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生活保護×オンラインを考える。その2

こんにちは。生活保護ケースワーカー(CW)のものかきもどきです。

通算4つ目の記事です。やっと三日坊主の危険水域を脱します。書き終わるまで油断できませんが。。。

前回の記事では、オンライン化とは一見程遠く感じる生活保護行政の”紙ベース”記録の現状、文化・伝統とも呼べる徹底した対面主義について説明しました。

もちろん、時代は令和なので、生活保護行政にもちゃんとシステム化されているところはあります。今回の記事ではそれについて触れたのち、生活保護を受ける人にも、CWにも役立つような生活保護のオンライン化を私なりに描いてみたいと思います。


昔は手打ちで計算…今は、生活保護システム導入

生活保護CWの主な仕事は、受給者の方の生活保護費の算定です。

生活保護費は、食品や日用品の購入に充てる生活費+家賃にあたる住居費で構成されています。それが、世帯の人数や年齢や家賃、また住んでいる地域や病院か施設か、などで異なります。

で、生活保護は「足りない分を補う」=捕捉性の原理、というものがあるので、年金や給料などの収入を差し引いた分を毎月支給することになります。これが、年金も毎年変わる(月数円単位ですが!)し、働きに出られている方の給料はもちろん毎月異なるので、その都度計算しなおします。

これが驚くことに、ひと昔は電卓で計算していたようです。職場の先輩から聞いた記憶が定かではないのですが、10年ほど前だったかなあ。

今はもちろん、システムが導入されています。給料明細や年金はがきを提出いただいて、その金額をシステムに打ち込むと、自動で生活保護費を算定してくれます。(と書くと秒で終わりそうな仕事ですが、諸々あり時間はかかります。。。)

その他、生活保護に関連する別の課のシステム、例えば介護保険課(介護保険料や要介護情報)や市民課(住所)、税務課(課税情報)、こども課(児童手当など)とも連携していて、わざわざ庁内を歩いて聞きにいかなくても、ボタン一つで情報を教えてもらえることもあります。(教えてもらえないので足を使うこともいっぱいあります(笑)顔を合わせて話すことも大事。)


生活保護行政にAI導入!?タブレット導入の取り組みも!

その他、生活保護にICT技術が活用されている事例はあるだろうか?この記事を書くにあたって少し検索するなどで調べてみました。(ステイホームなので勘弁して頂きたい)

厚生労働省が推進する調査研究事業の報告書を発見。タブレット導入など先進的な取り組みをしている自治体へのヒアリングや、業務効率化を目指したアプリデモの開発などをされていました。

タブレット導入の自治体では、訪問時に受給者の情報を手軽に見られたり、記録を簡単に書けたりという業務効率化が図られ、残業時間が半分になった、という記述もありました。一方、やはり膨大な情報量をすべてタブレットに落とし込む訳にはいかず、紙と電子化の併用の難しさがあるようでした。

生活保護業務支援アプリも、デモ開発されていました。これが現役CWから見ても今すぐほしい!と思わされるアプリでした!受給者の情報の閲覧や検索機能も使いやすそうでしたし、前回記事で触れた記録作成も、フォーマット化されているところはワンタッチで入力可能に。

一番良い!と感じたのは、受給者の方のメールアドレスに各種申請の入力フォーマットが送れる、というところ。前回記事で触れた、膨大な量の申請が電子化され、受給者にもCWにも大きなメリットがありそうです

CWのためだけではなく、何より受給者のためにオンライン化を進めよう!!

このようにざっと調べたところ、CWの業務負担改善にはICT技術が使われ始めているものの、生活保護受給者側の利便性をよくするためのオンライン化、という視点はまだまだなされていないように思います。

これは、私の思い過ごしかもしれませんが、受給者側に立ったオンライン化が進みにくいのは、「生活保護を受けるのだから、少し面倒でも対面して長々と書類記入して手続きしてください」とやや上から目線があるような気もしています。

個人的には、生活保護とオンラインは大変相性がいいと思います。なぜなら、生活保護は市民に直接かかわる法制度の中でも、際立って複雑で大変分かりにくい制度。よって、アプリ操作などのタッチ一つで自分が受給できる確認したり、手続きを行ったりすることは大きなメリットとなるからです。

CW側も非常に大きな負担軽減になります。なぜなら、受給者がこうしてオンラインで手続きすることで、CWの聞き取りミスも防げるし、自分が知らない制度だった場合調べて答えるという業務も減る。受給者が書いた手書きの申請書をわざわざ打ち直す、ということもなくなります。

ただし、こうした取り組みを進める上ではネット環境のない人、ITリテラシーがない人を取りこぼさないことが重要です。受給者の中には、携帯電話すら持っていない方も多くおられます。排除せず、且つ利便性を高める。現場の人間だからこそ、内から声を上げて改善を図っていきたいと思います。

コロナショックによる生活保護急増の兆し!オンライン化はまったなし

この記事を書いている5月10日に、生活保護申請数がリーマンショックを超えるペースで増加になる、との観測があるとの報道がありました

リーマンショック時には、158万人だった受給者が1年後には約175万人まで急増しています。これを上回るペースとなると、今までの生活保護行政のやり方では、困窮者を受け止める最後のセーフティネットとしての機能を果たせなくなると危惧します。

生活保護のオンライン申請の必要性について、困窮者支援団体の稲葉剛さんもツイートをされていました。

仕事を失った若年層の大量流入が予想され、まさにオンライン申請まったなしの状況です。通常業務に加えて、オンライン化の取り組みを進めることは容易ではありませんが、このnoteでは引き続きその方向を模索していきます。

次回の記事では、遠い昔(昭和初期)にできた生活保護の制度が、現代にどう適用されているか。また、適応できるのか。について、考えてみたいと思います。

真面目なnoteですが、よければ引き続きお付き合いください!


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