SAINT JAMESのTシャツ
近所に住む友達が夏期休暇でフランスへ帰っている間の植物の水遣りを、頼まれて夏の間中せっせと通っていた。
ヴァカンスシーズンが終わり、先日帰国した彼女の家に呼ばれて訪ねていくと、お礼を兼ねてお土産を用意してくれていた。
その中の一つにSAINT JAMESのTシャツというのがあった。白地にブルマラン(紺色)の、いかにもフランスといった長袖のTシャツだ。
彼女から口頭で聞いた説明によると、このSAINT
JAMESこそがフランスのマリンスタイルの発祥で、元はブルターニュの漁師が着ていたものだという。そういえば、オドレイ・トトゥが演じたシャネルの映画にも、冬の海の景色にボーター姿の漁師が映っていたな、と頭の隅に思い浮かべた。今年は創業130周年ということで、スペシャルエディションで袖のところに記念のワッペンが施されている。彼女も自身や息子用にここの製品を愛用しているという。
彼女は「日本人はフランスのボーダー好きでしょ」と冗談ぽく言った。確かに、日本のELLEやFIGAROでは「フレンチシック」と銘打って、いまだにボーダーやサンドリオンをフューチャーしている。しかし実際は、日本でちょんまげに袴姿のサラリーマンがいないように、今時のフランスの若い人はそんな格好まずしない。
あまりにも定番すぎて自身では選んだことのないボーダーだったが、嬉しくて翌日さっそく着用してみた。
袖を通した瞬間、とてもいい素材なのだということがわかった。分厚すぎず、しっかりしているが程よい軽さでとても着心地がいい。まっ白でなく、少しアイボリーがかった色味に目も癒される。
似ているものは沢山あるが、やはりきちんと作られているものは違うんだ、と納得させられた。それを着ていたその日は、一日中何ともいえぬ安心感に包まれて心地がよかった。
話は少し逸れるが、この週末いくつかのお店を覗いた。特に何を買う訳でもなかったが、買い物自体が久々で、入ったことのないセレクトショップを何軒かぶらついた。目に留まったものの多くは、日本のデザイナーによる日本製の服だった。これほどファストファッションが氾濫している昨今に、真摯に自分達の服作りをしている人がいるのかと思うと、心を打たれる。もちろん大量生産の服より値は張るが、使っている素材や国産だということを考慮にいれると良心的な値段だ。
いろんな考え方があると思うけど、やはりきちんと作られているものに心を惹かれてしまう。昔に比べて、買い物をする機会はぐっと減ってしまったけれど、その分自分の好きなものを買いたいと思う。ただ、いいものを買うにはもちろんそれなりの初期投資が必要で、生活のバランスの支点をどこにもってくるかだなあ、と考えこんでしまった。
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