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家庭崩壊を経験した僕が心理学で人生逆転したたった一つの物語。

こんにちは!まなとです。

あなたはどんな人生を送ってきましたか?

まだ何か足りないと思っていませんか?

僕の人生はどん底でした。

家庭崩壊、精神疾患、人間不信を経験しました。

しかし、心理学が僕を闇から連れ出してくれました。

そんなストーリーを共有し、

あなたも足りないものを埋められる。

そう思って欲しくて、今日は共有します。

「黄昏に咲く青春」

主人公=鈴木(高校卒業までは竹田)、俺

家庭崩壊も経験し、孤独な時間も多かった。

同じ経験、もっと辛い経験をしたことのある人もいるでしょう。

毎週月曜日にアップするこの小説が、

あなたの人生のお役に立つと幸いです

「黄昏に咲く青春。」


眺めている。
差し込むはずの優しい西日は
ただバスの一面を照らしているだけで、
僕の方には見向きもしない。
虚ろな黄昏に、日々嫌気がさして、
変わろうとしない景色が流れていくのを眺めている。
昔、父が言った言葉がある。
「俺の人生だ。お前のことなんか知ったことか。」
確かにその通りだ。
誰もが誰かの息子であり、娘である。
それは紛れもない事実なのだけれど、
血の繋がりがあるからと言って人生を縛られるとかなり苦しい。
現状、俺の家庭は絶賛崩壊中だ。
毎晩のように怒号が飛び交い、
毎晩のように僕の親友二匹の鳴き声がする。
俺はどこか無感情だからなのか、現実から目を背けたいからなのか。
毎日繰り広げられる、討論会に意見を言う気も起きなかった。
友達は多い方じゃなかったけれど、中学の頃からバスケをやっている。
仲間はみんな個性的で、疲労しか残らないはずの部活は
いつも楽しい記憶だけが残っていた。
朝練に夜練。どちらかといえば強豪校に属する実力者揃いで、
走る量もシュートの量も尋常じゃない。
それでも最初は部活に通っていた。
思春期真っ最中の田舎の高校生の楽しみなんて
何があるかは想像に難くないはずだ。
誰が誰に告っただの、誰と誰が付き合っただの。
まあ別れの噂もあるけれど。
学校内でできる遊びなんて恋愛くらいだろと言わんばかりに、
血気盛んにそこそこ頭のいい連中が室内で騒いでいる。
この学校はいわゆる進学校。部活動も活発で、全国レベルの部もある。
けれど学校がそこそこのレベルだからと言って、
所属する人間全員が能力に恵まれるわけではない。
「中学の成績は高校に入るとあてにならないよ。」
よく塾のおじいちゃん講師が語っていた。
当時は気にもしていなかったし、思いの外、
志望校に入学できたから呑気にしていたら、
おじいちゃん講師の言う通り、
俺の成績は学年で「落ちこぼれ」の烙印を押されることになるのだ。
そんな俺にも意外なことに彼女がいる。
中学の同級生で、高校は別になった。
馴れ初めというほどではないけれど、
なかなか面白い紆余曲折を経て、交際している。
彼女はとても誠実で純粋な子だ。
それでもって意外と積極的。
中学の委員会で一緒だったことは奇跡というべきか、
中学1年生から3年生までずっと同じクラスだった。
確かに俺も彼女もそれを認識はしていたのだが、
席が近くなったこともなかったから、
それまで話した記憶がほとんどない。
けれど奇跡というべきか、委員会が同じになった。
最初はどちらも意識はしていなかった。
なんでもない他愛もない会話。
なかなか始まらなかった委員会の会議の前に
俺が得意の小ボケを繰り返し、ノリよくツッコミを入れる彼女。
俺は他の人と同じように会話をしていたつもりだけど、
後から聞けば、彼女にとっては徐々に特別な時間になっていたらしい。
接点が増え、お互いに笑い合う回数が増えて、(ザイアンス効果というやつ。)
彼女の方から積極的に話しかけてくるようになった。
どちらかと言えば、奥手でそういうことに疎かったから、
俺はいつもの俺として対応をする。今思えば酷い話だけれど。

