見出し画像

おっさん、こっち向いて #書もつ

でた、ブレイディ節だ。息子の学校のことばかりではなく、今度は街中に住まうおっさんたちについて書いているらしい。一体、どういうエッセイなんだろう。タイトルからして、ドキドキする。単なるお散歩エッセイではなさそうだ。

ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち
ブレイディみかこ

イギリスだけではない、今や全世界に蔓延っていると言ってもいい「おっさん」の存在は無視できない。まず、頭数が多い。そして、道を開けない、過去の栄光にしがみついている…変化をものともしない不変の存在となって、若者の邪魔をしている存在なのだという。

確かに、ある国の首相は67歳だし、かの国の大統領は81歳で、おっさんというよりもおじいさんの領域である。おっさんたちは、なぜ若者に道を空けてくれないのだろうか。いや、空けられないのかもしれない。隠居生活なんて、遠い過去の御伽噺。時間をお金に替えて、生きていくための身銭を稼ぐ・・なんて哀愁漂う書き出しから、筆者のちょっと辛辣で、俯瞰的なエッセイが展開される。

若い中国人の女の子に恋をしたおっさんの悲しき服装に笑い、情けをかけたホームレスの若者に全財産を盗まれたおっさんを憐れむ。特にイギリスの労働階級のおっさんたちは、筋金入りのおっさんなのだそう(筋金ってなんだろう)。

筆者は、同年代のおっさんたちを面白おかしく、また慈悲深い視線で描くもんだから、なんとなく近所にいそうだな、なんて思うおっさんたちが出てくることが、意外であったし、本当に反面教師として最高の人材だと思わされた。

離脱に票を投じてしまったばっかりに、家庭内不破が起き離婚の危機にまで発展したおっさんは、「イケてる俺」を取り戻すべく、刺青を彫ることにして、腕に漢字で「平和」と入れた。筆者に送られてきた写真は仲睦まじい夫婦と、立派な上腕二頭筋、そこに掘られていたのは「中和」という言葉だった。

政府の緊縮策によって、地域の図書館が閉鎖され、コミュニティセンターの一角に図書スペースが設られた。図書館利用が生き甲斐だったおっさんは、断固反対を貫いた。それは、使い続ける、という反抗だった。コミュニティセンターの図書スペースは、キッズプレイスペースに隣接しており、いつでも赤ん坊の泣き叫ぶ声が絶えない。そんな場所で、おっさんは愚直に本を読む。取り寄せて本を読む。時には、カウンター業務を手伝ったり、赤ちゃんを抱っこしてあやしたり、挙句、可愛い子どもからイースターエッグをもらって、涙ぐんでいた。

頑ななおっさんたちのコミカルな生き方が見えてくる。これはきっと、イギリスに限ったことではないと思うけれど、日本ではこういうおっさんたちは、どこにいるのだろう。定年退職後のおっさん、どこにいますか。


ネイティブアメリカンのような、顔にペインティングしたおっさん・・infocusさんありがとうございます!ちょっと怖いですね。


#推薦図書 #おっさん #イギリス



この記事が参加している募集

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、僕だけでなく家族で喜びます!