日記:明日への散歩
2024.09.01
台風が運んできたかのように、9月が訪れた。
これから秋に向けて少しずつ涼しくなってゆく。
この移ろいゆく時期が1年の中で最も好きだ。
そして、今年ももう残すところ4ヶ月となる。
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ある日の暮れ方、図書館の帰り道。
行きは地下鉄を乗り継いだが、帰りは珍しくバスを使うことにした。
天気は不安定で、窓一面には雨粒が浮かんでいる。
その雨粒から通して眺める町の景色は滲んでいて、信号のシグナルや車のバックライトが暈けて見える。視界に入った雨粒が下に垂れてゆくのを最後まで見届けると、また新たな雨粒が窓に刺さる。頼りない雨音を聴きたくて、イヤホンを外してみる。
「次、停まります」という声なのか、音なのか、ボタンが響く。バス停からバス停までの距離の近さに驚く。4,5名の乗客が降りる。私も降りてみる。周りを見渡せば、傘を差す人と差さない人がいて、差さない人の中にも、傘を持っている人と持っていない人がいて、私はどうすればいいのだろう。ビニール傘に付いた水滴を撫でてみる。
雨の日は、こんなどうでもいい観察や黙考で無心になれる。
雨という情景には、好きになったり嫌いになったりを繰り返している。
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明日、いよいよ職場復帰となる。
どうせこうなるとは思っていたが、今日は心が落ち着かず、何処かを浮遊している感覚で時間が過ぎた。この緊張や不安のコントロールは、1年という休職期間でだいぶできるようになってきたと思うが、やはりまだ完全には程遠く、考えれば考えるほど頭の中が蝕まれていく。なんとか断ち切ろうと、kindleで本を読み始めるも、同じ一行を行ったり来たりしてしまい、内容が入ってこない。すると、段々眠気に襲われて、眠くなるなら大丈夫だと、少し安心できたりもしている。
この緊張や不安の大部分は、"今後"に対してではなく"明日"に対してのものだ。もっと言えば、"明日の出勤時"に対してのものだ。1年間かけてきた迷惑に対する謝罪と感謝。それらを伝えるべく、どのようなムーブをとるべきなのか。かける言葉は?表情は?タイミングは?こういったことを嫌でも考えてしまう。
でも、いくら明日を嫌がったって時間は経過するもので、ということは、この不安な明日もいつかは過ぎるわけで。きっと、必ず、なんとかなる。
眠くもなるし、お腹も空くから、大丈夫。
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アイスクリームの食べ頃は難しい。
例えば、学校や仕事から帰ってきたとき。日中はまだ暑いので、家に帰ったら先ず一番にシャワーを浴びたい。アイスは後のお楽しみ。
そうして、お風呂上がり。お風呂に入ると喉が渇く。よって、冷たい水を飲む。すると、それだけで十分満たされた気持ちになって、むしろそれ以上冷たいものは口が受け付けなくなる。ご飯の準備を始める。
そうだ、ご飯の後だ。食後のデザートでいいじゃないか。よし、今日こそは…!と思ってご飯を食べ進めると、段々とお腹は満たされていく。さぁ、お待ちかねのアイスクリーム。…あれ、でもお腹がいっぱいだ。いや、アイスクリーム1つぐらいならもちろんお腹に入る。全然食べられる。けれど、この満腹状態で食べるのって、なんか勿体無いような…。
こうして、昨年の夏に購入したサクレのレモン味が今日も密かに冷凍室に眠っているわけだが、もしかすると時折深夜に冷蔵庫から聴こえてくる「ブーン…」という不穏な機械音はヤツの怒号なのかもしれない。
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8月はまだ終わったばかりだが、夜と朝の気温は下がり、過ごしやすくなってきている。エアコンの出番もだいぶ減った。
昨日は予定が何もなく、部屋から一歩も出ないでダラダラとしていたら、窓から見える空の不気味な茜色に18時を気付かされた。
罪悪感のため、外に散歩へ出る。今まで触れてこなかったアーティストのアルバムを何か聴きながら歩こうと思い、JUDY AND MARY『THE POWER SOURCE』をイヤホンから流す。
ただただ部屋の中で音楽を流すだけでは作業用BGMと化してしまい、耳には入ってきても頭には入ってこない。かと言って何も手を動かさず曲だけに集中しようとすると、なんだか時間を浪費しているような焦りと後ろめたさに駆られてしまう。その焦りと後ろめたさを中和するのにピッタリなのが散歩である。アルバム1枚分の長さはおおよそ30分〜1時間なので、散歩の長さにも丁度良く、適度な集中力で聴くことができる。この時間がとても心地良くて、大切に思えた。
夜はやはり涼しかった。なんとなく知らない道を歩きたかったけど、少し不安を感じて、最寄駅から一駅行った辺りを彷徨っていた。
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大丈夫。
私には、少なからず必ず、味方でいてくれる人がいる。
いつも近くで支えてくれている大切な人も。
イヤホンの向こう側にいるアーティストも。
苦しい時に笑かしてくれるお笑い芸人も。
お気に入りの本屋の店主さんも。
小説の中に生きている登場人物たちも。
日影で呑気に欠伸をしている猫も。
みんな勝手に、わたしの味方。
~Today's Song~
ホープランド / 米津玄師
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