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曲紹介「序曲『バラの謝肉祭』」

 思い出の曲を紹介する、というトピックが「募集中」の音楽ジャンルの中にあります。私は非常に音楽に縁のある人生をおくっており、小3で合唱をはじめてから吹奏楽、雅楽などの様々な分野の音楽に触れてきました。なので、思い出の曲は無尽蔵に出てきてしまいます。書く題材がたくさんあるのはありがたいことなので、気が向いたらこのような記事を書いていきたいと思います。

 この記事を読む人の中には、音楽理論をあまり知らない人もいると思いますし、そもそも僕もそこまで詳しいわけではありません。なので、できるだけ専門用語を挟まずに感覚的に曲を紹介していきたいと思います。

 最後におまけとして、私がこの曲と出会い、どのように向き合ってきたかを紹介します。気が向いたらそちらもどうぞ。

序曲「バラの謝肉祭」とは

 イタリア生まれで18歳の時にアメリカへと移住した作曲家、Joseph Olivadotiによって1947年に作曲された吹奏楽曲です。クラシック音楽をご存じの方なら20世紀、ましてや戦後となるとかなり現代的な曲のイメージをお持ちかもしれません。ですが、吹奏楽というジャンルの歴史はより新しく、この曲は吹奏楽曲の中では「古典的」名曲に位置付けられます。

 この曲、下で述べる通り様々な旋律や表情を醸し出すために非常に聴きごたえがある曲です。その割に(というと怒られそうですが)演奏の難易度はそこまで高くありません。あまり技術的に自信があるわけではないけど、聴き映えのする曲が演奏したい。そんな方に真っ先にお勧めしたい。そんな曲です。

 ここまで来て聴きたくなった方もいらっしゃるでしょう。私もぜひ聴いてほしいので、Youtubeのリンクを貼っておきます。以下の記事は、もしよろしければ聴きながら読んでいただけたらと思います。


曲を聴いてみて…

 これを読んでくださる方には、上のリンクから曲を聴きながら読んでおられる方もいるかも、と思います。そこで、私が聴いて皆さんと共有したい感情の起伏みたいなものを書いてみます。

 最初に書いた通り、「トランペットの奏でるファンファーレが~」とか、「木管高音楽器の旋律と中低音楽器の対旋律が~」とかいう風な分析的で専門用語を使った文章ではなく、みなさんと感覚を共有できる文章(、と私が思ったもの)を書いてみます。もしよかったらお付き合いください。

 この曲、最初は静かだけど少し厳かな雰囲気から始まります。少しずつ楽器が増えてきて、厳かさが増した…と思ったら少し静かになります。おしとやかな雰囲気が流れつつ、しばらくすると憂いを含んだような感覚がやってきます。盛り上がりと落ち着きを繰り返して、いったん静かな場面を迎えます。
 さて、静かだと思っていたら、突然雰囲気が変わります。厳かだけど最初と比べて暗めの雰囲気の音です。続いて、憂いや哀しみを感じるような雰囲気の曲になります。哀しい感情が押し寄せ、一気に大きくなったと思ったらまた少し静かになる。このような波が繰り返されます。少しずつこのような波は形を変え、そして最終的には落ち着いていきます。
 続いて神聖で厳かな雰囲気の曲調になります。ここももう一度、哀しみの雰囲気に戻ってから厳かな曲調にという流れが繰り返されます。続いては一転して少し軽く、ノリのいい雰囲気の曲調がやってきます。最初は小規模の軽い雰囲気だったのが、次第にイケイケドンドンな感じになり、盛り上がりを見せます。そしてクライマックスへ。

 いかがでしょう。明るい旋律も哀愁漂う旋律も、いろいろな表現のされ方をしています。私にはとても魅力的に聴こえます。また、寄せて返す波のような盛り上がりとフェードアウトが何度も繰り返されます。メロディの組み合わせと強弱の波が心をぐっとつかむ曲だと思いませんか。

 …というのは私の感想です。聴いてくださった方、それぞれ思うところあるのだと思います。聴いてくださった方の心に潤いを与えられたら、この曲を紹介した私としても嬉しい限りです。

 最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。


おまけ・「バラの謝肉祭」と私

 中学から吹奏楽部に入った私がこの曲に出会ったのは中1の秋でした。私の中学校では、夏のコンクールにはほとんど2/3年生のみが参加し、1年生はほとんどが秋になってから人前で本番を迎えます。秋と言えば芸術の秋。無名の中学校の吹奏楽部でも、地域のイベントなどで演奏する機会が増えます。この曲は、12月頭のイベントで演奏する予定で、楽譜を渡されました。

 私の担当楽器はクラリネットです。当時1年生に割り当てられたパートは、2ndクラリネットと3rdクラリネットでした。私は当時の実力を鑑み、外部指導の先生によって3rdクラに配置されました。個人練習を重ね、しばらくしてこの曲初めての合奏を迎えましたが…

 初めての合奏で1st/2ndクラと3rdクラのあまりの差に愕然としてしまいます。なんといっても中間部の哀愁漂うメロディが3rdにはありません。ひたすらほかの中低音楽器と同じく8分音符で刻むばかりという驚きは、今でも忘れません。今思えば、パート練習とかしておけば事前にわかっていたのかもしれません… それ以外にも、ホルンと一緒に対旋律を吹くといった部分もありました。

 どちらにしろ、甘美なメロディや哀愁漂うメロディが吹けないことず悲しかったこと、つまらなかったことが強く思い出に残ってしまった、そんなこの曲との出会いでした。…が、この曲との思い出はここで終わりません。

 基本的に中3は、夏のコンクールで引退するのが部のスタンダードでしたが、希望者は秋の演奏会まで残れるようになっていました。そこで再び、この曲と出会うのです。演奏メンバーは違えど、もう一度この曲ができることは素直に嬉しかったですし、今度は1stクラのパートを任せてもらえました。2年前に吹けなかったあの旋律が吹ける!ととても喜んだことを記憶しています。

 しかし、いざ吹いてみると1stクラはメロディがほとんどです。2年前味わった、つまらないながらも曲を支えている感じはあまりありません。メロディはメロディで楽しいのだけど、いろんな場所から曲を支える面白さは感じられない…そんな印象を受けました。やはり2年間吹奏楽やって考え方が変わったんでしょうね。

 吹奏楽では、いろいろなパートが様々な役割をもって曲を作っています。そして、それぞれに面白さがあるということがわかり始めたのが、2回目のこの曲との出会いあたりからでした。いろいろな側面から曲をとらえ、演奏していく。そんな視点をくれたこの曲、久々にやりたいなと思いながら感謝を胸に今日も聴いています。

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