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"ウノ目石の消失"ーショートショート

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『A市功労賞ー柴犬のハナちゃん』

今月19日、A市在住の小原さん(47歳)のペットの柴犬、ハナちゃん(雌・3歳)が市から功労賞の表彰を受けた。

A市では、3月下旬頃からウノ目石がなくなる事件が相継いで発生し、問題となっていた。
ハナちゃんは、4月中旬の散歩中、B川河川敷に落ちていたウノ目石を発見。持ち主の美女木さん(同市・52歳)のところに無事に返還された。美女木さんは、「まさか戻ってくるとは思わなかったので、嬉しい。今後はなくならないよう気をつけたい」と喜びを表しつつ、気を引き締める。
その後も、池のそばや側溝で次々とウノ目石を発見したハナちゃん。
たくさんの市民を救った功績で、A市はハナちゃんの表彰を決定した。

A市の土橋市長は「ウノ目石をなくして困っていた市民の方々を救ってくれた功績は大きく、今回の表彰に至った。市としても大変ありがたいこと。ハナちゃんには今後も是非ご協力をお願いすると共に、市民の皆さんには十分ご注意いただきたい」とコメントした。

飼い主の小原さんは、「昔から石が好きで、変わった形のものがあると拾ってきちゃうんです。でも、それが皆さんのお役に立ったなら、飼い主としても嬉しいですね」と喜びの表情を見せた。


解説:「ウノ目石」・・・円盤状の鉱物で、鵜の目の形に似ていることからその名が付いたと言われる。この地域では昔から神への供え物にされてきた。他人の粗探しや、自らの欲を満たすことにばかり懸命になっていると、消えて失くなってしまうという言い伝えがある。


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※この物語はフィクションです。登場する人物・犬・物の名称は架空であり、実在のものではありません。


(5月18日改)

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