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物語のように生きていく #書もつ

ずっと読みたかった作品だった。積ん読にしているけれど、手に入れた時の熱量を思い出せるような。早く読みたいけれど、すぐに読みたいけれど、じっくりと楽しみたい。

そんな期待を半ば無理やり鎮めながら、年末の雰囲気が濃くなって落ち着かない日々に、あえて紐解いてみた。

感動したいとか、人生を考えたいとか、将来が不安だとか、そういう目的を持って小説を読むことは少ないけれど、タイトルを見るたびにその答えが知りたくなった。

読み進めていけば、きっと答えが用意されているはずだと信じて読んでいた。

そして、バトンは渡された
瀬尾まいこ

長い長い手紙を読んでいるような気持ちだった。僕は、読み手として誰を見つめていればいいのか、主人公か、それとも親か、それとも友人か、それとも恋人か。僕には少し違和感のある設定だったけれど、今の時代に、似たような状況はたくさんあるだろうとも思う。

主人公を、運がいいとか不運とかそういう価値観で捉えるのではなく、人間としての魅力をしっかりと描いていることは、読み手には救いだった。それにしても、親の愛とはかくも強いものなのかと、眩しく映る。

立ち止まって考えれば、僕だって親になった。親になって8年が経ったいまでも、まだまだ親として準備ができていないと感じることは多いし、果たして子どもたちがぐんぐん成長することに、驚いてもいる。

親のことが分からない、親なんて何も分かっていない。そんなふうに考えていた幼い自分のことを思うと、もっともっと親に甘えてもよかったのではないかと、反省する。僕は、長男としておそらく模範的な行動をしてきたし、勝手に、その言動を強いられていると思い込んでいた節がある。

結婚して妻に話すたび驚かれるのは、子どもの頃に、親から反対されたり、制限されたりしてきた物事のことだった。それを自分たちの子どもに当てはめるのは、まったく合わないよ、とも釘を刺されて。

読みながら、ずっと頭の中の音が止まない場面があった。僕は、自分が知っている、歌ったことのある歌が登場し、その時の自分を思い出してしまった。忙しいながらも、楽しく過ごしていたこと、懐かしく思えたのだ。

歌や音楽に共感することで、いつのまにか、クラスメイトのような視点で読めたことは、少し意外だった。設定がやや特殊だった分、少し離れて読んでいた自分がいたのだ。

物語を進めていくのは、親の結婚という節目の存在だったかも知れない。どんな年齢にあっても、性別だって関係なく、人の好き嫌いは誰かが決められるものではない。

結婚は、一種の契約であるから、紙一枚でその関係は文字通り白紙にもなってしまう。大人と子ども、それぞれの立場で見えているものが全く違っているのも、経験しているから共感できることかも知れない。

子を育てるのが親の愛だとしたら、子は親に何を返すのだろうか、きっと何も返さないかも知れない。しかし、この作品を読んだ後では、それが正しい道であるように思う。返してくれるのを待つのではなく、しっかり次に渡せるように、親は見守っていく存在なのかも知れない。

穏やかな気持ちで、読み終えることができた。


光に包まれた温かなサムネイル、infocusさんありがとうございます!映画もあるとの情報を得たので、俄然気になっています。


アドベントカレンダーやってます。昨日は小鳥さん、年末までにやっておきたいこと、書いていただきました!




#推薦図書 #バトン #人生

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