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【仕事告知】近藤史恵『幽霊絵師火狂 筆のみが知る』書評

 そういえば告知し損ねていた気がするので、少し前に公開された記事ですが、改めてご紹介を。
 近藤史恵さんの新作怪談小説『幽霊絵師火狂 筆のみが知る』の書評を書きました。

 作品概要についてはぜひ書評にアクセスしてお確かめいただければ! なのですが、私がこの作品いいな~と思うのは、絵師・火狂と彼になつく娘・真阿の関係性が素敵だからなんです。
 冒頭での真阿は、家に見知らぬ男性がやって来ると聞きつけて、「私の心中相手になってくれるかもしれない!」なんて勝手に盛り上がるわけですが、火狂をひと目見た瞬間「あ、そういうタイプじゃないな、この人」と納得する。そして、火狂も真阿をあくまで「下宿先のお嬢さん」として扱う。二人の間に恋愛感情はありませんが、疎外感に寂寞たる思いを抱えつつ生きている者同士、寄り添うような親しみは芽生える。大人と子供、壮年の男性と少女、ひとつ屋根の下に住む他人同士の、とてもよい距離感が保たれるんですね。
 こういう小説、ようやく出てきましたよね。なんでもかんでも恋愛やら師弟やらのわかりやすい関係性に落とし込むのではなく、シンプルな親近感を持つ間柄の交流をベースにしている。とても気持ちいい。
 怪談ですけど、私は少女がゆるりと世間に目を開いていく一種の教養小説として読みました。世の中、火狂みたいなおっちゃんばかりだったら、子供も安心して大きくなれるのになあ。
 怪談ですから、もちろんお化けは出てきますが、怖がらせるのが眼目ではありません。ちょっと不思議な話を楽しみたい方にぴったりの一冊です。


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