中学の頃から家庭環境はあまり安定していなかったからか、
だんだんと人との関わりが苦手になっていた。
夏が終わり、3年生は部活の引退。
それからは高校受験に向けて集中し始める時だ。
クラスにバスケ部がいなかったから、
人を避けるようになっていた俺は
必然的に教室内での居場所がないように感じ始めていた。
恋というのはどうやら人を盲目にさせるらしい。
多感な時期だし、一人寂しく座っている人間に
話しかける場面は、業務連絡か業務連絡しか思いつかない。
しかし、彼女は違った。
ある冬の学期末。
テストも終わり、冬休みの猛勉強期間に向けて
着実にそわそわし始める時期だ。
しかし、彼女は違った。
そわそわしていた原因が違ったようだ。
「あのー、竹田くん。住所教えてくれないかな?
年賀状を送りたいんだけど。」
ちょっと驚いたー。いや、内容にじゃなくて。
まだその頃携帯というものは世間一般的に
ましてや中学生なんかが持てる代物ではなかった。
持っていたのはリア充みたいなチャラいやつら。
年賀状という文化自体は至って普通で、
友達や恋人同士では特別なやりとりだったはずだ。(自分だけかもしれない)
「え?年賀状?あ、ごめん…」
実はその年に祖父が亡くなっていた。
年賀状は2親等内で不幸があった場合には出してはいけない。
日本人なら当たり前の知識だろうが、
変に真面目な俺は彼女に断りを入れた。
「今年、おじいちゃんが亡くなって…受け取れないんだ。」
彼女は寂しそうな顔をしていた。
「そっか…それはごめんなさい。じゃあ、また年明けだね。」
彼女はそそくさとその場を去った。
今後の出来事からすれば、これはさほど重要ではないとはいえ、
その時の彼女にとっては、かなりのダメージだったのではないだろうか。

年も明け、絶妙な一週間である冬休みが終わり、
本格的な受験ムード。
公立中学校の生徒である200名ほぼ全員が、人生初めての受験。
進路相談なども頻繁に行われ、
順調に選択肢を絞っていく生徒、勉強してこなかったツケで、
志望できる高校がかなり限られている生徒。
中にはヤンキーのような不登校もいたから
高校には行かないやつもいたみたいだ。
俺は幸いにも中学の時は学年の半分より上の成績はあった。
バスケ部や通っていた塾の仲間のレベルも高かったから、
それに引っ張られて勉強する環境にはあった。
俺は最終的に私立高校、公立高校の2校に絞り、
正直どっちでもいいや、と思いながらそこそこの勉強に励む毎日だった。
大抵の場合は私立校受験の方が先にスケジュールが組まれる。
この街には1つだけ私立校があり、特待生制度もあるような学校だったから
約200名中、2/3くらいはその学校を本命や滑り止めとして受けていた。
「お前は何狙う?多分俺の成績だと半特かな。」
「お前偉いから、絶対に全特だろ。」
塾の仲間はその私立校でどのレベルの特待生がゲットできるかを競っていた。
特待生半額免除と特待生全額免除。
免除というのは学費の免除額である。
半特なら半額の免除になるし、全特なら交通費以外は全て負担される。
どちらにしても家計にはかなり優しい。
俺の学力レベルだと、半特を取れるかどうか際どい学力ではあったが、
どちらにしろ興味はなかった。
「お前はギリギリだろうなー。」
「うるせぇ。なるようになるわ。」
少し強がりつつも本当にどうでもよかった。
私立高校受験も終わり、合格発表はうちの中学で直接行われるという
少し風変わりな発表が毎年行われる。
約150名ほどの生徒が廊下に並び、白い息を吐きながら適当に時間を潰す。
合否通知は淡々と行われ、担任の教師から1分ほどで人生の選択肢を渡される。
「はい。合格おめでとう。」
中を開け、合否の確認。特待生半額免除の文字。
どうやらそこそこの成績が取れたらしかった。そんなに手応えはなかったけど。
廊下に出てすぐ、同じ塾の仲間から、
「おい!どうだった?特待だった?」
俺と同じく、ギリギリの学力だった男女に同時に聞かれる。
「半特。」
素っ気なく返したその返事に、女子の方が悔しそうにしていた。ちょっと面白い。
ちなみにその男子は結局、全特。女子は半特。
その後集まった塾での自主勉強会で、ほぼ全員が特待生。
3人が全特を手にしていた。
「まあ予想通りの結果になってつまんないな。」
本当に予想通りの結末で、特に祝勝会もなく、
春はまだ遠いぞと囁くように白い雪が夜空に舞う静けさの中、
公立校の本命が残っている生徒は何事もなかったように勉強を再開した。
デジャブは起こるものだな。
「竹田くん。パソコンのでいいからアドレス教えて。」
年末に聞いたような物欲しそうな優しい声が
勉強する気も起きてない左側から聞こえてきた。
「え?アドレス?いいけど。なんで?」
愚問だ。考えてみればそんなこと聞いてはいけない。
無知で、鈍感なのは罪なのだと1ヶ月後に知ることになる。

