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Catcher in the woods

イキウメ『人魂を届けに』をアーカイブ配信にて視聴しました

1.あらすじ


舞台は青木ヶ原をイメージしたと思われる絶望した人が迷い込んでくる森の中の《お母さんの家》
刑務官である主人公は、〈お母さん〉の〈息子〉の人魂(ひとだま)を届けに来た
絞首刑の瞬間、魂が飛び出してきたらしい
《お母さんの家》には、街を飛び出し森に迷い込んできたたくさんの男たち=〈息子たち〉が寝込んでいる
舞台は、男たちがふらっと立ち上がり色々な役をこなしながら、大切な人を失ったり心を傷つけられた男たちそして主人公がここまでたどり着いた経緯が暴露されていく

2.感想


一瞬で魂が吹き込まれたように、女性役や息子役など様々な役をこなしていく俳優陣の演技力が圧巻👏
『船や飛行機も使えない人がいる』って所は、この日本という島国あるいはもっと狭い範囲で、生まれた場所からなんらかの事情で出られない人もいるってことをハッとさせられた
1番びっくりしたのは、「女性役や息子役など様々な役をこなしていく」構造のため、〈お母さん〉役を男性が務めていることに何の疑問も抱いていなかったが、それが劇中で「違和感のある事実」として言及されていたこと
つまり、劇中においても、実際に〈お母さん〉は男性であり、それは特異なことであるという指摘が、現実と演劇の境界線がぐちゃぐちゃになる感じがして面白かった
元々は〈お母さん〉が‘Catcher in the woods’なんだけれども、その意志を継いで〈息子たち〉の1人が同じ家を作ろうとしたり、主人公が死刑囚をcatchすることにこれからの生きがいを見出したりと、新たなるCatchersが生まれていることも興味深かった

総じて、誰にでも全力でおすすめできる作品!
本当に素晴らしかったし、大好きな作品になったし、観終わった後何故かほんのり優しくて穏やかな気持ちになれる舞台でした!

3.備忘録


「嘘というのは実に気持ち悪いものだよ。言葉が現実を裏切るのか、現実が言葉を裏切るのか。」
天気予報が晴れだったとして、実際は雨が降ったとする
それでも、晴れの予報は当たったと主張する人がいる
それは、嘘というよりもはや狂気だ
しまいには、〇〇ミリ以上が雨だと言い出す
これじゃあ、雨なんてほとんど無かったことになってしまう
このとき、現実よりも言葉の定義が優先されている

死刑に犯罪抑止力がないことは証明されている

街を出たくて、森に入った
だけど森の奥にあったのは海だった
僕は絶望した
どこにも行けないとわかってしまったから
「船や飛行機に乗ればいいじゃないか」
乗れない人だっている!!!
「ごめん」

あなたってまるで魂がない人みたい
そういうとこよ
わかる
それも、わかる
それも、、わかる

「良い奇跡も悪い奇跡も、どう受け取るか次第」

3発の弾丸のうち、1発を膝に喰らった俺は《大当たり》だ

男はお母さんにはなれない


息子を奪われ、妻を奪われ、身体の自由も奪われた
これからは、落ちてくる受刑者をcatchする
足が悪いのに?
そういう者に、僕はなりたい

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