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モンハンで精通した

モンスターハンター界隈では太刀を扱う者は軟弱者かただのミーハー、逆に士道不覚悟であるといった声を聞くことがあります。それらはまるで間違いです。単に多くの未熟者が太刀を扱い、その評価を貶めているだけでしょう。

最強の格闘技が存在しないように(相撲で一番強い奴が最強なため)、私はモンハンでも最弱な武器種というものは存在しないと考えています。

このため私はモンハンにおいて、他人の扱う武器種には全くと言っていいほど興味がありません。あらゆる武器種に強みと弱みがあり、その中から一つを選ぶもよし、全てを使ってみるといのも自由なはず。
ですがたった一つ、ただ一つだけ重要視していることがあります。それはプレイスタイルが全力であるかということです。

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モンスターハンターワールドではオンラインでの協力プレイが可能です。
とはいってもMMORPGのように本格的なコミュニケーションを行えるわけではなく(テキストチャットは一応できますがかなり不便)、簡単な定型文と各種スタンプでなんとか感情表現をするくらいです。
FPSなどと同じく状況が目まぐるしく変化するゲームのため、ボイスチャット以外の情報交換はかなり厳しいです。

そう、「狩り」を除けばね。

モンハンの目的はモンスターを狩ることです。しかしそれを達成する手段は様々にあります。
強い武器で攻めるだけでなくステージのギミックや罠を扱う、あるいは味方のサポートに徹するなど。遊ぶ人によってプレイスタイルは大きく変わります。
マルチプレイでは千差万別な彼らの動きを見ることで相手が何を伝えようとしているのかを汲み取ることが可能なのです。
モンスターを狩る。
そんなたった一つのシンプルな目的を達成するため、各々がお互いの意思を感じ取りながら最善を尽くす。そうした時に最高のセッションが生まれます(優れたハンターは狩りを音楽として捉えます)。
これこそがマルチプレイならではの魅力だと私は考えています。

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そうして私はマルチプレイの経験を重ねていくとあれは良いハンティングだった、最高のセッションだったと感じる出会いにある共通点を見出しました。
それこそが全力なハンターの存在でした。

まず私が何をもって全力を定義しているかですが、全力とは躊躇わないこと、惜しまないことだと考えています。
何をと問われれば全てに対してと言いたいところですが、具体的なところだと装備の更新やアイテムの使用、そして攻め時といったところです。
特にアイテムの使用を躊躇ったり、惜しんだりすることは狩りの成功率に大きく影響します。

先述しましたがモンハンは状況が目まぐるしく変化するゲームです。そんな中でたかだか消費アイテム(秘薬や粉塵のような回復系だけでなく大タル爆弾などの攻撃系も含む)を惜しんで判断を鈍らせることこそ不覚悟と言えるでしょう。     

一時期界隈を騒がしくした"ゆうた"や"ハチミツちょうだい"といった問題はこのような不覚悟が招いたようにも思えます。
炎上を面白がり、意図して熟達したプレイヤーとそうでない層とを分断させた輩がいたので(おれはお前達を覚えている)一概には決められませんが、アイテムだけでなく労力さえ惜しみ、相手へ自分の全力ではない姿勢が伝わってしまったことが問題の一因だったと私は考えています。

比喩でなく、モンハンでも退けば老いるし、臆せば死にます。正しい判断をすることではなく、迷いのない決断自体こそが大切なのです。
上手いか下手かも問題ではありません。私は予想外に際立つ力を可能性と呼ぶことに抵抗はありせん。最善を尽くそうとしているプレイスタイルにこそモンハンに対する真摯さ、そして一緒にゲームを楽しもうとしているその人の優しさが詰まっていると思っています。

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これまで述べてきたことからもわかる通り、私はモンハンをプレイすることで相手の人となりがある程度わかると考えています。本質と言っても良いでしょう。
たかだかゲームで大袈裟だと自分自身でも考えたことはありましたが、プレイ時間に0が3つ付いたあたりであながち間違いでもないなと感じてきました。

特に友人とのマルチプレイではそいつらの人間性を垣間見ることができました。全力さに関しては個々人のモンハンへの情熱はそれぞれなので省きますが、彼らのプレイングと性格は奇妙に一致しているように思えました。

ガードをするのが嫌いとか、派手なエフェクトの武器種を好んで選ぶ、同じ武器しか使わない、モンスターにはまず自分から突っ込んでいくなどだけでなく、
モンスターを見つけるのが冗談みたいに遅いバカ
睡眠武器がいるのに全然攻撃をやめないバカ
全然タル爆弾持ってこないバカ
全然粉塵持ってこないバカ
罠はあるけど麻酔玉は持って来てないバカ

私の友人たちのほとんどが定まった型の発達をしていないということを踏まえると恐怖さえ感じる高い精度の情報群です。

もちろんゲームだからだらしない一面なども出るのでしょうが、それが彼らの本質ではないと言い切れるでしょうか。

人間は追い詰められると本性が表れると聞くことがあります。それは選択肢が限られるような極限の状態では自分にとって重要度の高い判断が選ばれるからなのでしょう。

では逆の状態ではどうなのでしょうか。例えば、所持金にかなり余裕のあるときにファミレスに行った場合、人はどのような基準でメニューを選ぶでしょうか。値段の高いものや普段は食べないものなど人それぞれでしょう。ただ言えることはそのような状態では人が嘘の基準で選択をすることはないだろうということです。
これはゲーム全般に言えることでもありますが、モンハンをプレイすることも上述した状態に近しいと考えています。
現実の葛藤が存在せず、どのような選択もある程度は自由な平坦でリラックスした状態。
そこで表出されるものもまた本性であるはずでしょう。