無知で、鈍感なのは罪なのだと1ヶ月後に知ることになる
2月に入り、最後の寒さと言わんばかりに
その年は町内がよく白化粧に包まれた。
すでに特待生という肩書きを手にした俺は
公立校入試に向けて勉強する気はあまり起きなかった。
少し前のはずなのに、昨日の晩御飯を思い出せないくらいの感覚で
何をして過ごしていたかはあまり覚えていない。
2月14日。この日だけはなぜかカラフルに色づいていた。
受験生にとっては関係ないはずの甘い日。
俺にとっても何も関係がないと意識することもなく
その日の授業を終え、帰路に着いていた。
違和感すらなかった。少しの重さも感じていない。
家に帰って荷物を広げると、見覚えのない袋が入っていた。
どうやら2月14日はバレンタインデーという名前がついていた。
俺にはじめて訪れた、ぎこちない開封作業。
そこには手作りだとはっきりわかるようなチョコレートが
手紙とともに添えられていた。
流石に鈍感な俺でも理解できる内容だった。
どうやら好意をもらったようだ。
かなり遠回しに書いてあった。告白とは程遠い。
けれど、それと簡単にわかってしまうほど甘い味。
女の子に恥をかかせてはいけない。
謎のプライドが生まれてはじめて顔を出す。
「バレンタインチョコありがとう!ビックリしたよ。」
この言葉が適切だったかは今でも分からないが、
俺は悪い気もしていなかったし、気持ちを受け取るつもりでいた。
そこから1週間ほどPCでのメールのやり取りが続き、
高校受験真っ最中の二人は交際することを選んだ。
「は?この時期に何浮かれてんの?」
塾の仲間の反応は予想通りすぎて、簡単に弁明できた。
「これはしょうがない。好きという気持ちは止まらない。」
我ながら気持ち悪い。吐き気?いや、反吐が出る。
しかし、人から好意を寄せられるのがこんなにも嬉しいものだとは知らなかった。
対して顔も良くないし、頭も中の中の上くらいで、スポーツも中の下。
15年間選ばれることのなかった俺の本能が、
寛大に表情や行動として表現を始めていた。
問題は俺に経験値がないことだった。
付き合うって何するの状態。
学校はもちろん通常授業な訳だが、
教室内ではほとんど一人で過ごしていた俺は
急に近しい存在ができることによって意識が遠のきそうだった。
しかし、さらなる問題が発生していた。
付き合いだしてから、相手の方から全く話しかけてこなくなったのだ。
奥手と奥手の交際がこんなにも難しいのか。
うぶな二人と言えば聞こえはいいが、
フェルマーの最終定理に自力で挑む方が簡単なのでは?
とさえ思ってしまうほど会話がなかった。
当時の俺たちの間には、不思議な距離感を図るメジャーは
肩書きには明示されていないことを知った。

