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詩のスケッチブック

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日々や旅の風景をささっと描いた詩たち
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2018年12月の記事一覧

パリの地下鉄

ゆらり、ゆられて
我々は薄暗い胎内を蛇行して行く

パリの地下鉄は
下水の匂い、湿っぽい熱気、色々な民族の香り、がする

老も若も、黒もオリーブも白も、モノトーンも極彩色も、
貧も富も
ありとあらゆるものが、この古めかしい鉄の箱に詰め込まれて
ガタンゴトンと蛇行して行く

地上の繁栄など知る由もない、
薄暗い構内、陰気な車内、
うつむく人々…

巻き毛、赤毛、ドレッド、ブロンド、ターバン、スカーフ

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きおく

わすれ方をわすれてしまった

きみのこえ

日々の記憶

三つ編みの中

細胞の組織

奥深く編み込まれて

ふとした拍子によみがえる

ひかりの粒子

舞い上がる記憶たち

わすれ方をわすれてしまった

積層する季節

記憶する身体

あふれる思い

吹き抜ける風 水辺のきらめき

ひかりが描く、横顔の輪郭

そこらをチラチラ舞っている

暇なときは

それを見て 遊んでる

かなしみ

かなしみは出来事じゃない

ふいに吹く風

心にたつ さざ波

何に揺さぶられるか

どんな風にざわめきたつか

その違いこそが 人間だ

われわれは若さと引き換えに、それを手に入れる

でもそれは悪いことではない

見えなかったひかりが見えるようになる

感じることのできなかったものを 感じることができるようになる

分かちあえるようになる

われわれはそうやって何度も打ちひしがれて、それ

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目覚め

ホームへの階段をあがる

靴音が生み出すリズム 流れる人々

心音に寄り添う電子音

次の瞬間 上がっているのか下がっているのか分からなくなる

地下鉄の改札

ピンボールのようにはじき合う個々の思惑

小さき意思を押し流すデータの洪水

全てを内包する運命

ふとあなたに問うてみたくなる

どこにいるの?と

でも想像する方が好きなの

時々自分でも分からなくなる

ここがどこなのか

それ

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