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櫻井敦司に捧ぐ挽歌

令和5年10月19日午後11時9分、高校生の頃からずっと好きだったBUCK-TICKのヴォーカル・櫻井敦司さんが急逝されました。

拙いながら、ここに挽歌を捧げます。

その日、仕事で修禅寺にいた
 門前に 狂い咲いたる櫻あり 世界が崩れるサインだったか

仕事が終わり駅に着いてスマホを開いた
 血の赤を背に黒ゴチの文字踊る 美しい人は失われました

 字の意味を掴みそこねて立ち尽くす 駅舎に響く「まもなく出ます」

公式サイトにアクセスした
 令和5年10月19日午後11時9分 世界はこの時崩れたらしい 

 平日の観光列車は誰もおらず 涙の理由 わけを問う人もなし

 わが涙 玉にぬかなむ 玉? たましい? なんでもいいよ嘘だと言って

 乗り換えれば通勤列車 眼前で泣きたる君や 君もお魚?

 花粉症のふりをしながら駅に着く 花落ち魚の目に涙

 ニュース見た友らよりLINE届きたり 闇にあかりともるる心地 

一夜明け
 朝刊の訃報欄にかの人が こんな世界は絶対嫌だ

 絶え間なく押し寄せる波をとどめ得ず でもメールには書く「お疲れ様です」

 BUCK-TICK あっちゃん 櫻井敦司 検索ばかりただ繰り返したり

 背を丸めバタードラムをすする夜 いくら呑んでも温まらない

 もし吾を島宇宙とするならば 一翼穴あき修復不能

あれから初めての満月
 君求め 月と木星ジュピター眺めいたり はざまに星落ち奇跡感じぬ

 流星は君の化身か さにあらず 悼む魚の涙なるらむ

 名前も知らない星屑きれいね そうねきれいね 君さえ在れば

仕事で東京に出る
 タワレコでバックナンバーまとめ買い かの人に降る時の流れよ

 新宿から錦糸町へと場を移す こんな理由で帰りたくなかった

 店頭に並ぶボードに麗人は微笑み居たり ただ写真撮る

 聖地とさえ呼ばれし店の一角に 同類あまたこうべ垂れたり

 取り立てて広いとも言えぬ売り場だが あの人のために二間取ったり

 珍しく見知らぬ人と話をす 同じ涙を流していたから

雑誌のバックナンバーを購入した
 差し出した品のバーコードをスキャンする 彼の笑顔は優しかりけり

 ずっしりと手に響いてくる重さこそ 彼らと離れていた時間なりける

セレモニーのチケットが先着順で発売開始
 横浜駅のベンチに座りてスマホ睨む 羽田にだけは行かねばならぬ

 サーバーに幾度弾かれてもいや負けぬ ここで負けたら立ち上がれない

 何度ものエラーかいくぐり無事得たり これほど辛きチケットもなし

日は過ぎていく
 なぜだろう あの日から妙に時が重い 涙の袋を抱えるからか

 うつそみの人なる我れや 魂呼ばいのつもりで流すプレイリスト

 青空の向こうの向こうのその向こう どこまでいけばあなたに会える

 百鬼夜行もサバトも華も我が世界 ならばあなたもどこかにいるはず

メンバーを思う
 缶麦酒ビール 掲げた君の手の先はぬばたまの闇が覆っていたね

 ブログにて 涙止まぬと書く君に 我れが痛みの軽さ思えり

吉祥寺 上條淳士展にてアニイのサインを見る
 我が名ではなくグループ名を書く君の 想いの深きを指に染ませる

 ただ一人 消息わからぬ君を思う 今日も揃いのシャツを着ぬるか

 セロトニン求めて歩く君が背を追おうと歩く そうだ未来だ

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