マガジンのカバー画像

お葬式のこと

13
運営しているクリエイター

記事一覧

あのとき、きみが嬉しそうに電話していた相手はだれやったん?

遺言により、旧友の伝記を作成しました。でも、本人が語る場面はありません。 先日、数年ぶりに会った編集者でノンフィクション作家のナカムラさんに、あれ面白かったよと言ってもらった。昨年のクリスマスのあと、大学以来の旧友が病気でなくなり、遺言?にしたがい、百頁余りの本をつくった。遺族と協力してもらった友人知人たちにも配布したけれど、まだ手元に残ったので、何人か読んでもらえそうなひとにも送った。彼のことを知らないひとにも、読んでほしい。シンプルにそう思った。 「いきなり三里塚の闘

ルディと、こまっちゃん。

「婦人公論 8/25」で「いまとぎのお葬式」の取材をしました。  訪れた場所のひとつは、生花祭壇に代えて、大きな「シルクスクリーン」を使った祭壇をメインに提案している葬儀社の倉庫。以前、別件で取材したときに「自宅に帰りたい」といわれながらも病院で亡くなられた故人のために、自宅の書斎を写真に撮り、それを映画館のスクリーンのように引き伸ばしてパネルに貼り付け、祭壇の棺の後ろのスペースに設置した。葬儀場での事例写真をみせてもらったことがありました。  まるでその部屋にいるかのよう

すごい!! 「お弔いの現場人」たち

「はたらくひと」というインタビュールポをしてきました。『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』(中央公論新社)のつづきみたいなもので、葬儀関連の情報サイトでの短期連載。  第1回は、エンバーマーさん。東京など都市圏の火葬場は混み合い葬儀まで日数があいたりする事情もあり近年要望が増えているという、ご遺体保存処置をおこなう専門職で、通常部外者は見ることのできない施術室にも入ることができました。  インタビューではあるのですが、「働く現場を見たい」と無理をいい、仕事の手

30の視点で語られる、あるお葬式の一夜

滝口悠生『死んでいない者』(文春文庫)を読んで    それ息で吹いたらだめなんだよ。   え。   線香の火、こうやって振って消さないと。   え、うそ。どうしょう。  小説の中に出てくるシーンで、高校の制服姿の知花が、祖父に線香をあげようとしたとき、叔父の一日出(かずひで)にダメだといわれ、動揺する。どうしょうと聞き返され、口にした一日出も困ってしまう。こうした、だれもが一度は経験してきたような些細なことが、一夜を描いた物語のなかには詰まっている。過ぎれば忘れてしまいそ

孫が任された「おばあちゃんのお葬式」

昔ながらの「自宅葬」のあるかたち 取材・撮影=朝山実 前回を読む☞https://note.mu/monomono117/n/n8b1136ad762e 「父のときも息子には一生懸命やってもらったんですけど、人数が多かったのでホールを借りてやったんです。でも、今回は母の希望でもあったんですよね」  2018年12月、埼玉県飯能市内のご葬儀に立ち会った。施行を任されたのは、鎌倉に拠点を置く「鎌倉自宅葬儀社」の馬場偲(しのぶ)さんだ。  亡くなられたのは偲さんの母方の「お

「自宅葬」という文化を推奨する、小さな葬儀社

取材・撮影=朝山実 「何もしなければ、始まらない。始めなければいいんです」  ここは鎌倉駅に近いビルの会議室。取材をはじめて1時間は経過していただろうか。「始めなければいい」ときっぱりと言い切る林さんは、「鎌倉自宅葬儀社」の立ち上げに際して事業コンセプトの設計を担ってきたパートナーだ。鎌倉まで取材に訪れたのは昨年秋だった。  鎌倉を拠点とする、鎌倉自宅葬儀社の設立は2016年。社名にあるように、自宅でのお葬式を提案する葬儀社だ。 「みなさん誤解しているのは、葬儀会社に電

