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HPVワクチンの提訴の記事を見て

HPVワクチンの全国提訴の記事を見た。一斉提訴から8年経ったそうで、実際被害にあってからは10年ほど経っているようだ。

この記事になっている原告の女性のこの10年の苦痛についてコンコンと書かれている。高校1年の5月に3回目を摂取し、それから体調不良が続いているというものだ。前駆症状やその他の症状からギラン・バレー症候群とみて間違いないだろう。このギラン・バレー症候群というのは色々なウイルスの感染によって起こることが多いとされているが基本的には原因不明とされている。
自己免疫が自分を攻撃してしまい、身体が動かなかったり、全身に痛みを伴ったりと大変辛い病気だ。その病気に10年間苦しんでいるというものだ。それは想像を絶する辛さだと思う。若くいい時期をその苦痛と共に過ごさなければならなかったと思うと本当に辛かったと思う。
しかし、それは本当にHPVワクチンが原因なのか?ということとは別に考えなければならない。

まず疑問なのが3回目を摂取してから体調不良になったという点だ。トラブルがあるなら3回目というのは非常におかしい。1回目かもしくは免疫応答を考えて2回目まででトラブルがあってもいいと思う。ただ、これはこの症例だけの話なので他はわからない。

そして、HPVワクチンが原因だと決定づけるために何が必要かというと、「発生率の有意差」だ。どういうことかというと、ワクチンを打っていない人とワクチンを打った人をいっぱい連れてきてワクチンを打ってない人の中での病気の発生率とワクチンを打った人の病気の発生率に統計的に解析して差がないといけないのだ。

ギラン・バレー症候群でいうと1年間に10万人中0.4-4人発生するという稀な病気だ。この数より発生率が有意に高くなければならない。これには調査結果が存在し、有意差は出なかった。つまり、ワクチンを打った人もワクチンを打っていない人もギラン・バレー症候群の発生率は一緒ということだ。この情報はワクチンを原因とすることはできないという大きい結果だ。逆にここに有意差がないのに何をもってワクチンを原因としているかがわからない。

一番してはいけないのは直前にワクチンを打ったから原因と考えることだ。本当に直後なら原因の可能性もあるかもしれないが、直前にしたことが原因になるなら「ご飯を食べた」、「水を飲んだ」、「学校に行った」みたいなことも原因になり得ると言っているのと同じなのだ。
これは僕が今までも言ってきた「前後即因果の誤謬」という医療現場では一番やってはいけない行為だ。
これをやると本来の原因を見失い治療計画を誤るし、間違ったことをする可能性がある。医療は特別な勉強や技術の修練を経て、針で刺したりメスで切ったりしてもいいよという資格なのだ。高いモラルを必要とする。その中で間違った治療をするということは患者を傷つける可能性のある行為なのだ。これは厳しく判断しなければならない。

あくまで僕個人の考えを言わせていただくと、この女性はHPVワクチンの3回目を打った後にギラン・バレー症候群をたまたま発症した人だ。人間相手なので絶対にワクチンが原因ではないとは言えないかもしれないが、ワクチンが原因である可能性は非常に低いと考える。
つまり、この訴訟は原告敗訴になると僕は思う。この訴訟に支援している人がいるのかいないのか知らないがこの女性のことを思うなら訴訟とかに意識を裂かずに治療に専念したほうがいい。そのほうが予後がいいのでは?と僕は思う。

誤解のないようにあえて言っておく。僕はこの女性を大きい会社を相手に損害賠償狙いの嫌な人だとは思っていない。本当に若い頃から苦しんで苦しんで今に至っていると思う。若い頃からHPVワクチンが原因だと思い今まで来てしまったのだろう。悪いのはこの女性の親やHPVワクチンの副作用を煽った報道関係者だと僕は思う。

実際世界から日本はHPVワクチンについて遅れた国とされている。オーストラリアなどではワクチンのおかげでほぼ存在しない病気に年間1万人発症して3000人亡くなっている。子宮頸がんは結構タチの悪いタイプのがんなのだ。

これはマスコミの罪なのではないだろうか?
傷つくのはいつも弱者である。この女性は10年も病気に苦しみ8年も訴訟を抱え、そして敗訴する。うまみがなくなったらマスコミはいなくなる。この女性に残るのは長年の苦痛と訴訟費用だけだ。

苦しむのはいつも弱者なのだ。

HPVワクチン副作用疑惑に関する論文

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