第3段 色好まざらん男は、いとさうざうし。

徒然なるままに、日暮らし、齧られたリンゴに向かいて云々。


『どんな人がタイプなんですか?』

これが一番生きてきて答えづらい質問でもある。と言っても、この質問自体されたことは数えるくらいしかないが、何とは無しに、ああ、この質問にだけは答えるのに苦労したなと思うことが多々ある。昔は、苦し紛れにこう答えていた。『男らしい人です。』それは、肉体的にも精神的にもということだった。もっと遡れば身長がどうの見た目がどうの声がどうのとか言っていた。でも今となってはそんなことは正直どうでもいいような気もしている。過去の経験から、今はどちらかといえばあまり体は大きくない人の方がいい。細身、という意味である。それでもその人の魂にほの字になってしまえば正直何も気にならない。中身は見た目に出る、ということも真実だと思う。その人の感性にふれ、その感性に胸打たれればわたしは感動の渦に引き込まれていってしまう。そうした時には、もう何者もわたしを止めることはもはやできないだろう。それはさておき。昔好きだったテレビ番組でこういうことを言っている女性がいた。『好きなタイプは、無人島でも生きていける人です。』この感覚、実は最近持っている感覚でもある。確かに、無人島で生きていける人はとても魅力的だ。サバイバル能力が高い、ということもさることながら何よりも『一見何もない状況』というところに何かを見いだすことのできる人、実は何もないようで何でも揃っているんじゃないかということを発見できるという感性がこういう人にはあるのではないかと推測する。家はないが、もはや地球が家であるというように。目の前は海、絨毯は砂浜、天井は満点の星空、食べ物はよくわからないが木の実だったり魚だったり時には虫だったりもするだろう。その中に価値を見出す人。そしてそれを教えてくれる人。何と、何と美しい感性なのだろうと思う。実際にはもっと大変なこともたくさんあるとは思うが、それでもこう言った状況に置かれてもなお楽しく生き抜くことのできる人というのは間違いなく魅力的であって、一緒にいてとても自由な気持ちになれるだろう。自分の知らなかった世界に連れていってもらえるだろう。いつもこう思う時、アラジンのホールニューワールドのシーンを思い出す。僕を信じて!と飛び乗った先には信じられないような景色が広がっている。何も知らなかった世界が、彩りを帯びていく。やはりこういったことは一人ではなかなかに難しいだろう。これは恋愛に限らず、すべてのことにも言えるのではなかろうか。なので、わたしの中では今の所、この『無人島』の回答が一番ホットである。なかなかにいい回答だなと感心している。それはさておき、少し趣味の話をしよう。◯◯フェチ、というのが一昔前に流行った。つまり、女性サイドからすると、男性の何が好きかということを話すというものだ。わたしは昔、笑顔だった。笑顔フェチとでもいうのだろうか。その人の笑顔を見て、かわいいなと思えば一発でホールインワンだった。今はというと少し違う。今は、細かい話になるが、うなじだ。うなじが好きだ。女性のうなじがセクシーだと言われるように、わたしは男性のうなじも実にセクシーだと思う。うなじのカーブが好きな形だと、結構な確率で好きになってしまう。抱きしめたくなるのだろうか。可愛さを感じるのだろうか。あの不思議な感覚は何なのだろうか。そこからフェロモンでも出ているのだろうか。いっぺんうなじに取り憑かれるともうダメなのだ。そういえばこんな話もある。岡本太郎の養子(岡本太郎は結婚をしない主義だったため)となった秘書の岡本敏子さんと作家吉本ばななが対談する書籍で確か書いてあった話だ。岡本敏子さんが太郎さんのことを好きかもしれない、と思った時、それをとある男性に相談したのだという。その時に敏子さんはこう言われた。『君ね、男の人を見て、あ、この人はかわいそうな人なんだなと思った日にはそれは、もう心底惚れてしまっているのですよ。その気持ちはね、何者にも勝てないものなんですよ。』一字一句はあっていないが確かそんなようなことを言われたと書いていた。ほうほう。かわいそうと思った、つまり同情的でもあるのだが、この気持ちは確かに母性にも近しいのかもしれない。その気持ちが芽生えている時分には、もう相手のことを考えずにはいられないのだろう。女性は、こういう時強烈に『守ってやりたい』と思うものであるのも確かだ。必ずしも誰でもがそうであるとは思わないが、一理あるとも思う。ついでにもう一つ。どういう人が好きかと聞かれればこんな天邪鬼な答えもある。『恋愛にあまり興味のない人』厳密にいうと違うのだが、恋愛が一番ではなく、仕事、目標、生活、何でもいいが、全てがバランスよく同等に大切だと思っている人は好きになってしまう気もする。恋愛ばかりになれないのはわたしも同じだ。恋愛も大事だが、自分の創作も大事だ。どちらも成り立ってこその循環だと思っている。やはりそう考えると、よく映画や小説でもモテる男というのは、女にあまり興味のない男だったりもすると思ったりもする。

モテたかったら、興味がないふりをするのも一つの手かもしれない。




コギト・エルゴ・スム

踊る哲学者モニカみなみ

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