見出し画像

プロレスと合気道

武術研究家のモノノフです。合気道は戦前からあるものなので、100年近い歴史があるし、その前の元となったとされる武田家の御殿式の武術となればもっと歴史があるだろう。それに比べて日本でプロレスが入ってきたのは戦後でそれでも60年ほどは歴史があるだろうか。

皆さんはプロレスにどんな印象をお持ちだろうか。「やらせだろ!」、「八百長だろ!」、「わざとやられている!」ましてや、盛り上げるためにわざと言い合いになったり喧嘩になるようなことを『プロレスをする』なんて代名詞に使われたりする。「実際は強くない」なんていうひともいるこれらはプロレスを知らないひとの発言だ。
武術を研究している僕は断言する

プロレスラーは強い!!!

間違いなく強いのだ。理由は

『常軌を逸している』

からだ。プロレスの八百長と言われる原因は『技をわざとくらう』ことにある。これはプロレスの戦い方である『ストロングスタイル』に由来する。この『ストロングスタイル』という戦い方はどういった戦い方かというと『相手の技を受け切って、なおかつ勝つ』という戦い方だ。これを否定するひとはボクシングしているひとに「なぜ蹴らないの?」といっているようなものだ。そういうルールなのだ。この発言は野暮以外の何物でもない。これはそういうルールなのだ。プロレスではたまにこのルールから外れるような試合もあるがなんでもありがプロレスのルールなのでそれもありだ。

プロレスは相手の技を受けることを前提としている。ここが『常軌を逸している』ポイントだ。どの格闘技どの武道でも相手の技をくらってよしとはしない。技をくらうことが前提なので、それに耐えられるように徹底的に身体を鍛え、受け身を練習する。

弱いわけがない

タフさは他の武道や格闘技の比ではない。それが一旦攻撃に転じれば弱いわけがないのだ。例えば一般人の僕がプロレスラーと戦うとしたら、1度掴まれたらほぼアウトなのに相手は超ド級のタフさを持った人間ということになる。最低でも武器が欲しいところだが素人が木刀で殴ってもどうこうなる身体ではない。木刀なら喉元の突きぐらいは効くかもしれないが相手はそんなもの警戒しているに決まっているみたいなことになるのだ。多分木刀で頭を思いっきり殴っても脳震盪も起こさないような作りになっている。

プロレスはあくまでエンターテインメントなので、相手の技をくらうというのが成り立つ。武道なら死んでしまうので、相手の技をくらうことはおろか、自分の技を見せることすら憚られる。プロレスの『技を受ける』という部分は合気道でいうところの『自ら飛んでいる』ように見えるという部分に通じるものがある。

抵抗して変な形で技をくらった方が
怪我をしたり痛かったりするのだ!

だから自ら飛ぶという受け身を取らざるおえないのだ。
では、プロレスの場合こういったタフな身体はどのように作られているのでしょうか。

新日本プロレスで鬼教官と言われた山本小鉄というひとをご存知だろうか。今回のヘッダー画像の人物だ。僕が好きな山本小鉄さんの言葉がある

「とりあえず1000回。」

とりあえずでするスクワットの数だ。まずこれぐらいしてから他の練習もしようかみたいな内容だ。むちゃくちゃだがそうなのだ。スクワットは自重トレーニングで身体のつながりも鍛えやすい。
プロレス特有のプッシュアップ(腕立て伏せ)がある。しやくり上げるような腕立て伏せで、以前の僕は鍛えている箇所がバラバラで良くないと思っていたのだ。しかし、プロレス特有のプッシュアップは目的が違うと僕は見ている『全身を繋げること』が目的の動きをしていると考えている。
そう考えるとあのしやくり上げる動きは有効なのだ。僕も全身が繋がって軸をしっかり意識できるようになってわかったことがあるのだが、

『中心力』のある立ち方をしているとダメージが少ない

のだ。これに関しては完全に正しい理由はわからないが打撃などのエネルギーが地面に抜けているためだと考えている。以前フルコン空手である先輩と同じぐらいローキックをもらったことがある。その先輩は2週間以上アザになっていたが、僕はアザもできなかった。当時の僕はローキックをカットできていない。モロにもらっているのになぜか大丈夫だったのだ。

多分、プロレスラーはそこまで長くない歴史ながらやってみてそれなら耐えられるとなったのだろう。実践主義だ。昔の武術もそうやって作られたと僕は考えている。難しい器具とか物理の数字計算はできなかったのだ。

これらのことからプロレスの昔からあるトレーニングは意外と有効であることが多い。首を鍛えるならブリッジ、下半身ならスクワットどれも『全身の繋げること』を意識できるトレーニングだ。最近流行りのパワーロープなどプロレスでは一番初期からあるトレーニング法だ。プロレスの神様カールゴッチはマシーンを使う筋トレは行わなかったとされている。身体の使い方をよくわかっておられると僕は感じている。

プロレスは格闘技の中ではエンターテインメントのショーの部分が多いのでナメられがちだが、中身はそんなナメれるものではない。例えば、試合の中で相手にハイキックをくらって気を失ったとする。他のどの格闘技でも試合終了だが、プロレスは続く場合がある。幸い(?)試合中に意識を回復して続行できた時に君は相手に何をするだろうか。

新日本プロレス育ちの選手はハイキックをやり返し、
全日本プロレス育ちの選手はハイキックをもう一回くらう

のだ。新日本プロレス育ちの選手の行動はまだわかるかもしれない。全日本プロレス育ちの選手の意味がわからないひとが多いと思う。
これは

もう一回やってみろ今度は意識飛ばさねぇぞ!

ということです。これが『受けの美学』ということです。新日本プロレス育ちがいい全日本プロレス育ちがいいとかそういうことではないのです。そういう文化です。新日本プロレス育ちの選手は『ナメられたらいけない』という教えに基づいています。『やられたらやり返す』のです。

倍返しだ!!!

というのをもう何十年も前からしておられます。
プロレスと合気道は受けの面はかなり共通するところがあるのです。わざと飛ぶぐらいで受けないと危ないのです。合気道も決め事のないような演舞がありますが、プロレスもそれに近いものがあります。その場のノリや空気感でアドリブが多くあるのです。プロレスは

アドリブ性が非常に高い格闘技エンターテインメント

なのです。それを実現するためには強靭な肉体が必要で、そのために日夜身体を鍛えているということです。それも『常軌を逸している』レベルで。

僕は強くなるのに『狂気』が必要だと思っていてそれは『常軌を逸している』ということだと思っています。普通のことをしていても普通の結果しか出ないので、『狂気』を孕むほど何かに打ち込むことが大切かなと思います。そのためには好きなものである必要があると思っていて、『好きこそものの上手なれ』ということになるのではないかと思うのです。

モノノフ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?