公立高校の受験も終え、中学校生活も残るは
合否の発表と卒業式だけだった。
合否の発表は卒業式後の予定だっため、
200人を超える同級生たちが一堂に会するのは
今日で最後。学校に来ていない連中もいるみたいだけど。
正直言って卒業も進路もどうでもよかった俺は、
ただ時間が過ぎ、高校生になったらきっと何か変わるだろう。
そんな淡い期待だけを抱きながら、
最後の合唱中にただ妄想にふけって時間を潰していた。
涙は出なかった。寂しいとも思わなかった。
絶賛崩壊中の家庭で生きている俺は
現状への不満だけを吐露する、中学生活に幕を閉じようとしている。
最終日になっても彼女とは会話がなかった。
世間ではこれを交際と呼ぶのだろうか。
彼氏彼女とは一体なんなのか。
目の前にある黒板には1年間酷使し続けた形跡もなく、
俺と彼女の答え合わせだって、もちろん書いてはいなかった。
卒業してから高校入学までには少し長い休み期間がある。
公立高校受験後の結果なんて興味なく、
久しぶりにバスケ部の仲間と集まって
バスケをしたり、今までしてこなかった別のスポーツを
現実逃避と未来への投資を兼ねて興じていた。
塾の仲間と遊ぶこともあって、
そこではしつこく恋愛関係についていじられた。
何度も言うが、これは恋愛関係なのか怪しい気がする。
彼女とはメールでは饒舌にやり取りをする。
休み期間中に何をしているとか、好きだのどうだの。
皮肉なことに、そこに関しては恋愛感情の可視化は行われていた。
公立高校一斉合格発表当日。
微塵も期待してない俺とは裏腹に、
第一志望として完璧な対策を講じてきた未来の同級生達が
祈るような気持ちで掲示板の前で待機していた。
なぜかうちの中学の生徒は一人を除いて和やかな顔をしている。
自慢じゃないがその年の俺たちの学力は高かったらしい。
滑り止めで受けた私立高校の結果は全員半特以上。
落ちたとしても保険がある安心感からか、
そもそも試験自体に圧倒的な自信を持っているのか。
どちらにせよ他の中学の生徒と比べて、
他愛のない会話を笑顔で話している比率は
オセロでほぼ勝ちが決定している時と同等だったように思う。
そして時は来たようだ。
見たことのないおじさん達が、大きな紙を掲示板に貼っている。
私の番号は?俺たち受かってるじゃん。余裕だったな。
十人十色の声が飛び交い、どうやら未来が決まったようだと認識した。
期待とは裏腹に合格したようだった。
俺の番号が書いてある。いや、見間違いかもしれない。
普通は逆のことをするんだろうな、と思いつつも再び合格の確認。
なんだかんだで嬉しい気持ちも湧いてきたから
俺もやっぱり人間なんだとこんなタイミングで、ふと思う。
うちの中学からは20人弱が受験していた進学校。
ほぼ全員が受かっていた。そしてほぼ全員が気まずい。
落ちたのは一人だけだった。
誰とも言葉を交わさずにスッとその場を立ち去った。
なんだこの気まずさは。受かったはずなのになぜか申し訳ない。
彼はこの高校を本気で受けていた。
学校から推薦をもらい推薦入試を受けていた。
落ちたから必死で勉強していた。それでも落ちた。
多分こいつは受からないだろうと思われてた人も全員受かってしまった。
俺も含めて、どんな顔をして会話を始めていいか。
苦笑いをしながら、何事もなかったと取り繕いながら、
彼を除く全員が一緒に帰路に着いた。
中学で学んだ、世界人権宣言第一条の言葉が
たった今、崩れた瞬間に立ち会った。


