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4.貸金の法~現代語訳「金」by紋之助

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考えれば考えるほど難しいと感じるのは、金貸しの法である。
「訳がないこと」と単純に思ってはいけない。

4-1 その人を見よ

金を貸すには、まずその人を見よ。
正直な人か?
勉強家であるか?
利口な人か?

正直でなければ約束の期限を守らず、利子も納めず、
元金もとかく踏み倒されがちである。

勉強をしていなければその人の商売は常に不繁昌で、
貸した金もついには使いきってゼロになり、
元金も利子も返す見込みがなくなる。

利口でなければ機を見る目もなく、
借用資本の運用の道もつたないものになる。
従って収益の予測もできず、
利子も滞りがちになることを免れない。
いかに正直でも、いかに勉強していても、
智恵なき正直と勉強は、結局何の効果も結ばない。

4-2 使途を見よ

使途が正しくなければ、金を貸した甲斐が無いばかりでなく、
返ってその人のためにならないのである。
使途を明言できない人に貸してはならない。
自身で確信が持てない仕事に投じる金なら、むしろ断るべきである。
そうすれば、後日、悔いが残ることはない。
もし、賭博、あるいは相場に使用する金ならば、
いかに立派な担保を提示され、どれだけ懇願されても
決して耳を貸してはならない。
要はその使用方法が生産的か否かを見極めることにある。

4-3 担保品を見よ

最後に、その担保品を見よ。
担保品は確実なものかどうか、
どんな場合でも滅失するの恐れはないか、
もしあるならその予防法は備わっているかどうか、
いつ何時、世間に出しても普通の価格で売れるものか、
その辺りの注意が大切である。

4-4 金貸しと慈善は異なる

信用貸しは、あえてダメとは言わない。
もしその人が突然死するとか、不幸にして火災に遭遇するとか、
その人が病気になるとしても、
貸した金に損がないことが担保されているなら
信用貸しをしても全く良い。
しかしながら、こうした万が一というのは例外でもある。
損することもやむを得ないと分かっているのなら、
むしろ、断じて貸してはならない。
金貸しと慈善は異なるものである。
これを混同してはならない。

4-5 泣き言を言う人に貸してはならない

泣き言を言う人には決して金を貸してはならない。
泣き言を言う人は意志が薄弱である。
意志が簿弱な人に、最終的に成功はない。
こんな人に金を貸すのは、あたかも金を捨てるに等しい。

4-6 貸した金が世の利益になるか考えよ

「金を貸すのは利息を取るため」とだけ考えてはならない。
貸した金が世の利益になるのかどうかも考えるべきである。
世に利益をもたらさない金の貸しかたは決してすべきではない。

4-7 借主が感謝して返しに来るようになれ

貸した金は、返済期日には借主が感謝して返しに来るように
なっていなくてはならない。
借主を喜ばせ、「おかげさまで利益を得ました」
と言わせる技量がなければ、金貸し上手とは言えない。

喧曄顔で返済を迫る貸しかたは、はなはだ下手なやり方と言うべきである。
それはつまり、利息が得られればそれで良いという考えの表れである。

4-8 情けで貸すな

金を貸す上においては、決して人情を入れてはならない。
人情で金を貸すならば、決して利息をあてにしてはならない。
また、返済期限を決めてはならない。
先方が返済可能になる時を待て。
場合によっては、その金を与えるくらいの覚悟を持つ必要がある。

4-9 高利を貪るな

高利をいとわずに金を借りる人は甚だ危険である。
それは他で融通ができなかった人である。
そんな人を相手にしてはならない。
努めて避けるべきだ。

4-10 貸す人は借りる人より利ロでなければならない

金を貸す人は、金を借りる人より利ロでなければならない。
もしそうではない時は、
貸した金は貸金ではなくなり、損金に変わると思え。
損金を貸金と考える者ほど憐むべき者はない。
そして、その借り主ほど憎むべき者はない。

4-11 返す見込みがない者に貸してはならない

抵当物を売らなければ返す見込みがない者へは
決して貸してはならない。
他から借り替えしなければ返す見込みがない者へは
決して貸してはならない。
貸せば容易に取り立てできるものではなく、
これを無理に取ろうとすれば、
すなわちその人を殺すようなものである。
怨恨が貸主の一身に集まり、
あたかも悪魔と同視され、
ついにはご近所と一緒に
長年にわたって暮らすこともできなくなる。
要するに貸金の方法を良く領得していないからである。

4-12 むやみに貸してはならない

たとえ1銭の金でも、
貸そうとする以上は、その始まりから終わりまでを良く検討せよ。
考えが足らなくて金を貸すと、
借りる人は返って不幸を招き、
貸した人は損失を見ることになる。
まさしく、共倒れとなって終わるのである。

4-13 まずは慎重になれ

菓子折りに心を狂わせるな。
心にそぐわないところがあれば、
菓子折りに騙されず、勇気をふるい、断固として謝絶せよ。
この勇気があってはじめて人は安全を得る。
この勇気がない人は金貸しをやめよ。
それでも貸すなら、むしろ、その人に金を与えよ。
貸すも与えるも、動機が同じだとすれば、
最初から与えることにしたほうが先方も安心だし、
こちらも心持ちが良い。


貸金法については、以上でその要点をほぼ言い尽くした。
これ以上の説明は敢えて必要ない。
しかし、読者は説明が簡潔だからと言ってこれを軽んじてはならない。
これをよくかみ砕き、味わう場合においてのみ
真理は存在し、自身を幸せにするのである。

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「金」とは・・・
「金」とは、明治時代後期、現在のりそな銀行の前身である
不動貯金銀行を興した銀行家、牧野元次郎が著した本です。
およそ120年くらい前の書物です。
本書は、要するに、簡単に言えば
お金持ちになるためのノウハウが書かれているのですが、
驚くべきことに、その秘儀・秘訣は、
昔の今もほとんど何も変わっていないのです。

繰り返しますが、この本に書かれている内容は
現代でも十分に通用する内容です。
十分に読む価値がある本です。
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