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本当は働きたくないのに。10日目の昼

陸さんと春さんと堂田さんから面接決定の連絡。

書類選考で落とされていることで落ち込んでいたが、面接が決まったら決まったで憂鬱だ。

私は自分のことを根掘り葉掘り聞かれるのが苦手なのだ。
細かく問われると「なんだこいつ、何が目的だ」と警戒してしまう(面接が目的だよ)。
嘘をつくのが苦手というのもある。その会社を選んだのは家から近かったからです。その会社を辞めたのは給料が低かったからです。次の就職までの空白期間? だらだら遊んで暮らしていました。そう答えていいならこんないやな気持ちはならないだろう。

面接を受けるなら身だしなみを整えねばならない。白髪が目立ってきたから白髪染めをした。
ヘナをぐにぐにとかきまぜ、頭に塗りたくるとむっと草のにおいがたちこめる。
ああ、いやだ、働きたくない、と思いながら髪を染めていたからか、ふと『夜と霧』を思い出した。
収容所では老人は簡単に「処分」されてしまうので、老婆などは煤を髪に塗りたくって黒く見せかけ、必死で飛び跳ねて行進していたという。


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