犬にあらず
久しぶりに、このロゴを目にして、あぁまた観たいなぁと思わずにはいられない。
ミュージカル「キャッツ」をご存知だろうか。この投稿に、うんうんと頷きながら、その魅力を思い出した。
キャッツは、劇団四季による公演が全国で続いている。東京で、あるいは横浜で、専用劇場を建てて公演していたのは、もう10年以上も前のことかも知れない。
僕は劇団四季を初めて体験した演目がキャッツだったこともあり、ひときわ思い入れがある。
引用した投稿にもあるが、キャッツはストーリー性があまりない。キャラクターを覚えて話の内容を追いかけて、というのは必要なくて、その場その場で出てくる猫たちを眺めていれば良いのだ。
劇場に入ると、途端に猫たちの世界観に入り込む。ふだん見ているゴミが、大きくなって置いてある。それは、自分が猫になったサイズ感を反映しているのだとか。公演地の名産品などがゴミになっていることも、粋な演出である。
僕は当時、何年かかけて観ていることもあり、演じる俳優が変わった。その俳優の個性によるキャラ変化が楽しめるのもキャッツの魅力だ。
一匹狼ならぬ一匹猫的キャラ(ラム・タム・タガー)が野太い声のダンディな猫の時もあれば、高い声のやんちゃな猫の時もある。名曲“メモリー”を歌う元娼婦の猫(グリザベラ)も、演じ手によって説得力が違ってくる。個人的には早水グリザが好きだ。
僕は幸運にも専用劇場で観ることが多かったので、舞台と客席の近さにワクワクしたものだ。専用劇場には、高額だが人気の“S回転”という席があった。
舞台の一部に作られた座席スペースが、演目が始まると、舞台とともに回転し、客席側に収まる仕組みだった。開演前、観客は着席するために、いったん舞台に上がり席に向かう。
すると、違和感に気がつく。
舞台が傾斜しているのだ。座席の方向に微妙に下がっている。テレビなどでもすでに紹介されているが、およそ2°の傾斜によって舞台全体が見られるように工夫されているのだ。
(知ったように書いているが、S回転で観たのは1回だけで、それも奇跡的に空席を見つけたからだった)
また、舞台袖側の奥の座席は舞台の一部が見えないが、リピーターには人気があった。最安価に加え、開演時に猫たちの通り道になるからである。
こんなことがあった。その席にいた僕の目の前に子どもが座っていて、持っていたポシェットの紐が肘掛けから通路にはみ出しており、登場してきた“猫”がじゃれついた。
その子どもはとても驚いていたが、親らしき大人はニコニコだった。僕も同感であった。キャッツでなければ有り得ないハプニングに心躍らせた。
キャッツで歌われる歌(ナンバー)は、詩が元になっているのと、翻訳された言葉がややふるめかしいため、哲学的な思考に寄っていく。
冒頭の問いをずっと頭に置いておくと、最後の場面の理解はスムーズかも知れない。
歌の上手い猫は数匹いるが、ほかにも踊りが上手とか、手品がうまいとか、電車が好きとか、包容力がすごいとか、それぞれの得意がある。
それはまるで・・と、最後に歌い上げる場面は、実際に観劇する時までとっておいた方がいいかも知れない。
有名なナンバーである「メモリー」を聴く時、いつでも僕は飼っていた犬のことを思い出して泣いてしまう。(猫たちのミュージカルだが。)
歌い踊るシーンでは、毎回見ているのに、空中に飛び出すような猫の動きにドキッとするし、手品が成功するとホッとする。セリフや踊りがない時の、背景としての猫たちの猫らしい仕草も見どころである。
猫か犬かで聞かれたら犬推しの僕だが、このミュージカルは推したい。
引用した投稿にもあったけれど、この演目にはアンサンブル(特に役名のない歌や踊りの要員)がいない。
全員、いや“全猫”が主役なのだ。観れば観るほど、猫たちの生き様に胸が熱くなる。
初めての観劇後のカーテンコール。どうにも感動がおさまらず、「イエイ!」と叫んで周囲の観客たちを驚かせたのは、ここだけの話だ。
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