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イタリア人は知らない人にも挨拶するか?

先に、イタリアの店への来店・退店の際の客側についての挨拶について記してみたが、今回は、一般的な挨拶について触れてみようと思う。

挨拶の段階としては、Buongiorno/Buonasera > Salve > Ciaoという順で、Ciaoが1番くだけた挨拶となる。

Buongiorno(ブォンジョルノ)(こんにちは/おはようの兼用)/Buonasera (ブォナセーラ)(こんばんは)は、一般的でニュートラル、敬語を使うような相手やビジネスの関係、知らない人にも使える。
これを使えば、どんな相手でもシチュエーションでも万能な気がするものの、人によっては「長く知っているのにかしこまっているのね」と思う人もいるかもしれない。ビジネス関係ならば問題はないが、ビジネス関係でも敬語で話さない間柄になった場合には、挨拶もくだけさせてもよいのだろう。

Salve(サルヴェ)は、辞書的(小学館・伊和中辞典)には親密語で「やあ・こんにちは」の意味になるが、感覚的には、敬語を使うような相手には言わないという意見が多い。
経験としては、エレベーター内で会った人には知らない人にもよく言われる。同じ建物に住んでいたり、働いていたり、通っていたり……という共通項が、知らない相手でも一種の連帯感を感じさせるようだ。「ブォンジョルノ・ブォナセーラ」でも問題はないものの、もう少しフランクな場面と考えられているのだろう。日本語でいう「どうも」ぐらいの位置付けなのだと思われる(ただし、日本語と異なり「サルヴェ」は、「ありがとう」の意味では使えないけれど)。

Ciao(チャオ)は、辞書的には、親しい人との出会いの挨拶「やあ・よう」、 親しい人との別れの挨拶「じゃあまた・さようなら・バイバイ」の意味になるが、はじめて会った人や親しい関係ではなくても、子どもや自分よりも年若い人にはたいてい「チャオ」で、同年代でも概ね「チャオ」(仕事関係は相手によるが、同僚なら「チャオ」で概ねOK)、年上でも相手や場合によっては使われていることも多々ある。
というのも、イタリア社会は日本社会よりもフランクな所があるからなのだが、外国人に対しても使われやすい。それが、知らない人であってもフレンドリーな雰囲気ならばよいのだが、場合によっては、子どもやはるかに年若い人のように、格下の相手と見なされているバロメーターにもなりうる。

ところで、イタリアでは道を歩いていて出会った知らない人に挨拶をするかどうか?


これは、地域や個人によるところもあるかも
しれないが、都市部や中心地の不特定多数の人が多く行き交う中では、一般的にはだれにでも挨拶するものではないだろう。そういうところで挨拶をしてくる知らない人は、何かの勧誘であったり、もしくは、何かの目的で気を引きたいか、道や場所を尋ねたいかだろうか?
もっとも、道や場所を尋ねたい人の場合は、「ブォンジョルノ」「チャオ」で会話を始めるケースは多くない気もするが。

ところ変わって、もう少し人通りがまばらな場所・場合ではどうだろうか。
例えば、わたしが(中心地ではない)近隣を歩いている場合の経験で、知らない人に挨拶されるケースはゼロではないものの、それほど多くはない。それは、外国人だからというよりも、周囲の振る舞いを見ていると、概ねそうなのだと思われる。(※当地の州民性としてよく言われている性質としては、イタリア人の中でも、一般的にはオープンではない部類に属する)
数がそれほど多くないので、どんな人・どんなケースで挨拶されたかは印象に残っている。
直近では、歩道を歩いている時に、反対側からシニアのシニョーラ(ご婦人)ふたり連れが歩いて来たので、道を開けようと車道に降りかかったら、ひとりのシニョーラが「ブォナセーラ(こんばんは)」と挨拶した。それに「ブォナセーラ」と返したら、もうひとりのシニョーラも「ブォナセーラ」と言われた。
その後、しばらく先に進んだところで、やはり反対側から歩いてきた20代ぐらいの男女ふたり連れのうち、男性の方が「ブォナセーラ」と挨拶した。知らない人からの挨拶という意味では、なぜか多い日だった。
イタリアは、日本に比べて路上駐車が多いのだが、近所の人とは認識していない人が家の近くに駐車している場合があり、そういった車の持ち主の人が、たまたま顔を合わせた際に挨拶する場合もある。その場合も、たいてい「ブォンジョルノ・ブォナセーラ」と挨拶すると思われる。

以前に、最寄り駅でよく見かけるシニアのシニョーレ(男性)がいた。そのシニョーレはわたしを見ると、やけに親しげに(知り合いかのように)「チャオ!」と挨拶するのだが、わたしにとっては知らない人なので、やはり警戒してしまう……今思うと、それが「ブォンジョルノ」だったら、もう少しすんなり単なる挨拶として受け入れられたのだろうとも思われる。
しばらくして、わたしが参加している協会のパーティーがあったのだが、そこで、件のシニョーレを見つけた。
ああ、なるほど。もしかして、彼は以前にわたしをその会の催し等で見て、日本人(東洋人)はごく少数なので印象に残り、知り合いであるかのように思い込んで、わたしを見かけると挨拶していたのかも、と。

かと思えば、人通りがある商店街的な場所や遊歩道などで会う度に「チャオ」と挨拶するシニアのシニョーレ(男性)もいた。知り合いでない人がそのように挨拶することはほぼないので、扱いに困るのである。
しばらくして、前述のパーティーで同じ協会に所属している(だろう)ことが分かったシニョーレの件があったので、もしかして、このシニョーレもわたしが知らないだけでそういうことなのかも?と思い、ようやく彼の「チャオ」に、返答の挨拶をしてみた。すると、「名前、何て言うの?どこ出身なんだい?」と……ああ、わたしを知っているわけではなくて、適当に声かけていたのか、と。(いわゆる、ナンパ??苦笑) 
その後、女性でも男性でも、同行者がいる時には挨拶はしてこなかったので、おそらく、みんなに挨拶をするわけではないのだろう。

ある時、最寄り駅とは反対方向の少し離れた駅に他の日本人の方と一緒にいた時のこと。少し離れたところにいるものの、やけにわたしの視界に入ってくる(やはり、シニア?の)シニョーレがいた。気のせいかと位置を変えてみるものの、再度、視界にもフレームイン?話しかけてはこないものの、なにげにスマイルなのが気にかかる……(一般的に、そういう振る舞いをする人はあまりいないので)
わたしたちの乗った電車は大きい駅に到着し、同行の日本人の方たちは下車した。すると、そのタイミングで、かのシニョーレが別車両から歩いて来て、通りがかりに「こんにちは!」と日本語で挨拶して、通り過ぎて行ったのだ。
そこで、ああ、もしかして、この方は○○さん(在住日本人)のBBQパーティーに参加していた人?と、思い当たった。実際にパーティーで直接話したわけではないし、150人前後の参加者がいたので、思い当たる人と同一人物かどうかの確証はないのだが。万が一同一人物でない場合は、日本好きな人か何かで、わたしたちが日本語で話しているのを聞いて(?)、日本語で挨拶をしたかったのだろうか?


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