45年続いた、大阪・阿倍野の珈琲店・力雀のこと。

 きょうで49日になります。大阪・阿倍野の「珈琲店・力雀」の雀さんが、むこうにいっちゃってから。 「シャッターを電動式にかえたのよ。40万円もしたんだから」頑張って店をやらないといけない。零細の店舗で毎月の出費はキツいけど、腰を痛めて難儀だからしかたない。そう言っていたっけ。本人もこんなに早め展開は考えてはいなかったにちがいない。  だから今年の春に45周年を迎えられたあとも、まだまだ続いていくものだと思っていたから、「力雀」を手伝われていた二代目さんのツイートを目にし

「社葬」に出席してドギマギしました。

   先日、社葬に出席しました。葬儀屋さんの社葬です。  なくなられたのは、「ドライブスルーのお葬式」の考案者の荻原政雄(株式会社レクスト・アイ前社長)さん。取材をさせていただいたのは今年2月で、急性心筋梗塞で6月に他界されたとのこと。享年67歳。  荻原さんと長年仕事を共にされてきた女性社員の方から電話をいただき、取材の際にはもちろんそんな様子もなく、驚いていると「自分たちも驚いています」と声をつまらせておられました。  およそ4時間のインタビューだったとはいえ、一度お

お葬式にも「早割」があるんだ!?

屋台村が出るというのだけれど、まったく想像できなかったので葬祭ホールの「グランドオープン」を見にいきました。 聞く人=朝山実  懇意にしている関西の葬儀屋さんが新しく葬祭会館をオープンさせるというので、帰省をかねて覗きに行ってみた。「グランドオープン」にあたって、イベントをするのだという。  イベントって……(?)   「お披露目をかねて、当日は朝から屋台を出したりしますので、よかったら」  お葬式の会館に、なぜ屋台? たこ焼とか焼きそばとかそういうの?  電話で尋

「ドライブスルーのお葬式」(後編)

【つづき】お年寄りや車イスのひと向けに、クルマに乗ったままお焼香ができる方式を実施した、長野県上田市の葬儀会館を運営する荻原社長さんを取材しました。 「じつは、見てほしいものがあるんです」  と案内された大理石の「喫煙室」。  豪華な部屋だった。てっきりご自身が愛煙家なのだとばかり思ったら、 「私はタバコは吸わないんです」というご返事。「でも、せっかく来られたひとたちがみなさん申し訳そうに吸われているのを見ると気の毒で」。  喜んでもらいたい一心で、ついお金をかけてしまったと

「ドライブスルーのお葬式」(前編)

 屋根の色は、グリーン。びっくりしました、と言うと、 「あれは、ぜったい外せなかった」と荻原さん。  長野県上田市に昨年末にオープンした「上田南愛昇殿」の外観は、お葬式の会場らしからぬ明るい色彩で、遠めにはファミレスにしか見えない。   しかし、 なんでまたドライブスルーなんだろう? 聞き手=朝山実(今回は撮影も担当しました)    わざわざ、この場所を訪ねたのにはもちろん理由がある。  車に乗ったまま、お焼香ができる。「全国初」ドライブスルーの葬儀ホールが出来

母のベッドで「仏壇」を作った話(2/2)

聞く人=朝山実 写真©山本倫子 (前回よりつづく)  今年(2018)1月に、土佐信道さん(明和電機社長)がツイッターに載せていた、「仏壇」に惹かれたのがインタビューの発端でした。  ツイッターにはこう書かれていました。 “昨年の大晦日、母が亡くなった。同居していた姉のうちに行くと母が寝ていたベッドは廃棄するとのこと。「あ。このベッドで仏壇つくれるかも」とビーンとヒラめき、葬儀の合間にアトリエで制作。母も笑っているだろう。”   お母さんが亡くなられたのは、昨年の大晦日

有料
100

母のベッドで「仏壇」を作った話(1/2)

聞く人=朝山実 写真©山本倫子  今年(2018)1月に、土佐信道さん(明和電機社長)がツイッターに載せていた、写真を見た。モダンながらもシンプルな造りの「仏壇」で、お母さんがふだん使われていたベッドで自作したというのに惹かれた。  ツイッターにはこう書かれていた。 “昨年の大晦日、母が亡くなった。同居していた姉のうちに行くと母が寝ていたベッドは廃棄するとのこと。「あ。このベッドで仏壇つくれるかも」とビーンとヒラめき、葬儀の合間にアトリエで制作。母も笑っているだろう。”

有料
200