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ここまで熱弁を振るってはきましたが、恥ずかしながら私自身はモンスターハンターシリーズを全作品プレイしたことがあるわけではありません。初めてプレイしたナンバリングは無印ですが、途中で投げ出してしまいました。本格的にプレイを始めたのは中学生時代。さらに携帯機のモンハンで、界隈では所謂セカンドチルドレンと呼ばれる世代です。
2ndから2ndGにかけてモンハンは私達の世代に直撃し、友人と遊ぶといえばモンハンをすることでした。思い馳せれば多くの出来事がありました。

我が家が交換留学先に選ばれたため自室がなくなり、友人と二人でトイレに篭りながらプレイしたこと。
喫茶店がモンハンをプレイするクソガキに溢れ返ったために出禁になったこと。
2ndGが発売された頃にようやく2ndを買ってもらったやつ。                 

そして私がモンハンをプレイ中に精通したこと。私はケモナーと称されるようなズーフィリアではありせん。
もんはんのえろほんを見たことはあれど、使用したことはありません。
ましてや当時えっちな隣人が住んでいたということもありませんでした。
あるのは私がただただ、モンハンをプレイしている最中に精通を迎えたという事実です。
当時の状況は鮮明に覚えています。私が2ndでリオレイア討伐の最中でした。

先述したようにこのタイトルは私が触れた初めてのモンハンシリーズです。イャンクック討伐に成功しマルチプレイならばリオレイアを討伐できるといった段階になり、今度はソロでやってみようと決意しました。
かなりの苦戦であったということも覚えています。立ち回りも洗練されておらず、モンスターの行動パターンも理解していない状態でした。それでも諦めず、2乙しながらもなんとか体力を減らしてリオレイアが足を引きずった時でした。
リオレイアが逃げたのです。捕獲をしようとまるでなっていない場所に設置した罠は当然無駄になります。
リオレイアが吠え、飛び立って行くのを目の当たりにしたあの瞬間。

その時に私は精通を迎えました。

下半身はそのままにリオレイアを追いなんとか捕獲をしながら呆然としていました。現象としては既に耳にしており、下腹部から駆けていく刺激を感じた時にはこれが精通であると理解していました。戸惑いながらも大きく取り乱すことはなく、その後の処理も終えました。

この出来事は他人に相談すらできず、幼心にとってはあまりに衝撃的で、上手く自分の中で消化することができませんでした。
しかし、今ならはっきりとわかります。
私は"怒り"で精通したということです。

ケモナーならどれほどよかったでしょう。

意地を張らずにもんはんのえろほんを友人の家からパクってくればよかった。
えっちな隣人が近くに住んでいたら普通にうれしいかもしれません。
情け無い性欲かもしれませんが、その源泉は他者と触れ合いたいという健やかな欲求です。
むしろモンスターを攻撃しているときに性的快楽を感じるという方が良かったのかもしれません。それすらも突き詰めていけば歪んではいるものの他者との交流です。

私の場合はリオレイアをあと少しのところで捕獲できなかった、つまりは他者が自分の思い通りにならなかったという怒りが極点に達した時に、性欲と結びついてしまったわけです。要は他者との交流では私が大きな喜びを感じないということなのでしょう。

当時の怒りが頭の中を煮立たせるような感覚を楽しいと思ったことはありません。それでも確かに事実として私はそれで精通をしました。

他者が思い通りにならず目標が破綻した時に絶頂を感じる、それが私の本質なのだとしたらここまでモンスターハンターに向いていない人間も存在しないでしょう。それでも私は十数年が経た後でもモンスターハンターをプレイしています。

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来る10月1日。この日は多くのモンハンユーザーにとって特別な一日となるでしょう。
黒龍ミラボレアス              15年間の情報規制が解禁され、裏ボスとしてではないミラボレアスに挑めるのは恐らく初めてなのでしょう。この記事を書いたのもこのイベントがあったというのが大きいです。
陽気な推薦組、もしくは筆頭ルーキーがPVで言っていた、「俺達が立ち向かうのは歴史そのものなんですね」という言葉。これには思わず胸を打たれてしまいました。
初めてミラボレアスに挑んだシリーズも2ndでした。出禁にされた喫茶店で拡散弾を撃って討伐していました。モンハンで一番強大な相手に真向から挑む勇気も技量は当時はありませんでした。
その頃から成長してモンスターハンターシリーズの集大成といえる作品で挑めるということを考えると非常に感慨深いです。
今私とモンハンしてくれる友人は非常に少なくなりました。
モンハンに飽きた奴、二度と会いたくない奴、二度と会えない奴等がだんだんと増えていくからです。

今でもモンハンを続けているのは喜びはなくとも、単に楽しめているからです。
ゲームであっても自分の成長を実感できるのはやはり楽しいです。協力して遊ぶこと自体を楽しいと感じたのはこれまでも、そしてこれからもモンハンだけなのでしょう。人と交流することで成功体験を得たのも結局はモンハンでした。

大袈裟でなく、モンスターハンターは私にとって歴史になっています。
2ndから初めて友人の中では本当に一番の古参になった今を考えればモンハンと一緒に大きくなったといえます。
もはや肉親と過ごした日々より長くなったモンハンを馬鹿にされるのはとてもではありませんが、耐えられそうにありません。
配信者になれるほどの腕前にはなれませんでしたが、それでも友人とモンハンをした日々には満足しています。

どれだけ歳を重ねようと一緒にプレイする友人がいなくなっても、私はモンハンと爪痕を残し続けることでしょう。



我 等 狩 友 永 久 超 絶 不 滅

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