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第3話 料理会へご招待
俺は何度も何度も推敲を重ねてからメッセージを送信した。言いたいことを端的に表すと同時に、無駄もなく、そして助平な下心など微塵も感じられない爽やかな文言だ。
「世界の料理を作るレシピ本を購入しました。一緒に作ってみませんか?」
その返事は電話で来た。
「もしもし一ノ瀬君? 楽しそうなお誘いありがとう」
構えることなく無邪気に弾む声が聞けて、俺は心底安堵した。「はあ? 何それ」と一蹴され
第2話 料理で美女を釣れないか
一ノ瀬優25歳。
私立大学で薬学を専門に学び、大手製薬会社に勤務。一人暮らしで料理を楽しむ独身男性。
顔は特に美男子ではない。清潔感はあると評されるが、女っけはない。今の勤め先に内定した頃から、女子との集まり――つまり合コンによく駆り出された。モテると言えばモテるのかもしれないが、ピンと来る相手には巡り合えてない。
どの女性も俺のスペックだけが目当てなのかと溜息をつきたくなる。いや、合
「俺と料理と彼女と家と」」第1話 我が手にしゃもじを
(あらすじ)
メシマズ母のおかげで、自分で料理するのが大好きに育った一ノ瀬優(男性)。就職を機に一人暮らしと自炊を始めた彼は、その特技を活かしてまずは華やかな女性同期にアプローチしてみるが、価値観の違いから疎遠になる。彼女の友人の田村さんと料理を通じて親しくなり、真剣に交際を考えるが、彼女の抱える事情に躊躇してしまう。両親に相談の上、交際を続ける決意を固め、「やはり一生共に料理をしたいのはこの人だ