見出し画像

「大地の芸術祭の里」越後妻有に行ってきた(前編)

この夏、「大地の芸術祭」で有名な新潟の越後妻有(えちごつまり)に行ってきた。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は2000年から3年に一度開催されている国際芸術祭で、いまや全国各地で開催されるようになった芸術祭の先駆けだ。

昨年に第7回が開催されたため、今年は開催されていないが、過去のたくさんの作品は展示されたままで、いつでも観ることができる。

今回わたしは「大地の芸術祭プレイバックツアー」という公式のバスツアーに参加した。通年で運行しているため、思い立ったときに参加することができる。

集合は10時に越後湯沢駅。到着すると激しい雨が降っていた。

バスの車内でエリアの説明を受ける。バスガイドをされているのは地元出身のボランティアの方だった。このときにはもう雨は止んでいた。

山間部のトンネルを抜ける。独特のスリットが入って自然光が差し込んでいた。インフラでもこういうところのデザインには地域性がある。

いくつかトンネルを抜けると、見晴らしの良いところに出た。
内海昭子さんの作品「たくさんの失われた窓のために」(2006)

妻有の風が作品の表情を変えていく。

河岸段丘の上の空き地にぽつんと置かれたこの窓からは、妻有の風景が見える。鉄塔と電線が混じっている。妻有は信濃川の流域にあたり、水力発電所が点在している。その電力は首都圏にも運ばれているらしい。

フィンランドのカサグランデ&リンターラ建築事務所による公園「ポチョムキン」(2003)。もともとは廃棄物が不法投棄されていた場所だったらしい。

ランチの場所、上郷クローブ座に到着する。廃校となった旧上郷中学校を2015年夏にリノベーションして生まれたパフォーミングアーツの拠点だ。
可愛い人形たちのパフォーマンスで迎えてくれた。

教室をリノベーションした部屋でランチを頂く。
素材はすべて地元でとれた新鮮なもので、割烹着を着た気さくな女衆(おんなしょ)さんたちが料理を運んできてくれる。

前菜と冷製のコーンポタージュ。魚沼産のとうもろこしは有名らしく、調べてみるとなかなか高級品だった。もちろん驚くほど美味しい。

料理の合間に、お芝居がある。雪国越後妻有の昔話や言い伝えに関する内容で、次にくる料理が、妻有という地域の歴史の中でどのような意味や由来を持つものなのかという導入にもなっていた。

昔の人の気持ちを想像しながら料理を頂く経験は特別だった。

有名な津南ポークをじっくりと低温で調理したハム。「クローブ座」の名前の由来にもなっているクローブというスパイスを使っている。固すぎず柔らかすぎず、という調理の塩梅がなかなか難しいとのこと。

おにぎり。お米一粒一粒が美味しい。丁寧に、心を込めて握られているのが伝わる。きゅうりの漬物も甘くてご飯が進む。

デザートは人参のゼリーだった。

ランチを終え、午後のプログラムへ向かう。昇降口の懐かしい下駄箱。

前編はここまで。

後編は、つい先日まで新国立美術館で回顧展が開催されていたクリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマンによる廃校全体を使ったインスタレーションの話から。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?