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#古美術探訪 / 珠洲焼 渋谷で中世日本海文化の遺物に出会う

珠洲焼は、平安時代末期から室町時代後期にかけて能登半島の先端の地域(現在の珠洲市のあたり)で作られた焼きものだ。15世紀末に姿を消し、幻の古陶とされてきたという。

今回、渋谷ヒカリエの8階で20点ほど展示されていたので見に行ってきた。

文様が可愛い。珠洲焼は中世の焼きものでは珍しいほど装飾を施してきたという。中世の焼きもので装飾といえば、日本六古窯のひとつ、常滑焼の三筋壷(さんきんこ)も思い出す。

日本海沿岸の地域には、大陸から流れてきた人に関する言い伝えが多い。文様には、日本海をはさんで向かい合う大陸文化の影響もあるのだろうか。


今回一番良かったのが、この欠けた壺。中世の墓から掘り出されたという。欠けた断面をみると、繊細な「こわれかた」をしている。時間の作用で人間性が捨象されたものに宿る美がある。

車輪文壺(13世紀前半 鎌倉時代)

焼きものという趣味自体、窯の中で焼かれて生じる化学反応の、コントロール不可能な過程を経て、自然の力によって作られる「意外なもの」を味わうものだ。そういう自然の作用と、同じように非-人間的な時間の作用との重ね合わせを鑑賞するのが、古美術としての焼きものの鑑賞法の一つだ。


帰りに渋谷の上空から見えた世界に流れる時間を感じ、中世と現代とのあいだにある時間性について考えた。




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