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#019 本人は怒るかも バリー・ハリス『ブレイキン・イット・アップ』

バリー・ハリスは、玄米のようなピアニストだ。

とにかく、硬くて、舌触りも良くなくて、よく噛まないと、味が出てこない。しかし、その良さに目覚めると、虜になる。

この方ほど、かたくなに、モダンジャズの初期の語法(つまり、バップ、と言いますが)を守っている人もいない。みんな大体時流に合わせて、己を変化させてゆくが、この人の場合は、それがない。それが、めちゃくちゃ嬉しい。そんな彼も、つい最近他界してしまいました。悲しい。

この方の演奏は、いつもだいたい安定しており、悪く言えば同じで、一つのアルバムの良さが分かると、他も簡単にわかるところがある。だから、一つ好きな演奏が見つかると、そこから先に手が伸ばそうという気持ちが出てこない。ファンなのに、持っている枚数が少ないのはそのせいだ。

しかし、このファーストアルバムを気まぐれで聴いてみて、「あぁ、これは一つ頭抜けていいなぁ」と思った。ここには、ジャズにあこがれた一人の青年のピュアな信仰告白が刻まれている。それがとてもいじらしい。

バリー・ハリスは同じバップ期のピアニスト、バド・パウエルにあこがれてたと言われているけれど、僕は、どちらかと言うと、バップ期のアルト・サックス奏者、チャーリー・パーカーによりあこがれていたのではないかと思っている。

一曲目の「オール・ザ・シングス・ユー・アー」はテーマから弾かないというスタイル。これは、たまにチャーリー・パーカーが行った手法だ。さらに、「オニソロジー」はチャーリー・パーカーの定番だが、「パスポート」というパーカーの秘曲を取り上げたり、パーカー・マニアっぷりを存分に発揮している。

このアルバムではないが、パーカーの事を歌った(文字通り、声をマイクに通し歌うのである)自作曲もあるくらいだ。絶対に、パーカー大好きだろうと。

僕は、ジャズの評論家に対し常々思うんですけど、ジャズミュージシャンの代表作として初期のアルバムばかりを紹介するのは、どうなんだろうと。ミュージシャンに対して失礼じゃないかなと。

でも、ここでは、僕もこの自分に課してきた「禁じ手」を「解禁」せざるを得ないなと。でも、最後に聞いた方がいいかもしれないという気持ちもある。惜しむらくは、もう少しピアノの音が前に出てきてくれれば・・・。


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