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パルムにおける、モンブラン性についての考察

先日、あるアイスが発売され、話題になっている。チョココーティングされたバニラアイスというシンプルな組み合わせながらも、その口溶けの良さとコクのある食べ応えが評判の「パルム」シリーズの、モンブランが登場したのだ。

僕の投稿にスキを押していただくと、モンブランの写真がポップアップで登場する。モンブランのことを書いた記事が30本以上(マガジンはこちら)。何なら、モンブランじゃなくて、モンと省略してしまう。

何を隠そう、なんて言葉があるが、その逆である。

何も隠れていない、僕はモンブランが好きなのだ。

もちろん、ケーキのモンブランである。昨今、いわゆる生ケーキの人気が高まっているのか、コンビニなどでも手軽にケーキが買えるようになったからか、モンブランがいよいよ国民的ケーキになりつつある。

これは、僕が好きだから贔屓して言っているのではないか、なんて思われるかも知れないが、生ケーキの世界だけでなく、加工されたお菓子の中でも、モンブランの味を採用したものが、この数年で爆発的に増えている。

栗の香料や粉末などの原料が、技術の進歩などによって使われやすくなったのかも知れない。

今年は、かりんとうのモンブラン味とか、キャラメルコーンのモンブラン味なんてのもあった。何をモンブラン味にするか、お菓子メーカーは頭を悩ませているのかも知れない。

個人的な見方では、モンブランはケーキなので、ケーキに似た素材や食感のものが、その味に合いやすいのではないかと思うのだ。

モンブランはざっくり言ってしまえば、栗のケーキである。栗の特徴は、キャラクターは突出せず、そのざらりとした細粒感のあるクリームと、ほのかに香るナッツの香ばしさ、こっくりとした甘さ(これは砂糖で増強されていることが多い)、そんなやわらかさにある。

今更ではあるが、モンブランってどんなケーキ?という方は、栗の和菓子の名店でもある、恵那川上屋のサイトで説明をしてくれているので、ぜひ読んでほしい。

前置きだけで1,000字を超えてしまったら誰も読んでくれないので、いったん結論を書きたい。

何が言いたいのかというと、

パルムのモンブランは、モンブランではない。

僕はそれを、モンブラン性が弱いと表現したい。

モンブラン性なんていう言葉も知らないし、何より弱さとか強さって何よ、と思われたかも知れない。果たして僕もそうだ。

つまり、今回のパルムの登場で、モンブランを標榜することがふさわしくない、いわばニセモンがあるのではないか、と思ったのだった。

誤解のないように強調しておくが、パルムのモンブランはとても美味しく、アイスが好きな人も、チョコが好きな人も、きっと満足できる完成度だ。僕も何個でも食べたい。


でも・・・ニセモン。

そう思ったのには、パルムの兄貴的存在とも言えるピノの存在があったからだ。ピノは一箱に一口サイズのアイスが6個だけ入っているアレだ。

ピノは今年は蜜芋ブリュレ味という、お洒落すぎる提案をしてきた。これがもう、びっくりした。パリッとした飴の食感とほろ苦いキャラメル香が、ブリュレというお菓子の代名詞でもあるキャラメリゼ(カラメル化反応:加熱によって糖類が酸化する時に起こる現象)を忠実に再現していた。

そのピノ兄貴、誰も覚えていないだろうが、昨年はモンブラン味だったのである。記憶では、一粒が40円ほどするような価格だったように思う。とにかく贅沢、まさに至福の一粒だったのだ。

そのピノのモンブラン味は、マロンアイスに、クッキークランチの入ったマロンチョコであった。ほんのり洋酒の香りがして、クランチの食感と香ばしさ。それは、モンブランを食べた時の終盤の口の中を再現しているようだった。


常々、僕はモンブランには、マロンクリーム、ホイップクリーム(カスタードクリーム)、台となる焼き菓子、の3つの要素が必要であると思っている。

日本におけるモンブランの発展は、造形はもとより、その台への工夫がさまざまに試みられたことによるものだと思うのである。

話をパルムに戻そう。

パルムの魅力は、なんと言ってもあの滑らかさである。外側のチョコは、しっかりとアイスクリームをコーティングしながらも、口に入ると絶妙な溶け加減で癒しをもたらしてくれる。職人のようなアイスなのである。

モンブランの3要素を実現するとなると、その最大の魅力である滑らかさを諦めなければならなくなる。台を彷彿とさせる焼き菓子の食感は、滑らかさとは対極だからである。

また、モンブラン性をもっとも高める、ザラっとした細粒感のあるクリームもまた、職人パルムからしたら、んなもん邪道だろ、と言われてしまうだろう。

これは全くの想像だけれど、商品を開発している段階ではさまざまな試行錯誤があったのではないかと思う。パルムの滑らかさに拘ったぶん、焼き菓子風の材料を加えることは躊躇せざるを得ない。


モンブラン性の弱さを示しているものとして、マロンクリームではなくマロンソースが入っているということも、書いておきたい。

本物のモンブランには、そんな材料はない。もともと、マロンクリームだけの本家を発展させて、甘露煮を載せてみたり中に入れ込んだりしているが、マロンソースがかかっているものは、これまで僕も一度も見たことがないのだ。


しかし、何度も言うが、パルムのモンブランは、とても美味しいアイスだ。

マロンアイスのバランスの良さは、これまでのバニラアイスの美味しさがあってこそだろう。こだわりの食感は、大人の心を落ち着かせ、癒しを与えてくれる。


だから僕は、今回の新しいパルムにがっかりしたわけではない。むしろ、モンブランに挑戦してくれてありがとう、とさえ思う。昨年の安納芋は、焼き芋人気とその美味しさもあって今年も店頭に並んでいる。

そんなことを考えていたら、ピノ兄貴と職人パルムは、お互いに技の伝承を行い、知識を交換していることに気がついた。滑らかさにこだわる職人に、バランスの良い味の作り方を教えてようとしていたのだろうか。美味しい原料は、一緒に使おうと分け合っているのだろうか。

冷凍庫にパルム安納芋の空箱があると思って持ち上げたら、まだ1本だけ残っていた。最後の1本を箱の中から取り出して、夜更けにパルムはむっと食べる幸せを、誰が邪魔できようか。


#パルム #アイス #モンブラン #考察 #アレ

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