なんか短くておもしろいやつ
「あー、ネタがねぇ! おいメイド! なんか面白いことしろ!」
「わ、分かりました……コマネチ!」
「そうじゃねえ! 漫画のネタが無いんだよ!」
「ご主人さま才能ないのでは」
「あぁ? クビにされてえのか?」
「私をクビにしたら誰がご主人さまの面倒見るんですか」
「そうだよな……だって……」
「人類ほぼ全滅しちゃったもんな……」
突如流れたウイルスにより、人類はマスコットキャラになってしまった。
身長30cmほどの白い、なんか小さくてかわいい感じの。
奇跡的に俺とメイドはマスコットにならなかったものの、マスコットはろくに喋ることも出来ず人類は窮地に立たされていた。
そんなときにマスコットキャラが寄ってくる。
「う……ぁ……」
「あぁ? なんだ?」
「ア、アァ……」
突如涙を流すマスコット。
「もしかしてお前、人間としての自我があるのか?」
「ウン、ウン」
「なるほど、こんな身体になってしまったことを嘆いているのですね」
白いマスコットに名前を付けることにした。
「よし、お前は白いしシロだ!」
「ヤダ!ヤダ!」
「嫌みたいですね」
「ロシ……ヒロシ」
「ヒロシってのがお前の名前なのか」
「よろしくね、ヒロくん」
「ウン……!」
しかしマスコットが寄ってくるのは珍しいことだった。
マスコットは身長差があるからか、人間に恐れを抱き滅多に寄ってこない。
だが人間としての自我があることで恐れないのだろうか。
こうして俺とメイドとマスコットの生活が始まった。
「メイド、今日はやたら野菜が多いじゃないか」
「ヒロくんが野菜取ってきてくれたんです」
「そうなのか? お前優秀じゃないか!」
「エヘヘ」
ヒロシは草むしりが得意らしく、野菜を見つけるのもお茶の子さいさいのようであった。
マスコットは意外にも農耕をするなど、文化を持っている。
「そうだヒロシ、俺が描いた漫画見るか?」
ヒロシに漫画を見せると、食い入るように読む。
俺はギャグ漫画を得意としており、これはその中でも自信作だった。
「クスクス」
「面白いか! お前見る目あるな!」
「初めて笑ってくれる人がいて良かったですね」
「な、お前が俺のセンスについて来れないだけだよ!」
こんな生活が続くと思っていた。
しかし突然のことだった。
マスコットが襲撃してきたのは。
「にんげん、たおすぞ!」
マスコットは頭が青く、前髪の辺りが八の字に割れている。
さらに刺股のような物を持っており、俺に向けている。
身長30cmほどなのでそれほど恐ろしくはないが。
それよりこいつは喋ることが出来るらしい。
「お前、喋れるのか!」
「たおすぞ、にんげん!」
「ヤメ…ヤメテ…」
間に割って入るヒロシ。
「もしかして"うらぎりもの"…ってコト!?」
「いやっいやっ」
そしてヒロシも刺股のような物をどこからか取り出す。
「やめろ、ヒロシ! お前に何かがあったら……」
「ご主人さま、ヒロくん! 逃げましょう!」
「にがさないぞ!」
マスコットは意外にも足が早く、刺股を俺の足に突きつける。
しかし切れ味が悪いのか、力がないのか、つねられた程度の痛みだった。
「い、いて! 何すんだ!」
「にんげん、なかまになれー!」
「仲間? 何を言ってるんだ……」
その時、ヒロシがマスコットに刺股を突き出す。
「ヤァーッ!」
「いてっいてっ! たいきゃくだー!」
そしてマスコットは何やら置いて逃げていく。
「サンキュー、助かったぜヒロシ。しかしお前意外と強いんだな」
「エヘヘ」
マスコットが置いた物を見ると、乾し肉だった。
「ヒロくんのために今日はご馳走にしましょうか!」
「ヤッタァ!」
乾し肉はこの時代には貴重な肉だった。
熟しに熟した乾し肉で、外側は腐っている。
しかし腐った部分を切り落とし、その中身を食べると美味だった。
「オイシイ!」
ヒロシも満足げに食べており、腹も心も満たされる気分だった。
たらふく食べ、眠りにつく。
──
「うーん、よく寝たか……」
「おはよう! 今日はいい天気だね!」
「なっ、お前、ヒロシ!?」
なんとヒロシが俺の身長ほどの高さになっており、しかも普通に喋っている。
「ご主人様、お目覚めですか」
声はメイドだが、薄桃色のマスコットが立っていた。
「メイド……! ま、まさか俺も!?」
頭に手をやると、丸い耳のような物が付いていた。
「あ、あぁ……」
「これで一つになれたね」
「な、どう言う意味だ!?」
「マスコット化の条件はマスコットに愛着を抱くこと。お前達はなかなか僕たちに愛着を抱かないから僕がスパイになったのさ」
なんてことだ……俺たちはヒロシに嵌められていたのだ……
──
「という漫画を描いたんだがどうかな?」
「シュールですね」
「夢があるだろ?」
「そうですね」
「相変わらずお前は無愛想だな」
「だって現実は厳しいですから」
「厳しい現実を忘れるための漫画だろ」
俺は頭に生えた耳を避けながら、髪をかき上げた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?