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夜10時のパンケーキ


皆様、お久しぶりです。

お元気でしたか?

ひさしぶりの「旅ごはん」!   2021年になってしまいました。


最近、美味しいもの食べていますか。

自分を甘やかしていますか。

あたたかいごはんは、きっと誰かの1日を救ってくれる。

そう信じて今日も、始めたいと思います。


2020年、コロナが世界に蔓延し、旅に出ることが難しくなってしまった日々。

私にとって、旅は日常で、

というか常に動き回っているのが通常運転だったので

会いたい人に自分から会いに行けない日々は、なかなかしんどいものでした。

そんなとき、今までの旅を思い返してみると

そこには必ずと言っていいほど「ごはん」があり、

それを誰かと食べたり、1人で味わったり、大事な思い出があって

それは、私の人生のなかの、大事な「ひとかけら」だったり。


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去年の2月は、山形へ行っていたのでした。

山形の大鳥に通いながら、舞台の構想を練っていて、

雪の中、自然の音をとったり、雪の中で踊ってみたり。

豪雪地帯の大鳥地区ですが、2020年は珍しく雪が少なかった。

それでも、関東にすむ私からしたら、大雪だったけれど。笑


雪があたりを包むと、あのなんとも言えない無音の世界が広がっていて

家の中にひとりでいると、薪ストーブの薪が時折パチパチッと弾ける音以外、何の音も聞こえない。

そんなシンとした世界の中で、ひとりぽつんと

いろんなことを考えていたのでした。

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大鳥の友人たちは、雪に慣れているのでなんのその。

極寒の中、日々忙しく動いている。

夜になると、薪ストーブのある居間で、みなそれぞれ自分のことをしていて、

その静かな時間がとても好きなのでした。


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山形の姉ちゃんは、とても料理が上手な人で

私にとって山形の味といえば、蕎麦でもなく、さくらんぼでもなく、

この人の味なのです。

そんな私たちは食いしん坊。

早くにご飯を食べて、長い夜を過ごしていると、

なんだかむくむくと食いしん坊の欲が湧いてきます。


「・・・なんだか甘いもの食べたいね。」

夜、もう10時を過ぎている。

「・・・うーーん、10時かぁ。(一応、普通は食べないよね。)」

「・・・いっか!パンケーキしちゃうか!」

いそいそと寒い台所から計量カップ、小麦粉、バター両手に、ボウルにあけて、牛乳いれて、混ぜ合わせる。

ホットケーキミックスもないから、なんちゃってパンケーキで薪ストーブの上にフライパンを乗せ、じっと見つめる。

「・・・ふくらまないね。」

「・・・・そうだねーやっぱり今度はホットケーキミックスかなあ。」

「・・(待てない)ね、もう大丈夫?」

「・・・よし!食べるか!」

夜中の10時からパンケーキを食べる女2人。

罪悪感と幸福感のせめぎ合い・・・!

しかし!

しんしんと雪が降り積もる山奥の小さな家の薪ストーブのある居間で食べるこのパンケーキよ!

それが、とっても幸せなのです。

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別に特別なごはんじゃないんです。

とっておきのレシピがあるわけでもないんです。

でも、その人たちと過ごす時間が

そこにごはんがあって、なんだか幸せな時間があって、

それは、いつも同じわけでもない

もしかしたら、もうやってこないかもしれない

いつか、終わってしまうかもしれない

それでも、今でも鮮明に残るような

そんな、かけがえのない一瞬が

人生の中にいくつもあって

それが、私にとってかわることのない財産なんだ

と思ったりする。


コロナの中、お正月も実家に帰れない人たちや

遠く離れていて、会いたくても会えない人たちや

1人でずっとごはんを食べている人や

いろんなところで

いろんな思いを抱えて

今日も、ごはんを食べている。


でも、きっとひとりじゃない。

どこかで、誰かも、そんなことを思って、

どこかで、つながっている。


だから、あたたかいごはんを、食べよう。

特別美味しくなくていい

買ってきたものでもいい

きっと、もしかしたら今日のごはんを

いつか思い出すとき

それが、「思い出ごはん」になっているかもしれない。


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今回久しぶりに「旅ごはん」を書く中で、今までの記事を見返したりしていた。

そうして、自分のこれまでの「ごはん」を思い返していると

なんだか、辛い思いをして悩んでいた日々にも、こんな思い出になっていたのか、、と驚いたりして。


京都での猛暑の日々、市バスに揺られて通った稽古場。

悔しかったこと、それでも挑戦し、もう一度舞台に立って感じたこと、舞台裏からみていたシニアのおじいちゃんおばあちゃんたちのかっこよさ。

静岡の劇場で、テクニカルのことなんて全くわからず、埃まみれになりながら、必死に自分を奮い立たせていたあの頃。

フランスやイタリアやスコットランドの舞台制作チームと働いて、世界のこと、自分のこと、たくさん考え発見して、決断したあの時。

大事な友人に支えられ、そして今でも、10年前の私のまっすぐなエネルギーにハッとして、背中を押された。


曲がりくねって、自分でもどこを歩いているのかよくわからなくなりそうで、悩んで転んで、泣いたりやけになったり。

それでも、そんな自分を誰かにさらけだすことができずに、ひとり折れそうになったりする。

それでも、どこかで友人たちがみてくれていたり、

手を差し伸べてくれたり、

おいしいごはん一緒に食べてくれたり、

旅の中、話を聞いてくれたり、

大丈夫だよ。

って、そんな私の背中を押してくれて

なんとかここまでえっちらおっちら歩いてきて。

自分1人で生きてはこれなかった。

生かしてもらっている

そのことを忘れちゃだめなんだよな。

といつも思う。


フットワークの軽さだけは、胸を張って言える私の持ち味。

だけど、その身軽さが発揮できない今。

でも、だから何もできないわけじゃない。

きっと、今できることがある。

この「旅ごはん」を始められたように、

少しずつでも、一ミリずつでもいい。

誰かに届けていけるように、

手を動かし、足を動かし、身体を動かし

今年もやっていこうと思う。


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そんなこんなで、今年はどんな「旅ごはん」をご紹介できるでしょうか。

あなたの「旅ごはん」はなんですか?

いつか、お茶をのみながら、聞いてみたいなあ。


いつか、こうやって色んな人と

みんなでおいしいご飯を囲みながら、あれこれ話せる場所をつくるのが

私のひとつの夢です。


今まで自分の人生には関わりのないような人が、

ふいにひょこっと、旅の中で出会ったりする。

そして、これまでの自分の人生について、話せてしまったりする。

それが、旅の醍醐味。

人生の面白さ。

だと、私は思います。


そんなふうに、人に出会っていきたい。

これからも。


さて、あなたの今日のごはんは何でしょう。

あの思い出ごはん、今度いつ食べれるかな、

なんて思い出しながら

今年も一緒に、日々を歩んで行けたらと思います。

それでは、Bon Appetit!

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Photo by Ben Matsunaga


HANAICHI HP↓


2021年、今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!


2021.2.10.

もなみ

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