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#026 ガテン系の子守歌 ジョン・コルトレーン『バラッド』

#ジョン・コルトレーン は僕にとって異物だった。

ジャズとは全く違う文脈にいる人のように思えた 。音色から異様なオーラがあるし、フレーズもとても異質だった。

20年間ガテン系で頑張ってきた労働者が、突如、デスクワーカーとして中途入社してきたような違和感を感じた。

他人と全く違うということだ。それはそれで個性でありグレートということなのだろうけど、 #チャーリー・パーカー のグレートさとは何か違うような気がしていた。

おっと、待て待て、コルトレーンを批判できるほど、俺は聴いてないからな、このあたりの印象で終わらせないと。ペンの滑りには気を付けなければ。ふー(と一息)。

そんな、コルトレーンだが、名盤と言われる『バラード』を聞いてみて、そのいじらしいまでの優しさに思わずほだされてしまった。同じたとえでわるいけれど、 ガテン系の労働者が、生まれたての赤ん坊をあやすような、野太い声で子守唄を歌うような、不器用さがそこにはあって、思わず「微笑ましい」と思った。

コルトレーンの一音一音は考え抜かれている。パーカーのように、次のフレーズに勢いを出すために、装飾的に加えられる音符などはなく、一音一音が意味があり、同じ熱量で奏される。

ある意味 #セロニアス・モンク にも近いけれど、モンクの方が断然遊びがあってユーモアがる。コルトレーンはバラードだろうが、快速曲だろうが、関係なく、至極真面目に音符を敷き詰めてゆく。そういえば、コルトレーンはモンクの教えも受けていたっけ。そういうところを学んだのか。

これほど、熱量のあるバラード集も珍しく、そこには、コルトレーンの意図とは別に、本来の「バラード集」の狙いから外れた面白さがあり、燦然と輝いている。


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