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ヒトラボ<CASE-2>

僕はとある研究室に勤務する、名もなき学者の卵だ。
日々、様々な研究を重ね分析し、この世にあるヒト・モノ・コトを全て解き明かしていきたいと思っている。

僕のラボには毎回、変わった研究対象の依頼が舞い込んでくる。
そうそれは、他のラボでは扱わない特殊な案件だ。

ここで公表するデータはそういった分析の結果と、僕たちが働くラボの日常をお見せできれば・・・

公人、素人関係なく「宣伝」が繰り広げられる中、多発する「匂わせ」という手法。

先で述べた者たちは、お金、知名度、人気、自己肯定感を高める・・・といった利益を得る為という理由がある。

と思っているのだけれど、以前から依頼を受け、データを集め分析中だった案件の結果が出て、その報告書をまとめるのにみんなバタバタしているんだ。


その今回の研究対象は・・・

≪匂わせ投稿≫

という事例について、だ。

現代社会において、SNSは重要なコミュニケーションツールといえる。
その用途は多様化し、個人間の繋がりを深めるだけではなく、コミュニティを発生させたり、ビジネスに発展せることもできる。

発信者は様々な方法で自分=投稿の興味へと導くことに躍起になる。
ビジネスでは利益に影響することだが、個人でも、いかに注目を集め人気を得る為、自分を良く見せようとあの手この手と工夫を凝らす。

では、この「匂わせ」という投稿で得られる利益とは何か。

この事象を解き明かすことができないと考え、我々はいつものようにデータ収集を開始することにした。

「匂わせ」とは、表現方法のひとつであり、言葉や態度、文章といった様々なものに使用される。

意図した事をストレートに伝えず、回りくどく表現する。
正解のヒントだけ。
全部は言わない、一部だけ。

もったいぶるような表現は、我々は使用しないので、今回のケースの分析にはかなり時間を要した。


SNSでの「匂わせ」なる投稿の一例としては、

二人分の料理の写真に「いつもありがとう、また行こうね」と意味ありげな一言を添える。

この時、その他の情報を何一つ記載していないことが、通常の投稿ではないことを見分けるポイントだ。
誰かと食事に行ったんだろうことをわかるようにはするが、誰とかは伏せる。どこの店かや料理がおいしかった等もないことから、これはそういう類の報告投稿でないことがわかる。

そう、匂わせ投稿で載せられる写真等は、匂わせたいことを載せる為のただのツールであって、そこに意味はないというものなのだ。


このような多くの「匂わせ」る投稿を分析し、ある顕著な特徴が判明した。
それは、その投稿は”「特定」の誰か”に向けられたものだということだ。

「宣伝」投稿ならば多くの”「不特定多数」の誰か”に届けるものであり、多くのに対して、誰が見てもわかりやすいということが利益を得る為には重要だ。
しかし「匂わせ」投稿はそれと大きく異なり、”「特定」の誰か”にさえ、わかればいいというものなのだ。

そして驚くことに、そうすることで、”「特定」の誰か”に直接伝えるよりも、意図する効果を倍増させて伝えられる、というのだ。

ここで不可解なのは、何故はっきりしたターゲットがいるのに、わざわざ関係のない者にも公開するのか。
その答えを解く鍵は、おそらく次のフェーズにある。


では一体、それを行うことによって得る利益とは?

興味深いことに、効果は大きさに比べ、そこに我々が考えるような「利益」と呼べる明確なものはないのだ。

本人(投稿者)とその「特定」に指定された者との間で発生する、何か、の様だ。承認欲求を満たすものであるには違いないだろう。

そこで鍵になるのが、前フェーズで不明だった点だ。

何故はっきりしたターゲットがいるのに、わざわざ関係のない者にも公開するのか。

それこそがこの「匂わせ」投稿の最大の目的であり、利益になるのだ。

わかる者にしかわからない、そんな秘密の共有から得られる優越感。
自己顕示欲の表われによるマウントで満たされる自己肯定感。

これが「匂わせ」によって得られる、真の利益なのだ。

意図した効果を倍増させられることが目的だ、なんて思われがちかもしれないが、このようなひと癖もふた癖もあるような手法を用いる者が考えることがそんな安直なものではない。

・・・という我々の見解から、この結果に辿り着いたのだ。


さて。とりあえずの分析は以上になるのだが、研究してわかった面白いデータを少しおまけで教えよう。

「匂わせ」投稿をするにあたり、ある条件が必須になる。
それは、ターゲットが必ず閲覧するということだ。
その条件がクリアーされていないなら、それは「匂わせ」ではなく、利益を伴わないただの大きな独り言だね。

あと、「匂わせ」という粋な伝え方をしているのにも関わらず、その投稿に直接、ターゲットが返信コメントしてしまう、という事例を目撃した。
そんなことしたら折角の「匂わせ」を「消臭」してしまっているじゃないか!

笑えるだろう?匂い、だから消臭・・・失礼。
僕は研究者だから、なんでも説明してしまう悪い癖があるんだ。ああ、わかっている、説明がいる笑いはスベっているのと同じ、だろ?大丈夫だ、知っている、研究者だからね。

今回はここまでにしよう。

また次のケースでお会いしよう。
それでは、良い眠りを・・・
now saving...shutdown,,,See You!!

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