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甘さ控えめ #創作大賞感想

お菓子を手作りした経験はあるだろうか。ジャム、焼き菓子、アイスクリーム、ゼリーにプリンなどなど、やる気と時間と材料があれば、意外と作れる(らしい)。

作ったことがある人は、多くの場合「あんなに砂糖使うとは思わなかった」と感想を言ったりする。お菓子は甘い、甘くするための調味料が砂糖なのだから仕方ない。

甘いものが好きか、苦手か、そこには大きな隔たりがある。昨今、世の中には甘いものが溢れんばかりだ。それらが苦手な存在になってしまったらと考えるだけで、背筋がぞっとする。僕は甘いものが好きだ。

好きだからと食べまくっていれば、健康を害してしまうかもしれない。しかし、甘いものはいい。甘いものは正義だと思う。

ひとりの探偵が、仕事を受けた。J Kの手作りクッキーを報酬に。

女子高生が、父親の浮気調査の依頼をすること自体、穏やかでない。読み手は、なぜだか自分の子どもたちのことを思って、少し緊張した。子どもが悩んで、親の心配をすることは、親としてはカッコ悪いし、寂しいなと思ったから。

最近、プリンは固めが増えている。かつては、これはプリンなの⁉︎と言ってしまうくらいに滑らかで、ムースやクリームのようなとろける系が流行っていたこともあったけれど、いまは卵焼きのようにしっかりとした身と潔く苦いカラメルの組み合わせが人気だ。

コンビニに行っても、スーパーに行っても、プリンは必ず置いてある。それだけメジャーなスイーツなのは、日本人がプリンが好きだからだろう。かくいう僕も、プリンは時々無性に食べたくなるスイーツである。

一向に物語の感想が書けない(笑)ついつい甘いものに引き寄せられて、空想で口の中を甘くさせているだけで、時間が過ぎてしまう。

物語は、依頼によって動き出した探偵が、さまざまな情報から真相を暴く、というシンプルなもの。しかし、その仕掛けがニクい。

まず、高校生の父親が、探偵や助手の同級生だったという事実。友情を信じるか、事実を鵜呑みにするか、読み手にも緊張が走る。長年会っていない友人は、変わっていて欲しくないという思いとは裏腹に、もうあの時のヤツじゃないな、みたいになっている人もいるかもしれない。そのくらい、読み手も学生時代から月日が経っていた。

本物の警察との繋がりも、物語に誠実さを加えている。全く警察の影が見えない物語は、やはり嘘くさいと思ってしまうからだ。探偵という仕事を、どれほどの人が行っているのかは分からないが、身近な家族や友人の”裏の顔”を知りたいと思う人は結構多そうだ。

甘いものに目がなくて、ついつい甘いものを食べてしまうのは、世知辛い世の中に嫌気がさしているからではないか。探偵の姿は、現代の甘いもの傾向を端的に示しているような気がしてならない。スイーツに骨抜きになる様子は可愛げがあるが、そうでもしないとやってられない、のが現代なのかもと思ってしまった。

物語を通じて、女子高生が見せる”母を守りたい”という気持ちもまた、素直で健気だ。父親が見せる父親なりの愛情表現には、胸が熱くなる。どうして、もっと近くにいられなかったのか…それは僕にも問われているような気がした。

この女子高生が幸せになってほしいと祈るばかりだ。


#創作大賞感想 #探偵 #スイーツ

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