真面目
公務員とはいえ、高校を卒業して就職するのは大変だろう。モラトリアムと呼ばれる、就職準備のような遊びの時間がほとんどなかったはずだ。
目の前で、真面目にマニュアルを読み込んでいる後輩を見ていて思う。出身は富山県だが、中学生のときこちらに越してきたのだという。
わからないことは聞いて、と言った手前、日々の質問に答えていくが、数が多い。マニュアルが適当すぎるのかもしれない。
真面目な後輩は、法令集を傍らに置き、マニュアルの言葉を調べ、時には電話の応対の練習なのか、小さく呟いている。
靴も磨かれているし、スーツにもシワがない。始業時間にはメールチェックを終えて、定時には帰る。完璧だ。
あっという間に試行期間の3ヶ月が過ぎた。課長の覚えも明るい。大丈夫だ。
駅前に「生一本」という名の居酒屋がある。正式採用のお祝いに奢ってやろうと、先輩ヅラをして誘ってみた。
飲みに行くか。
「僕、未成年なんで、呑めません。」
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