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駅前マンション

職場の最寄り駅のそばにマンションが建っています。ショッピングモールとつながったり、同じ名前のついたりしているタイプのそれです。当時は結構珍しくて、大々的に売られて、それこそ飛ぶように売れたのだと思います。

引っ越し屋として働いていたとき、そのマンション買ったんです。というお客さんが何人かいました。とても失礼なことなのですが、実は耳を疑っていました。職業柄、住んでいる家や、家財などでだいたいの経済状況が分かるような気がしていたのです。

駅前の大規模マンション、そんなところに住むような家財ではない、と人よりも家財を見て判断していたわけです。さらに、物が多過ぎて、新しいマンションに持ち込むのはどうなのかと、そう心配すらしていました。

また、業者側から見れば新築マンションの引っ越しはとても骨が折れる作業です。家財の運び入れという作業の前に、準備したり待ったりすることが多いのです。すると作業予定が狂ってきて、その日のスタッフが振り回されてしまうことも多くありました。

あまり一般的な言葉ではないけれど、新築マンションの引っ越しは、一斉入居という方法で行われます。ある引っ越し業者が幹事となり、入居スケジュール、駐車場所、作業員などの差配をするわけですが、こと土日の作業ともなれば時間がかかってきます。

作業自体にかなり気を使う割に、待ち時間や作業員の疲労など負担も大きく、僕が営業のときは避けていた案件でした。

引っ越しの価格は、かなり幅があります。春の繁忙期は、べらぼうに高い。選べるならば春はやめるべき、と誰にも聞かれてないけど言っています(笑)。高い割に、作業員の質はあまり望めないのも理由のひとつです。

駅前のマンションに話しを戻します。当時、販売会社の方ともお話しをしましたが、冒頭で僕が思っていたことと同じことを感じていました。客層が違っていて、そしてクレームの質も違う、と言っていたのです。

少し話が逸れましたが、そのマンションが外壁の調査なのか、外周が養生されて骨組みが見えています。建てられてから10年以上が過ぎていたのでしょう、あのとき入居した方は、どんな生活になっているのだろうと、ふと思うのです。

家を買うことは、経験してみないと分からない「自分の価値観」との対話があります。果てしない金額の買い物だからこそ、慎重に検討したいけれども、「不動産は水物だから」などと言われて焦らされたりして。

作業が終わっても、会社を辞めても、建物が残れば、あの頃を思い出す。そんな仕事でした。

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