別れというのは突如訪れる。
それが意図的なのか物理的になのかは選べない立場がある。
それが俺だった。一通のメール。差出人は彼女からだった。
いや、たった今、元彼女になったらしい。
あまりにも突然すぎた。驚く暇も与えてこない。
「今の距離感が辛いの。別れましょう。」
昨日まで普通にやりとりしていたのに?
いや、普通ではないか。会話はほとんどしていない。
後にわかるのだが、物理的な距離感が耐えられなかったらしい。
別々の高校に行くようになるし、会う機会が圧倒的にない。
これでは辛い思いをするだけだから、別れを切り出したようだ。
しかも俺には選択肢を与えてはくれなかった。
来るもの拒まず、去るもの追わずの精神で生きてきた俺にとっては
ただ「わかった。」そう送るしか選べなかった。
まともに誰かを好きになって付き合うというのは初めてのことだった。
なのにこの結末はあんまりだ。恋人らしいことは何もしていない。
これから楽しい高校生活が始まると思っていた矢先。
4月に訪れる誕生日前に、俺の夢は音を立てて崩れ始めていた。
呆然としていた春休み。
バスケをしたり、ゲームをしたりしていたが、
あまり楽しく過ごせた記憶はない。
あるのは高校から送られた大量の課題だけ。
どうやらこの頃から高校では
「落ちこぼれ」のレッテルが貼られることが決まっていたように思える。
課題にはほとんど手をつけずに高校入学の時がやってきた。
進学校というだけあって真面目な奴が多いのかな。
そんな風に思いながら入学式を客観的に分析していた。
幸いにも中学時代のバスケ部が数名いたから、部活はバスケを選んだ。
実を言うと、中学時代に怪我をしすぎて、
まともにプレーできる状態ではなかったのだが、
流されるように、安心を求めて体育館で過ごすことを選んだ。
高校最初に始まる大きな行事。
それは入学式の次の日から始まる、合宿ガイダンスだった。
とある山陰地方の山奥に同級生199名が向かった。
そこから始まる3年間の地獄の鐘が鳴り響くことに、
現地へ向かうバスでは知る由もなかった。

元々俺は未来に期待しすぎる性格だった。
今に絶望し、けれど未来は必ず明るいから、
過ぎ去っていく時間さえ耐え凌げば、
そこに希望を見出せるはずだと言い聞かせていた。
それが問題だったんだ。
何もしない人間には何も訪れない。
獲物を追いかけない野生動物は生き絶える。
押し寄せる波から逃げるだけでは
いつかは追いつかれ、巻き込まれて終わる。
俺に至っては逃げることさえもしない臆病者だった。
山奥での合宿では集団行動をメインに、
休み期間中にどれだけ勉強をしてきたかを
確認するテストが行われたりした。
俺は元々人見知りで、ネガティブ思考の持ち主だった。
そして振り分けられたグループのメンバーは
外向的で、活気のある奴らばかりだった。
小中学校で同級生だった男子と同じグループになったのだが、
何せ性格や行動スタイルが真反対だっため、
小学校以来まともに会話をしていない。
そういうことをかなり気にする。
相手はもちろん気にしない。
人に合わせるのが大嫌いだった俺はかなり苦痛だった。
メンバーが気を使ってくれて話をしてくれるから、
話をしてはみるのだけれど会話が弾まない。
苦笑いと愛想笑いを極めた俺との距離を
たった3日間しかなかった合宿で、しっかりと遠ざけていった。
合宿の記憶はほとんどない。
まるで目を閉じていたかのように暗い景色だった。
おかしい。何かがおかしい。
俺の高校生活は明るく始まるはずだろう?
自問自答も虚しく、山奥から海のある学校生活へと帰路に着いた。
通常授業が始まって1週間がたった頃、
元カノからメールが来ていることに気がついた。
『学校はどう?楽しい?』
何事もなかったように送られてきたメールに戸惑ったのだが、
男とは悲しい生き物だ。そんな状況でも見えを張るのだ。
『あー、うん。楽しいし、面白いよ。そっちは?』
送信した自分のテキストにうんざりする。
何も楽しくない。笑えることなんて何もない。
『そっか。こっちもなかなか楽しいよ。』
正直彼女の意図がわからなかったのだが、
自分の毎日を偽りながらやりとりを続けた。
バスケ部の活動は1週間の体験入部を経て、正式入部へと移行する。
驚くことに男子バスケ部の人数は少なく、
中学の頃のメンツが半分を占めていた。
ほとんど変わらない風景。部活なら楽しめるかなとそう信じていた。
広島県呉市にあるうちの高校の男女バスケットボール部。
部員数は決して多くはないのだが、
呉市ではバスケが盛んで、中学時代に名を馳せていた人も何人かいる。
先輩たちは実力者ばかりで、レベルの違いに唖然とする。
そんな部だったため、練習の質が半端じゃなかった。
活気に溢れるこの場所は黒く染まった俺の心にもその時は輝いて見えた。

〜続く。

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