詩『ドールハウス』

晴れと曇りのあいだにいて、背後には月が控えている

切り取られた夜はハリボテのままだ

遠くで狼が吠えているけれど、耳を傾ける者はごくわずか

レバーひとつで反転する昼夜は まだそのときを迎えていない

棒立ちの番人は、その指示を与えられていない

ガラス越しの光にしか照らされなくなって久しい わたしたちの世界に

見本市にきた客たちの影が 時おり落ちる

寄り集まって生きることにした わたしたちは

ハウスをどんどん伸ばしていった

どんどん伸ばして 伸ばしすぎて倒れたハウスに

関心を向ける者など もちろんいない

"優秀"と認められたハウスは、見本市の客に選ばれる

そうして引っこ抜かれた 栄誉あるハウスがどこに消えるのか

わたしたちは知ろうとしない

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