ベネチア

電灯も届かぬ細くうねった道
両側に迫った石の建物の気配
進みながらどこを歩いているのか
分からなくなってくる不安と
そのうちどこかへ行き当たるだろう
という楽観

数々の美しいものを目にしたはずなのに
体が一番覚えているのは
夜の通りの感触

ベネチアは小さな街だが、
蟻の巣みたいに細々とした道が張り巡らされ
全てを歩きつくすことは不可能だ

サンマルコ広場でもない
ポンテ・ヴェッキオでもない
これら無数の通りこそが
ベネチアが何たるかを物語っている

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