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全国旅行支援とGOTOトラベルとの比較と推察

9月26日に観光庁より正式に国内の旅行割引「全国旅行支援」が発表された。
だが、報道発表資料から判明しているのは、
①実施期間は10月11日~12月下旬
②宿泊を伴う旅行の割引が5000円を限度に最大40%割引
③交通を伴う宿泊旅行の割引が8000円を限度に40%の割引
④旅行先で買い物等に利用できるクーポン券が平日は3000円、休日は1,000円付き

という点のみ。
マスコミの先行報道では「取り直しなどの混乱を防ぐため、現時点で対象期間内の予約済のものは割引を適用する」とあったが、そのような情報は正式に発表されていない。また、東京都が10月11日からの一斉参加について準備不足として見送るなど、情報が不確かで足並みが揃わない状況が続いている。

このような現状になっているのは、事業の主体が国から各自治体に移管したからではなかろうか。
2020年に実施された観光喚起事業「GOTOトラベル」は国の事業であり、問い合わせや精算等の窓口は同トラベル事務局一括であったのに対し、全国旅行支援の窓口は各都道府県である。

これまで県民割、ブロック割と範囲を広げて事業が進められ、その拡大版に位置するのが全国旅行支援であるが、割引の手法、クーポンの内容、ワクチン3回接種または陰性証明確認の仕方、精算の手続き等々スキームは自治体ごとにバラバラなのが実情であり、そのまま流用するのは非常に困難だ。

さらに自治体が主体となって国から割り当てられた予算を執行する形式からなのか、ブロック割引対象地域であるのに、旅行会社は事業所所在地の自治体割引の取り扱いしかできず、ブロック割で県外に行きたい県内旅行者には「こちらでは割引を取り扱いできないので、行先の旅行会社または直接宿泊施設に申し込んでください」と断りを入れることがずっと続いていた。最近になって取り扱い可能な自治体が増え徐々に改善はされてきていたが、旅行会社には不公平で、旅行者にとっても利用しづらい部分は潜んでいた。

全国旅行支援の統一窓口が設けられたので、指摘した問題を改善していただけるものと期待している。徐々に情報が入ってきており、未だ不確定な部分もあるが、過去のGOTOトラベル事業と比較しながら、現時点で確度の高いものを記していく。

全国旅行支援1

GOTOトラベルと比較したメリット

①手配旅行も交通宿泊割引適用可能に

GOTOトラベルでは、交通付宿泊旅行については旅行パック商品のみの適用だった。例えば、富山発だと関西、東京方面は往復JR付のパッケージ商品があり、それを利用すれば交通を含めた割引を受けられた。

しかしながら、南紀や山陰などパック商品設定がない方面や、富山発JRで東京で1泊、静岡で1泊して名古屋経由で帰着する、という複雑な行程からパック商品設定不可な交通手段の場合は適用されず、このようなケースは宿泊金額のみの割引適用であった。

全国旅行支援では、例を挙げたケースも交通付宿泊旅行とみなされ、交通と宿泊を足した合計金額からの割引が可能となる。

不正防止のためにJRや飛行機の原券を保管するとされているが、現地で回収されてしまうJRやバスの原券は保管しようにもできないため、このあたりは原券のコピーや手配書等の代理手段で改善されるものと思われる(と、言うかそうして欲しいと切に願う)。

②割引率が35%から40%へ

GOTOトラベルよりも割引率が5%上がった。しかしながら、GOTOは割引上限金額が14,000円に対し、旅行支援は8,000円もしくは5,000円なので実質お得感は乏しくなったと捉えられる。上限額変更の一因に、前回事業の時に最大割引率で利用したいがために、1泊40,000円を超える単価の高い宿泊施設に予約が集中したことがあるのではないかと思う。当時はビジネスホテルなど低価格・中間価格設定の宿泊施設は恩恵が受けられないという報道も目にしたので、今回はそのカテゴリーの施設に配慮し、満遍なく需要を生む形になったのではと推測する。

③ビジネス出張、コンパニオン付きプランへの適用の可能性

GOTOトラベルでは旅行代金の領収書を会社名で発行する場合「ビジネス出張」とみなされ、同事業の趣旨と異なるとして途中から補助対象外になった。今回の旅行支援は「公費出張」のみが補助の対象外となっており、ビジネス出張についての言及がないため、前のような騒ぎがなければ適用できるのではないかと予想する。

