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僕に教えてくれたもの #書もつ

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いています。

数日前、児童文学作家の那須正幹さんが亡くなったというニュースがありました。驚きましたし、大変残念です。

那須さんといえば、日本の現代児童文学の代表とも言える『ズッコケ三人組シリーズ』の原作者。

学校生活を共に過ごしているかのような描写と、様々な事件やハプニングが、子どもらしい視点と解釈で解決されていくという作品たち。学校やの図書室や、図書館で背表紙がズラリと並んでいるのを見たことがある人は多いはず。

僕は、シリーズとともに小学校に学んでいた・・と思っていたのですが、第1作目は1987年の発行なので、入学前からシリーズが始まっていました。50作全てを読んだ自信はありませんが、図書館で借りてきてはせっせと読んだ記憶があります。

さらに、稲城に引っ越して来てから、このズッコケシリーズの主人公たちが年齢を重ねて登場した「中年」シリーズがあるのを知りました。

これは、ズッコケシリーズを読んで大人になった僕のような読み手に向けたメッセージのような作品だと、読む前から胸が熱くなったのを覚えています。

中でも、ハチベエが議員になる選挙活動の話しは、友人のように応援し、投票日には緊張していました。架空であっても、ずっと同じ人物を書き続け、読み続けられることは、自分を省みることができるので、ズッコケシリーズはまた読み返したい作品です。

ズッコケシリーズのタイトルはとても簡潔ですが、読んでみないと分からない楽しさがあります。それは、3人という構成や、物語の長さなどに起因しているのかもしれませんが、子どもながらに予想だにしない展開は、まさに読者の楽しみでした。

僕が好きなのは「うわさのズッコケ株式会社」。大人の真似をするだけでなく、お金を稼いでしまうという行動と周囲の人との関わり合いが、とても羨ましく思えました。

3人はいつでも仲が良くて、でも個性はそれぞれにあって、直接書かれてはいないけれど、お互いのことを信じている感じがしました。僕なら誰と「三人組」をやるかなぁと考えたりしました。

ちなみに僕は、自己分析では、ハチベエから最も遠く、ハカセの半分とモーちゃんの半分の要素を持っていると考えていました。

シリーズを読んでいて感じていたのは、三人組といえど、彼らだけで事件を解決しているわけではなくて、周囲の家族との温かな関わり合いや、見守る大人たちの視線がきちんとありました。

大人になってから思い返してみると、なんというか、個人の役割がきちんと果たされているような風に思えるのです。それは、個人が自立しているというのではなくて、苦手なところはきちんと誰かに頼っているし、頼られているということです。

現実離れした小学生が活躍する物語ではなく、すぐ隣にいるような人たちが描かれた作品でした。

つまり、ズッコケシリーズは、僕にとっては、励ましであるとともに、承認のような作品だったのだと思うのです。

友を頼る、家族に甘える、大人を信じる、それは単純なことかも知れません。

でも、長い間、普通の小学生として活躍してきた三人組のおかげで、僕自身が恥ずかしくて避けてしまうような年頃になっても、声をあげたり、手を差し伸べたりできたのかも知れないと思うのです。

ある街の温かな物語は、ずっとずっと読まれ続けるでしょうし、今日もいろんな小学校で、彼らのような三人組が活躍しているかも知れません。


三人組のシルエット、とてもいいですねー!子どもの頃からの、記憶とともに。infocusさんありがとうございます。







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