Distance: Chère ma petite-3
Chère ma petite-3
海に潮の流れがあるように
宇宙にも一種の潮の流れがある
あれ程の技術を詰め込んで来たのに
結局はなす術もなく漂流している
随分と遠くまで来てしまった
今となってはここからどれ程の隔たりがあるのかも分からない
幸い船内は暖かく、快適で
飲み物のうまい
自分が何を求めやってきたのか
そんなことさえ忘れそうになる
ここでは時間が意味を持たない
年月も、空間も、距離さえも…
オレ達はこんなにも離ればなれなのに
文字だけは
肉体が決して克服できない物理的隔たりを
やすやすと越えていくことができる
肉体が滅びても
文字は滅びない
オレは時々想像してみる
いつしか無人になった船内に
誰かが偶然足を踏み入れる
荒廃した船室の
机の引出しに眠るのは
踊る文字 青くゆらめくインクの残響
お前のしたたむ文字だけが
未来永劫燃え続ける
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