この件については、GOTOの際に宿泊施設の金券付きプラン等が発売され、換金性の高い物品を旅行者が収受できたことも問題を大きくしたと見ている。「GOTOトラベルで錬金術」、「会社の経費で私腹を肥やす」のような報道があり、途中からルールが変更された経緯があった。以後、県民割やブロック割は一貫して金券類などを付けた旅行商品は補助対象外とされている。交通と宿泊の利用喚起の一助となるビジネス出張の割引適用は容認されてほしいと個人的に願う。

また三密やソーシャルディスタンスが叫ばれていた前回、接遇のあるコンパニオン宿泊パック商品が問題視され、結論として補助対象外となった。

この時、自分はGOTOトラベル事業説明会に参加しており、コンパニオン費用について、密になるから旅行代金に含めていいのかと質問し、「コンパニオンは観光関連産業であり、その需要を喚起させているので適切な処遇であれば問題ない」との回答を得ていた。問題になった商品は温泉旅館が企画したピ○クコンパニオンと一対一で密接できるプランだった。「感染対策ガー」、「密ガー」、「お色気は旅行カー」、などと面白おかしくマスコミが報じたことにより、その趣旨を変えざるを得なくなったのだろう。

旅館やホテルに派遣されるコンパニオンも、宴会やパーティーが消滅したここ二年半は厳しい経営を迫られていたことは認識しておきたい。今回の旅行支援の趣旨として「商品に含む物品やサービスの内容は、当該商品の旅行目的に沿っており、かつ旅行目的地での消費に寄与している必要がある」とされているので、常識的なサービスの提供であれば割引適用になるであろう。

全国旅行支援2

GOTOトラベルと比較したデメリット

①クーポン金額の一律化

GOTOトラベルの際は旅行金額に対して15%の地域共通クーポンが付いており、最大では1泊当たり40,000円の旅行代金に対し6,000円のクーポンが振り出されていた。全国旅行支援においては、クーポンは平日3000円、休前日1,000円と金額で一律化されている。還付が少なくなったのは明らかであるが、過去に高単価宿泊施設を何十泊も予約し、システムの抜け穴を利用して高額な電子クーポンのみを受け取り宿はチェックインもせずに無断キャンセル、金券をだまし取る詐欺事件になったこともあり、不正防止の観点もあるのだと考える。

1泊の上限が6000円で、2泊もすると12,000円にもなるという地域共通クーポンの高額な設定も使いづらかったのかもしれない。自分の話であるが、当時GOTOトラベルを利用して遠方に行った際、12,000円のクーポンの使い道を決めていなかったため、旅行先で家電製品を買うという、旅には似つかわしくない行為をしたことがあった。

今回はそういった面からも旅行者には使い勝手が良いものになったのではないかと思う。もらったクーポンを足しにして、旅行先でのお土産や食事、飲み物、現地オプショナルツアー等の観光関連に利用するというのが本来理想の形であろう。

②ワクチン接種、陰性の証明手法

GOTOトラベルの際はワクチンも開発中であったため、観光庁が提唱する「旅のエチケット」を守るという部分のみであった。今回の全国旅行支援を受けるにはワクチンの3回接種または陰性証明の提示、支援趣旨の承諾書が必要となる。3回接種および陰性証明は旅行会社で見せるのか、宿泊施設で見せるのかがまだ不明瞭であり、旅行会社で見せるのがマストとなるならば、楽天じゃらんなどのOTA(オンラインツアーエージェント)はどう確認を取るのだろうかと疑問に思っている。また、交通付プランにもその条件を当てはめた場合、JRや航空機等利用する交通機関においても証明を提示する必要があるのではないかと感じる。宿泊施設のみで感染する訳ではないし、ルールは全てにおいて公平であるべきだ。

承諾書についても各自治体ごとに記載内容と提出方法が異なるので、この辺も統一してもらえれば、と願う。

③情報の錯綜、手続きの煩雑化

先にも書いたが、現時点において事業所のある自治体以外の割引の方法が分からない。各自治体の事務局に問い合わせても「上から降りてこないから答えられない」の一点張り。それにも関わらず、ある自治体では旅行支援に上乗せして独自の割引を実施するという報道がなされている。全国旅行支援でさえ分からないのに、独自の上乗せ割引が加えられると、定着するまで混乱を招き手続きが煩雑化するのは目に見えている。

二年半もの間厳しい経営を強いられた旅行業にとってありがたい施策ではあるが、情報を自分たちに迅速に周知させてもらえないと、旅行者へ不利益をこうむることになる。新しい情報が下りてこないか、今か今かと待っている状況である。

以上、現時点で推察を含めた全国旅行支援について記載した。情報は変わる可能性が多いにあるので参考程度に考えてもらいたい。

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