寝かしつけは、すみっこで
子どもが生まれて、あれやこれや大変なことはあるけれど、その中の一つに、間違いなく“寝かしつけ”があると思うのです。
だって、眠いなら寝ればいいのに、泣いたり叫んだり、しゃべったりするのです。とくに赤ちゃん期は、果てしない。
たぶん1000回以上は、目の前の我が子に心の中で問うたはず。眠くて泣く、泣かずに静かにしてたら寝られるのに、よく泣く。泣かせ続けて寝かせる作戦もあるけれど、上の子が起きるとか、大体にして終わりが見えなかったのです。
下の子を寝かしつけるにあたって、僕はルーチンを作りました。まず寝かしつけが僕であったことが、その出発でもありましたけど。
ルーチンは、こうでした。
1.抱っこひもで抱っこ、母と上の子に、おやすみのタッチ。
2.リビングに移動し、薄暗い中で、床暖のスイッチを3回押す(運転とは別のボタンを押して、音が鳴るのを楽しむ)。押すたびに音がするので、父(僕)が驚いた顔をする。子がそれを見てケタケタ笑う。
3.インターホンのカメラボタンを押して、玄関の様子を確認。キッチンへ行って、水を飲ませる。
4.水を飲んだら、“にじ”を歌いながら、子が寝るまでリビングを歩き続ける。
寝るまでおよそ30分くらい。とある行動から、眠りに結びつけばいいなぁと思い続けていました。結局、ルーチンがどれほどの効果があったのか分かりませんが、下の子を寝かしつけている間、上の子は母との時間を過ごしていたはずです(寝るのですが)。
子が大きくなって、2人一緒に寝かしつけをするようになると、基本的には母(妻)の取り合い。子はお互いに母の隣を譲らず(冷静になって考えると、両隣がある)、大騒ぎしながら眠りに就きます。
時々、僕が寝かしつけをすることがあります。小さいうちは、どちらもトントンしたり、子守唄を歌ったりして、まずは下の子、そして上の子と寝かしつけをしていました。
やがて上の子は寝かしつけがいらなくなって、下の子だけ寝かしつけをするようになりました。何度かそんなことがあって、子どもたちが慣れてきた頃、”寝かしつけってなんだっけ”と思うようなことが起こったのです。
下の子が言うのです。
じゃあ、パパはどうしたらいい?
こうやって横に寝てようか?
尋ねてみると、起きてていい、と言ったのです。
試しに体を起こして、布団から出て、寝室の片隅にあるスツールに腰掛けました。まだ起きていた上の子も下の子を気遣って、声をかけていました。
下の子はイヤイヤ期でもあるので、すぐに呼ばれるかと思っていました。
が、
しかし、
何も起こらない。
上の子が寝たふりをするのを真似して、下の子も笑顔で目を閉じていました。・・なんてこと。
驚いている僕をよそに、薄暗い室内には、呼吸の音が聞こえていました。僕は、大きな音を出さないように、身動きせずに、息をつめるように座っていました。
2人の音は段々と規則正しくなり、やがて寝息に変わりました。
いつもなら、あの歌、この歌とリクエストに応え、トントンしながら寝かしつけをしていました。しかし、その夜は、ただ部屋の隅にいただけでした。
しかも、それは偶然だったのではなく、また数日後にも、父の寝かしつけは、部屋の隅で見守るタイプが要望されたのでした。見守るだけ・・これは成長なのでしょう。面白い”寝かしつけ”だなぁと思っています。
ちなみに妻だけの寝かしつけは、こうはなりません。前述の争いが未だに続いているのです。
お母さんが寝かしつけできないことをきちんと分かっていて、そして帰ってくると信じていて、眠りに就く子たちがすごいなと思ってしまいます。
そして、そんな寝かしつけを見てみたいと妻が言うのですが、それはできないので、僕も何となく作り話のように話してしまうのですが・・。子が自分で出来ることが増えると、親がしなくてもよいことも増えて、複雑というか、気持ちがなんとなく落ち着かない感じがしています。