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生活保護×オンラインを考える。

こんにちは。生活保護ケースワーカー(CW)のものかきもどきです。

通算3つ目の記事です。3日坊主という言葉がある訳ですから、この記事を書き上げても、まだ坊主の域は抜けない訳です。とかく、書きます。

前回の記事で、このnoteで考える、生活保護をめぐる私的論点を3つ挙げました。

さて、今回の記事では1つ目、

「対面、訪問、書類への記入・捺印を伝統としてきた生活保護行政にオンライン申請・処理が馴染むのか」

について、考えてみたいと思います。


とにかく”紙ベース”! 手書きだらけの記録

生活保護CWとなって配属された人が驚くことの一つに、職場に山と積まれた分厚いファイルの存在があると思います。通称、ケースファイルです。

ケースファイルとは、保護を受けている世帯の状況や支援経過などを記録するもので、1世帯につき1つあります。いえ、家族が多い場合や、長く保護を受けている方の場合はパンパンで入りきらず、分冊されて多い場合は5冊(!)というのも見たことがあります。ページ数は最低でも20ページ以上、数えたことありませんがパンパンに膨れ上がって博士論文集のようになっているものが大多数です。

なぜファイルが膨れ上がるのか。一言でいえば、「世帯の”ありとあらゆること”が書かれているから」です。

生活保護は、被保護世帯(保護を受けている世帯のことをこういいます)の最低生活の保障自立を目的としています。(←これが深いのですがここではさらっと流します)そこで、現在の資産や収入に関わる銀行口座やら給与明細やら各種年金・手当やらの関係書類はもちろん、自立に向けて人となりを知って支援するために、保護を受けるに至るまでの生活歴(生まれて〇〇学校を卒業し〇〇で就職し〇〇と結婚し長男〇〇が生まれ離婚し病気にかかり云々かんぬん。。。。)や、親族関係(援助できるか問うため)、その戸籍、住居の契約書、保険、医療・介護・福祉などの情報。。。。ちょっと書いてきて疲れてきました。読むほうは尚のことだと思うので、ここで割愛します。

そしてこのパンパンのファイルは、保護開始の年月が昭和30年代などの古いものもあり、おおよそ手書きであったりします。

この大量のファイルを今更電子化できない。そこで、今も記録を手書きでor打ち込んで印刷⇒ファイルに挟む。決裁も紙をシステムで打ち出して、ファイルに挟んで上司の机に山と積む。というオンライン化とは程遠いことが行われています。


おむつも交通費も全部!ハンコだらけの生活保護行政

生活保護の重要な原則の一つに、申請主義、というものがあります。

「あなたは経済的に大変なので、明日から生活保護を支給します」というものではなく、自分から「~という理由で大変なので、生活保護を支給してください」という申請が必要なのです。

ですから、日本の生活保護の捕捉率は2割(https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170630-OYTET50005/)、なんてことも起きるのですね。(これも話せば長いので気になる方は記事参照)

そしてこの申請は、保護を受けてから、臨時で支給をしてほしい!というもの全てに必要です。例えば、介護が必要な家族のおむつ代の申請、仕事の面接に行く交通費の申請、自宅の水道設備を治してほしいという申請。すべて、CWの訪問または来所による申請が必要です。(書類が揃っていれば郵送での申請もあり得ますが、基本は対面です。)

。。。想像できますか?おむつも交通費も毎月必要なものです。ですので、毎月申請書を書き、ハンコを押します。おむつが必要な状態の高齢者の方は役所まで出向けないことも多いので、CWがお家を訪問しその都度ハンコをもらっています。また、この申請に加えて、毎月の収入があったかどうかの申告書の提出も全世帯必要です。

このため、現場のCWの口癖は、「印鑑は必ず持って来て下さい」です。


生活保護オンライン化の糸口はどこにあるのか?

いかがでしょうか?このような膨大な記録と、徹底した対面でのハンコ申請主義が生活保護のオンライン化を阻んでいる、と私は考えています。

。。。阻んでいる、とまるで敵かのように書きましたが、私はこの文化・慣習を決して否定したい訳ではありません。

徹底した対面は、被保護者の方の状況を正確に把握するのに何より役立ちます。

過去50年に遡る保護の記録は、その方の歩まれてきた人生を振り返り今後の支援を考えるのに不可欠です。

現場は現場なりに、この文化を続けてきたことで、良い影響も受けてきたと思います。しかし、時代が急速に変わってきているのです。

良い面を残しつつ、少しずつでもオンライン化の糸口を見つけていかなくてはならない。次回の記事では、今現在行われているオンライン化の取り組みを紹介しながら、WITHコロナ、AFTERコロナの生活保護行政の姿を思い描きます。


。。。それにしても、生活保護の説明が膨らみ長文になってしまいます。私のように長々と書く記録がオンライン化を阻んでいるのか。。。笑

私も2日かけて書きましたが、最後まで読んでくださった皆様、おつかれさまでした。ありがとうございます!


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