かふね

新社会人

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最近の記事

明けぬ夜でも

私には、好きな曲が沢山ある。 もとより、好みのアーティストはいてもこだわりは無いため、ジャンルの偏りはあれど様々なアーティストの曲を聴く方……だとは思う。 それでも、一度曲にハマると当分はその曲だけを聴き続けるので大体一週間くらいで飽きてしまう。 そしてまた新しい曲を探し、その曲を聴き、使い捨てる。 そんな私にも、いつ聴いても心が落ち着くような、それでいて鼓舞されるような「マイ応援ソング」のようなものがある。 米津玄師さんのリビングデッド・ユースだ。 この曲は、確か

    • ピザ

      私は一人暮らしをするまで、宅配ピザを食べたことがなかった。 私の家族は添加物やら健康やらに口うるさいので、宅配ピザなんかは絶対に頼まなかった。 だから、家に投函されたチラシを見ては、自分が頼むなら……と色んなトッピングやサイドメニューを選んで、理想のオーダーに夢を膨らませていた。 そのうち「一人暮らしを始めたら宅配ピザを食べる」のが夢になった。 その夢が叶ったのが今年の五月五日。 私の誕生日。 事前にネットの友人と同じ時間にピザの宅配を頼む約束をして、オンラインピザ

      • 体温

        実家で、パンダマウスを飼っている。 名前の通りパンダのような柄をした小さいネズミで、ペットショップではなかなか見かけない比較的マイナーな動物だ。 とある動物園で、元々飼っていたデグーという齧歯類の動物と一緒のゲージで飼っているのを見て、我が家でも共生させられたら、と飼い始めた。 結局、あまり性格が合わず同じゲージで飼うことは無かったのだが。 私が昨日の夜実家に帰ったのは、来週帰省するまでにその彼の命が持つかどうかが怪しいからだ。 彼は夏頃から体調を崩していた。寄生虫に

        • 冬の朝、建物に反射して飛び込んでくる朝日が好きだ。 誰にでも平等に昇ってくるはずなのに、あの光に照らされると、まるで自分が物語の主人公かのように感じる。胸がしゃんとする。 去年までは最寄り駅までは自転車で通学していたので、風邪を切って走っていたからかかなり寒かった。 早く自転車を降りてしまいたくて毎日がむしゃらにペダルを漕いでいたけれど、それでも朝日に見惚れた一瞬だけは、その足がゆっくり進んでいった。 一人暮らしを始め、駅まで歩くようになった私は、もう以前のような寒さを

          残業

          私の部署は、残業時間が全体で一番多い。 他の部署の人が殆ど居なくなっても私の部署の人は一人も帰っていないなんてザラだし、新入社員の私は月の残業時間が同期の3倍もある。 それでも私は、部署の中ではかなり早く帰してもらっているので、本当に先輩方には頭が上がらない。 しかし、そんな上司の言葉で納得いかないものがある。 私にはシスター(私の会社では部署に配属されてから面倒を見てくれる専属の上司をこう言う)がいて、彼女に対する周りの評価や言葉に、私はずっと違和感を抱いている。

          希死念慮

          漠然と、早死にしたいという願望がある。 もっと詳しく言うなれば、30歳までには死にたい。 別に、毎日が辛いわけではない。むしろ、実家にいた頃は母子家庭ながらに不自由のない暮らしをさせて貰っていたし、新社会人として働く今も、仕事の悩みなんて殆ど無いのだ。 しかし、死んでしまいたい。 できるだけ早く。 毎日出勤して、2、3時間残業して、帰って、たいして美味しくない自炊飯を食べて、寝る。そしてたまに友人と遊ぶ。 こんな生活でも、この世界の誰かからしてみれば、望んでも手に入らな

          希死念慮

          絵を描く

          就職するまでは、毎日絵を描いていた。大袈裟な表現ではなく、本当に。旅行先でも欠かさず描いていたくらいなのだから。 幼い頃から絵を描くことが好きだった。 それこそ文字通り毎日描いているわりには大して上手くはならなかったのだが、それで筆を折ることなんて無かった。趣味だった。 就職して、時間が無くなった。 「絵を描く」という行為は、時間をかけても満足のいくものが出来るとは限らなかった。 ゲームは、プレイした時間きっちり楽しめた。 私は、ゲームにのめり込んだ。 「絵を描くことに

          絵を描く

          スリザリン

          夢を見た。 よくわからないが、私と友人達は山奥に行かねばならず、ひたすら森の中で車を走らせていた。 程なくして、大きな白い狼のような怪物が車を追いかけてきた。私は後部座席の中央。両サイドに学生時代の友人。化け物はみるみるうちに距離を詰め、ドアを破り、私の左に座っていた友人を引きずり出した。 助けてと泣き叫びながら必死に車にしがみつく友人。パニックになる車内。 私はこの時点で、今起きている惨状は夢だということがわかっていた。 そんな私は、「夢ならいいか」と友人を見捨て

          スリザリン