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本当は働きたくないのに。

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本当は働きたくないのに求職活動をしている中年女性が主人公のフィクションです。
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記事一覧

本当は働きたくないのに。 18日目の朝

本当は働きたくないのに。 18日目の朝

容姿を理由にするのをやめたのだ。

私は常に自分がブスであることを意識してきた。
ブスだからかわいい子と自分から仲良くなろうとしてはいけない。
ブスだから男性に告白してはいけない。
ブスだから都内のおしゃれな職場で働くことはできない。
ブスだからブスの自分をわきまえて行動しなければならない。
そういう風に考えて自分を律してきた。

ブスだからといって、ひどいいじめを受けたことはない。直接ブスと言わ

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本当は働きたくないのに。 17日目の朝

本当は働きたくないのに。 17日目の朝

早く終わった面接は採用のサインなの不採用のサインなのどっちなの。

面接が半分の時間で終わったのだ。
ネットで調べると、担当者の中で採用が決まっているから早かったのだ、いや興味がなくて不採用が決まっているから早かったのだ、と正反対の結論がもっともらしく語られている。
自分のときを思い返してみると、特に聞くことがなくて早く終わったような気がする。

でも、今回の求人の面接一発目が私だったみたいだから

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本当は働きたくないのに。 16日目の夜

本当は働きたくないのに。 16日目の夜

面接を受けると、いけたな、受かったな、と思い込む幸せな人間なのだ。

書きたいことはいろいろあるけど、疲れたからそのうち。

本当は働きたくないのに。 15日目の夜

本当は働きたくないのに。 15日目の夜

認定日なのでハローワークに行ってきて、憎悪に支配されているところだ。

履歴書や職務経歴書を添削してもらった職員がもう、なんなんだあいつ、あのやろう。
私は覚えていないが、先着100名様の100人目が私で101人目があの人だったとかの因縁があったりするのだろうか。だとしてもあんな態度を取られる筋合いはないが。

私の職務経歴書は陸さんのサイトを使って作ったものだから、いやみは陸さんの方に言ってほし

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本当は働きたくないのに。 14日目の昼

本当は働きたくないのに。 14日目の昼

面接対策をしているところだ。

転職活動を始めてすぐの頃、派遣社員希望として企業と面接をしたのだが、もうびっくりするくらい何も答えられなかったのだ。
「えっ…………と…………」と黙り込んでしまい、同行していた派遣のエージェント氏に助け舟を出される始末だった。
人見知りであがり症でアドブリのきかない人間が、何の準備もせず面接をした結果だ。
だから、エージェント氏から送られてきた面接で聞かれる内容や、

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本当は働きたくないのに。13日目の夜

本当は働きたくないのに。13日目の夜

履歴書は手書きがいいのか、印刷でいいのか問題。

書くのが面倒だから印刷で済ませたいのだが、世の中には手書きじゃないとぶうぶう言うような奴がいるという。
一応用意だけはしておくべきか?
そう考えたりもしたがやっぱりやめた。
私が志望している企業はすべて「業務改善を目標に」とか「仕事の効率化を目指して」と書いているのだ。
仕事の無駄を減らすことを目指している企業が無駄の極みみたいな手書き履歴書を要求

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本当は働きたくないのに。 12日目の昼

本当は働きたくないのに。 12日目の昼

結婚に逃げたいと生まれて初めて思っているところだ。

そんな気持ちの中で『ホモ無職、家を買う』を読んだものだから、ますます結婚して誰かに寄りかかりたいと願うようになった。
『ホモ無職、家を買う』の中で作者のサムソン高橋はコラムニストの能町みね子と結婚を前提にした同棲を始めているのだ。

うらやましい。ねたましい。1人で生きて1人で死んでいく仲間だと(勝手に)仲間意識を感じていたのに、気の合う相手と

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本当は働きたくないのに。 11日目の昼

本当は働きたくないのに。 11日目の昼

私は私を小池栄子だと思いこむことにした。

なぜ面接が憂鬱かといえば、「私」という人間に自信がないからだ。他人にこれはいいものですよ、と売り込む自信がないのだ。

だから私は私を小池栄子だと思いこむことにした。
あの美しくて、闊達で、聡明な彼女なのだ、私は。

面接で経歴の貧相さを突っ込まれても動じない。なぜなら私は自分が経歴では表せない賢さを有していると知っているからだ。
スキルの低さをあざけら

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本当は働きたくないのに。10日目の昼

本当は働きたくないのに。10日目の昼

陸さんと春さんと堂田さんから面接決定の連絡。

書類選考で落とされていることで落ち込んでいたが、面接が決まったら決まったで憂鬱だ。

私は自分のことを根掘り葉掘り聞かれるのが苦手なのだ。
細かく問われると「なんだこいつ、何が目的だ」と警戒してしまう(面接が目的だよ)。
嘘をつくのが苦手というのもある。その会社を選んだのは家から近かったからです。その会社を辞めたのは給料が低かったからです。次の就職ま

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本当は働きたくないのに。 10日目の朝

本当は働きたくないのに。 10日目の朝

聞きたいことがあったのでハローワークに電話をかけて、相手の返答にかっとした。
何か不愉快な対応をされたわけではない。面倒くさそうな声をされたわけでもない。ごく普通に「そういうことはしていません」と答えられただけだ。
それなのに驚くほどの速さで怒りがわきあがった。
電話口で相手が突然キレ始めたときの煩わしさは覚えていたから、そうですか、分かりました、失礼します、みたいなことを言って切り、なるほど、こ

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本当は働きたくないのに。 9日目の昼

本当は働きたくないのに。 9日目の昼

陸さんと堂田さんから書類選考落ちのメール。
エージェント氏が勧めてきた求人に応募して書類で落とされるってなんなんだろうね。求人紹介も書類選考もくじびきでしているんだろうか。あるいは彼らは求職者の自尊心を削り取って奴隷根性を身につけさせるのが目的なのか。
奴隷になる前にプロレタリアートになって「資本家の豚を吊るせ!」とシュプレヒコールしそうではある。

志望動機が知りたいそうだ。
御社を選んだのは条

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本当は働きたくないのに。 9日目の朝

本当は働きたくないのに。 9日目の朝

転職エージェントを複数利用しているので印象など。

陸さん。誰でも知っているあの会社である。先日書いた「事務職は買い手市場だからエントリーしまくれ」とアドバイスをくれたのもこちらだ。
陸さんとは登録後電話で面談をした。親身な雰囲気はなく、ちゃきちゃきと聞き取り調査が進む。
私の希望を一蹴し、昨今の転職市場を滔々と語られたりはしたが、こんなゴミみたいな経歴の人間に対応してくれただけでも感謝すべきなの

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本当は働きたくないのに。 8日目の夜

本当は働きたくないのに。 8日目の夜

転職活動を始めて8日目。

「今は売り手市場だが事務職にかぎっては買い手市場だからどんどんエントリーしろ」と転職エージェントに言われたので片っ端からエントリーして、片っ端から書類選考で弾かれているところだ。

エージェント氏の口ぶりでは、みんなこんなものなのだろうと思う。数多くエントリーして、引っかかったらもうけものなのだろう。
しかしスペックだけで「あんたは必要ないよ」と判断されると傷つくのだ。

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