまで自分の決定で無理言ってさせたから僕を恨むなって家族に遺言書いてくれますか?」と言ったヤツがいた。
結局その日は抜歯せず、別日に服用内容を確認して抜歯したらしいが、それはそれでなかなかの強気だなとは思う。

僕は自分のところに来てくれた患者さんは原則好きだ。なにかの『』だし、どうせなら幸せになってほしいと思う。それはウチの医院じゃなくてもいいし、自分には無理で他の病院でできることなら他の病院の受診も勧めるし、できることは極力するつもりでいる。

合う合わないはあると思うし、合わない病院に行く必要はない。新型コロナでよく見たのが反マスク界隈の言動だ。マスクをせずに病院に行ったらマスクをするように言われた。だから、「マスクの科学的根拠は?」と問い詰めたらマスクしなくて良くなった。みたいな投稿をよく見た。
言われるのわかっていて、それが不満ならそもそも病院に来るなよって話だ。迷惑だ。マスクしなくて良くなったのはこいつに無駄な労力を使いたくないという病院の諦めだ。ただの迷惑だ。
ちなみにそういう人には有志の会というのがあって、反ワクチンのグループの医師が集まっている会があるのでその病院を受診してほしい。

病院で患者さん側が不満なことは多々あると思う。病院側もまともとは限らないし、受付とか周りのコメディカルがおかしいことだってある。お恥ずかしい話だが、僕自身患者側で病院とモメたこともある。医師とモメた訳ではないのだが、簡単に説明すると僕が患者側だったのだが、大きい病院で医師都合でかなり急遽キャンセルになったのだ。そして病院の受付から電話がきて他の日の候補をくださいと言われた。正直、その日しかなくてなんとか予定をつけた日だった。だから代替案になる日が少なかったのだ。

そして僕は答える「〇月〇日でお願いします。」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「その日は無理だそうです。他の日はいいですか?」
僕「じゃあ、✖️月✖️日でお願いします。」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「その日は無理だそうです。他の日はいいですか?」
僕「じゃあ、△月△日で。」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「その日は無理だそうです。他の日はいいですか?」
僕「そちらからいくらか日程の候補をいただいていいですか?」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「それは無理だそうです。他の日はいいですか?」
僕「こっちから何回言うても合わんからそっちから出してくれっていうてんねん。そっち都合でキャンセルなったって今に至っていることはわかっているか?」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「なるべく合わせると言っています。他の日はいいですか?」
僕「なるべく合わせるなら今までの日程のどれかで合わせろ。あなたを挟むと時間かかるから直接話させてくれ。」
受付「担当医に聞いてきます。」しばらくして、
  「それはできません。他の日はいいですか?」
僕「マジでいい加減にしろ!」

みたいなことがあった。大きい病院なので僕自身の手術をしていて(僕がされる側)その術後のトラブルだから同じ病院の他科で診てもらいたかったのだ。僕個人の内容だから問題ないと思うのだが、キズが膿んで褥瘡がきつかったので、切った科ではなく形成外科に行こうとしてトラブった感じだ。基本的に切られたりする医師には何も言わないし、モメることもないのだが、そこに至ることなくモメた感じだ。
結局行かなかったので僕の身体には微妙な傷が残っている。まぁもうおじさんなのでいいのだが、もう少しなんとかならんもんかと思ったものだ。

ただ、結果的に行っていない。合わないなら病院に行かなくていいのだ。合わない医師に会うことはないし、そこが嫌なら違う病院に行けばいいのだ。それに行かないの(遠いから行けないなど)はそれは怠慢だ。自分の身体を本気で治したいなら遠くでも目的のある病院に行けばいいし、そこに行くほどのガッツがない、とりあえず近くでいいやというのであればそれはそれまでの話だ。自分が悪い。自分の身体を治すガッツがそこまではないということなのだから自分のモチベーションの問題だ。病院や医師の問題ではない。
みんな切羽詰まってから行くからおかしくなるのだ。普段からかかるかかりつけ医であったり、この科はこのひと、この科はこのひとみたいなのを探しておくことが大事だ。僕は体調が悪くなるといつも診てもらう内科医がいるが、万が一その先生が診断をミスったとしても僕は恨まない。彼が無理なら誰が診ても無理だと思っているからだ。
そのような関係を医師と患者さんの間で持ちたいものだ。

僕は医師と患者さんという間に限らず、友人や夫婦でもお互いがお互いに敬意を持って接するべきだと考えている。別に医師と患者さんが特別な関係というわけではない。
医師は目の前の患者さんに全力を尽くすべきだし、患者さんも医師を信頼すべきというよりは信頼できる医師に診てもらうべきだ。それは医師が全て誠実であるべきだと言うものではない。なぜなら合う合わないがあるからだ。価値観はひとそれぞれだし必ずしも合うということはない。自分の身体を預けるのに信頼できない医師に任せる方がどうかしていると僕は思う。自分の身体なのだ。

ちなみに今日の僕の暴言は、完全に間違っている自己診断をしてくる年配のひとが全くこちらの話を聞かないので、「あなたの言いたいことはわかりました。でも、間違っています。僕は専門家であくまで〇〇と考えていて、あなたのいう△△ではありません。当然あなたがしてほしい△△の治療法は違います。痛みが取れないし良くなりません。それでもいいなら言った通りしてあげますけど、症状が良くならなくても文句言わないでくださいね。」と言ったのだ。可逆的な処置であるし自分が納得するために一回してみるというのは悪くないだろうという判断だ。
ただ、一般的にはそうなのだが、こういうタイプのひとは往々にして自分の言ったことを無かったことにして、症状が取れないとこっちが悪いと言ってくる。予約も取らずにいきなり来る。ここでは短くまとめているが、いきなりこうなった訳ではない。患者さんの話を散々聞いたし、こちらも理解を得るために手を替え品を替え何度も説明した。それでもわからなかったし、通じなかった結論のこの発言なのだ。
みなさん考えてほしい。僕がどれほど時間をとったかを。弁護士なら話をするのにお金を取れるだろう。30分いくらとか1時間いくらとか。医療にはそれがない。説明にいくら時間をかけても1円にもならない。僕は時間をかけ何も得ることがなかったのだ。患者さんの理解、自分の満足感。そして、意味のない治療、それは最早治療ではない。これでやった結果ダメだったとわかれば少しでもいいのだが、、、

説明は合う合わないがあるだろう。僕は治療法や可能性の説明をめちゃくちゃする。正直説明し過ぎてわからないひともいると思う。ただ、聞かれたらなんでも答えるし、理解が得られなかったら説明の仕方を色々変えてアプローチも変える。そうすれば大体のひとは理解してくれるし、わからなくても「先生はどれがいいと思う?」とか「先生の家族やったら何を勧める?」と聞かれて「僕ならこれを勧める」という。
せっかく自分を選んでくれた『縁』のある患者さんなので、なんとか良くしたいと思っている。そのために納得が大事だと思うので、説明にも時間をとるし、できることはするようにしている。
これはあくまで相手もこちらに敬意を持ってくれることによって初めて回るシステムなので、相手と合わない場合は違うところに行ってもらうのがいい。これは医師サイドの話というよりはお互い様の話だと僕は思う。


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