生活保護受給者にクーラー、Wifiは贅沢か?

こんにちは。生活保護ケースワーカー(CW)のものかきもどきです。

娘(1歳10ヶ月)がいよいよ保育園に通い始めました。母べったりの内気な性格で数か月の大泣きバトルを覚悟していたのに、なんと5日で泣かずにバイバイできるように、、、子どもの適応力舐めてました。私も仕事頑張ろう。

前回の記事では、令和時代に現行の扶養照会という制度が合っていない!という私の考えを述べました。

今回の記事では、生活保護受給者にとって実質”贅沢品”とみなされ、購入が難しかったり、契約し続けられなかったりといった生活の必需品・インフラについて、CWとして実際であった事例をもとに考えてみたいと思います。(最も大きな話題の自働車については過去記事で述べました)


シャワー設置が認めてあげられなかったおばあちゃん

私が担当している地区には古い市営住宅があり、浴室はあるが、風呂釜がない(風呂釜自分で購入!!)という設備が基本でした(昭和40年代に建ったもの)。保護受給者は風呂釜を購入するお金など持っていませんので、「住宅維持費」という項目の一時扶助を使って風呂釜を支給します。

ある生活保護受給者のおばあちゃんは、病気の後遺症で片手の指が動きにくくなっており、身障手帳を所持されてました。そこで、親族の方が自分でスムーズに身体を洗えるようにシャワーつきの風呂を購入したいと言われました。

もっともな申し出でしたが、住宅維持費の上限(10万円ほど)ではシャワー付きの風呂は購入できず。。。

こういう身障手帳を持っている場合など、特別な事情がある場合に「特別基準」を適用し、上限を上げられる可能性もあるのですが、協議の結果は、シャワーがないと入浴ができない、という程ではない、という理由で却下となってしまいました。

生活保護費で物・設備などを現物支給する際、一般世帯との均衡を理由に支給できないということがよくあります。保護受給者だけ特別扱いするわけにはいかない。平たくいえば、保護受給していない人でも、シャワーなしで片手で入浴している人は大勢いる、ということです。

しかし、逆にいえば、シャワーなしの生活は、健康で文化的な生活に当たるのか??ということです。データがないので急に主観的になりますが、私の世代(アラサー)が新しく賃貸物件を借りようとしたとして、シャワー付きでない物件はおそらく選択肢に入らないと思います。

こうした、生活保護行政で事実上”贅沢品”とみなされ支給されないものが、今どれほど世間で”贅沢品”であるのか??と疑問に思うところがあります。


クーラーの購入が認められた!ただし、初めて保護を受けた人だけ。。。

CWとしてひと夏超える間に、多ければ5世帯くらいからクーラーを購入したい、という相談を受けます。もともとクーラーがついていない物件に住んでいる人が多数であり、またクーラーがあったとしても古く壊れてしまった、という相談も多いです。

クーラーの購入相談を受けた際には、社会福祉協議会による貸付制度(生活福祉資金)を利用できないか、社協に相談するように促すしかありませんでした。認められれば、貸付金でクーラーを購入し、それを保護費から天引きで月数千円×数年かけて返済していくことになります。

ところがこの貸付が認めてもらえないことも多く、熱中症のリスクにさらされ、死亡事例まで起きてしまいました。

そこで、2018年7月に厚労省が通知を出し、初めて生活保護を受け、夏を迎える世帯(熱に弱い高齢者や障害者、子どもがいる世帯など)は約5万円程度でクーラーを購入できる、ということになりました。(参照:DIAMOND onlineエアコン代ようやく支給へ、熱中症を網戸で耐え忍んだ生活保護の現実)

一方で、これよりも前から保護を受けている人はやはり貸付の相談しか手段がなく、またこの制度も知らず(CWから知らされず)団扇にタンクトップ一枚で夏に耐えている受給者は多いです。

また、暖房代がかさむ冬には、灯油代として冬季加算(地域によって違う。寒さが厳しくない地域では月3千円等、北海道などでは1万円超えることも)が毎月なされていますが、夏季加算はありません。クーラーを使うことが前提とされていないからだと思います。

しかしまた、クーラーもシャワー同様、全く贅沢品ではありません。

ここまでくると、一般世帯との均衡が壁になるならば、一般世帯にも全てクーラーを支給してくれ!!!という気持ちにもなってきます。

ここでも、生活保護の捕捉率の低さ(生活保護を受けられる基準だが受けていない人の方が大半である)が、課題の解決への大きなハードルとなっているように思います。


ネット環境はもはや電気ガス水道の次のインフラ!!

上記に加え、WITHコロナ時代の生活保護の運用として気になっているのは、家庭でのネット環境(インターネット契約、WIFI設備など)、スマートフォンの所持です。

今現在、育休中で職場の最新通知が見れていないので分からないのですが、今回のコロナでの休校措置⇒オンライン学習導入の流れで、保護家庭の学生は参加ができたのでしょうか。

オンライン学習には、最低でもPCとネット環境は必須でしょう。ところが、保護家庭でこれらが整備されている(または整備できる金銭的余裕がある)家庭はごく稀だと思われます。

テレワーク(保護受給中の労働者は肉体労働が多く、あまり該当しないと思われますが。。。)にしても、ネット環境は必須です。

ところが、保護費の計算にはネット環境の費用は含まれていません。携帯電話も、ガラケーの月数千円以内なら何とか捻出可能。。。というレベルだと思います。子どものいる家庭は、児童養育加算などあり単身世帯よりは余裕がありますが、ほかの出費も多く、ネット環境整備にお金を回す発想はなかなか生まれないでしょう。

高校の授業に必須ということになれば、「高等学校就学費」などの品目で支給することはありうるかもしれません。育休復帰後、通知を確認したいと思います(笑)


そもそも生活保護費はキチキチ(の構造)。自由度を上げられないか??

以上のように、生活保護費では買えない、維持できない贅沢品(一方、世間では必需品・・・?)がまだまだあることを指摘しました。

これらは、それぞれの品目の必要性が認識されていない、ということもありますが、大元の問題は「生活保護費がキチキチで、文字通り食べるだけで精一杯」というところにあると思っています。つまり、クーラーを先々買うための貯金やネット環境維持費などに回す余裕がないのです。

生活保護の原則の一つに、基準及び程度の原則、というものがあります。

基準及び程度の原則
生活保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭または物品で満たすことができない不足分を補う程度において行います。その基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないとしています。(生活保護制度の4つの原理原則と扶助給付の種類 受給者数の推移)

この、最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないという表現。これは、かみ砕けば「これだけお金あれば食べれるでしょ、暮らせるでしょ。でも他の保護受けてない人よりも贅沢したらダメだから、このギリギリの金額でやってね」ということ。少し乱暴な言い方で申し訳ありません。

一般世帯との均衡を考えれば難しい問題ではありますが、生活保護受給者にもう少し貯金の余裕があれば、「この贅沢品??」の問題には、対応できることも大いにあると思われます。

そして、この貯金がしにくい構造は、保護世帯の経済的自立の問題にも大きくかかわってきます。これについては、次回のnoteで触れたいと思います。

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自分で書いておきながら、だんだんテーマが大きく難しくなってきました。。。なるべく正確に、ただやりすぎると疲れて続かなくなってしまうので(笑)自分の思いをしっかり書くことも大切にしてやっていきたいと思います。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!!

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