パリの沖縄の人(うちなんちゅう)
1.パリの沖縄の人
4月1日、エイプリルフールではなく、本当に私はフランスから帰ってきた。
海外初ライブツアー。反応は日本よりも良く、いっそフランスにとどまって、結婚して永住しようかとまで考えたものだ。しかし親が卒倒して、今でも介護で手がかかるというのにこれ以上となっては困る。フランス移住は次回以降のお楽しみに取っておいて、渋る私自身をなだめすかすようにしてようやく帰ってきたのだった。
ライブツアーは、大学の講堂でⅠ本、ライブハウスで1本、カフェで2本のほぼソロライブで、たっぷり歌わせていただいた。内容的には日本文化を紹介する企画に乗っかったものであるが、記念すべき海外初のライブツアーということに変わりはない。
フランス人のプロデューサー(※本当にお世話になりました)のLさんから、フランス人はアニメが好きだから、初手で興味を引くためにもアニソンは用意した方が良いと聞いていたので、アニソンがレパートリーにない私は戦々恐々としていたのであるが、二、三曲ジブリのカバーを入れることでなんとか乗り切った。
しかしそれにしても、フランスでのアニメ人気は想像以上だった。昭和~令和にかけてのアニメの主題歌を日本語で私より上手に歌うし、知識も豊富でこちらは圧倒されるばかりだった。
私がフランスで好評だったのは、フランス語がまったく喋れないにも関わらず、オリジナル曲をフランス語で歌うという無謀さが逆に良かったのかもしれない。
現場は、お荷物以外の何者でもなかった私を抱えててんてこ舞いだったが、とにかく無事に済んで良かった。
『でいごの花の満開の向こう』というオリジナル作品をフランス語で歌ったときは、泣いている方もチラホラいらしたので思いは十分に伝わったと思う。まさか全員が客席で玉ねぎの皮をむいていたとか、目薬をさしていたとかしたわけでもないと思いたいのだが…。
フランス語について思ったことは、フランス語って宮古島のオジーちゃんオバーちゃんが話す古い方言に似てるな、ということである。私は、宮古島の古い方言は数回ほど耳にしたことがあるくらいで、話したりすることはできない。しかし、聞いた感じ、単語の発音といい文章のイントネーションといい、フランス語に近い気がした。
とにかく、宮古島にはパリ(※1)があるくらいだから、似ているのは当たり前かもしれない。(※1 パリ=宮古島の方言で畑の事)そうすると、私は「パリ生まれのパリジェンヌ」ということになる。日本語に訳すと、「畑生まれの田舎娘」になるけれど。
歌は流暢なフランス語なのに会話は一切できないという矛盾する私を、お客さんは最後まで理解できない風でありはしたが、ともかくライブは大盛況だった。フランス語で歌えたのは沖縄在住で「アキサミヨー!(沖縄の方言でなってこった)」が口癖のフランス人の知人の尽力によるものである(Pさん、ありがとう)。発音からイントネーションまで、私がフランス人になったかと思うくらい細かく丁寧に教えてくれた。
しかしなぜか歌はフランス語で歌えるのに、会話はボンジュールと3フレーズくらいで後ほとんどできない。歌詞を覚えれば自然とフランス語力が身に着く、という安易な予想と裏腹に歌詞を覚えても会話は成り立たないということがよくわかった。それが出発の二週間前の事だった。気づくのが遅すぎるよね~。
to be continue…