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大鳥の森

山形県鶴岡市の街からもっと山の方、大鳥集落。
私の友人たちが暮らす大鳥は、今でもマタギなどの山の文化が残っている。

山の中に入ると、そこはもう、人間のテリトリーではない。熊や猿や、たくさんの動物たちと、木々たちの声が聞こえてくる。

東京にいると、電車にバスに、明るい照明、賑やかな音、硬いコンクリートの地面。
人が活動している場所で、他の生き物の気配なんて、せいぜい誰かが連れているペットぐらい。

でも、ほんとは私たちだって、この地球の大地の上蠢いている一匹の生き物で、
なんてことはない、山に放り込まれたらどんな生き物より弱くちっぽけなやつなんだ、
ということを嫌でも突きつけられる。

大鳥にいく度、
静けさの中で、普段の生活のなかで忘れてしまっている感覚を思い出す。
擦り切れて鈍ってしまった感覚が、鋭く研ぎ澄まされていくのに近いかもしれない。

水の味、夜の闇、火のあたたかさ、草木の匂い、轟々と音を立てて流れる川。四季のなかにある匂い。

何にもないように見えて、こんなにも豊かなものに溢れている。

豊かな時間が流れている。

街の中にいると、あまりにも沢山の選択肢と、情報の洪水の中で
見えているようで見えていない
通り過ぎてしまっている大事なことが
山ほどある

本当は、もう少し
深く呼吸をして
目を閉じて
ゆっくり味わうべきものが。

大鳥で友人たちと過ごしていると、
そんなことに気づかされる


photo by Takayuki Sasagawa


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