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水瀬先生、ここから先は違法です 第二話

◯誰もいない空き教室

見つめ合っている水瀬と菜乃花のヒキ

菜乃花「いっくんは……先生でしょ?捕まっちゃうよ……」
水瀬「そうなんだよ。教師が生徒に手を出すわけにはいかない」
イタズラに微笑む水瀬
水瀬「でも、菜乃花が誰にも言わなければバレない」
妖美な笑顔の水瀬、アップカット
菜乃花「そ、そんな……」
水瀬「教師は好きな人に、愛を伝えただけで捕まるのか?」
菜乃花「教師の立場上、生徒に愛を伝えたらだめだよ?」
水瀬「そんなこと、刑法の何条に書いてあんの?」
菜乃花(子供みたいな屁理屈並べてる……)
いつもの大人びた様子と違う水瀬に戸惑う菜乃花。
水瀬「俺はかなりの優良物件だぞ?仕事は福利厚生もしっかりしてる高校教師。おばさんも賛成だってさ!」
菜乃花「おばさんって……お母さんのこと?」
水瀬「そうだよ。おばさんに聞いてみたら……」


〇回想・菜乃花母と水瀬の会話

菜乃花母、水瀬。
向かい合って話している様子

菜乃花母「一咲くんが菜乃花の旦那さん候補⁉」
水瀬「はい……そのために安定した教師になろうと頑張りました」
菜乃花母「でかいした!変な男に持ってかれるより大賛成だよ!菜乃花のこと落してちょうだい!」
ぐっとサインをしながら笑う菜乃花母

(回想終了)

〇元の現代

呆れた様子の菜乃花
菜乃花「はあ……おかあさん」
水瀬「親御さんの了承もあるし、法律的にもクリアしてるってこと!」
イタズラに笑う水瀬
水瀬「成人年齢が引き下げられたのも……俺の愛が法律を変えたんだ」
菜乃花(そんなことで法律が変わるはずない。いっくんは何を言ってるんだろう)

菜乃花「いっくんは念願の教師になったばかりでしょ?こんなことで教師クビになったりしたら……」
水瀬「いいこと教えてあげよう。菜乃花が言わなければ、クビにはならないよ」
不敵に笑う水瀬
水瀬「それに、俺が教師になったのは、安定した職について、菜乃花の夫に相応しくなるためだから。そこまで教師に執着してない」
菜乃花「え、え――」
水瀬「俺が執着してるのは……菜乃花だけ」
妖美な笑顔の水瀬のカット
菜乃花、顔を真っ赤に染める

水瀬「俺のこと好きになるよ?」
菜乃花「……」
チャイムが鳴る音
水瀬「おっと、戻らないと。菜乃花、またな」
空き教室から出ようとする水瀬
ひらひらと手を振って、空き教室を出る。
菜乃花、力が抜けたように、その場にしゃがみ込む。

菜乃花(もう、頭がついていかないよ……)


〇場面転換・放課後・教室

誰もいない教室。日誌を書いている菜乃花

菜乃花(日直なんてついてないなあ。いっくんに会わないうちに日誌終わらせて帰ろう……)

教室のドアが開く音と同時に、水瀬が教室に入ってくる
あたりまえのように菜乃花が座っている前の席に腰を下ろす。


菜乃花(前の席に座らないでよ、距離が近い)


水瀬「なんか、こうやって菜乃花と学校にいられるなんて、夢みたいだなぁ」
噛み締めたように言う水瀬
菜乃花「大袈裟だよ」
水瀬「ははっ、困ったことあったら言えよ?教師という権力で助けてやれないことはないぞ?理不尽なことも助けてやる」
菜乃花「……生徒に権力を振りかざさないでください」
水瀬「真面目だなー。俺が菜乃花の立場だったら悪いことも考えるけどな?菜乃花が『付き合う代わりにテストの答案教えて』とか言うタイプじゃなくてよかった」
菜乃花「え、……そ、そんなこと」
菜乃花(なんと、そんな作戦があったのか)
菜乃花(ダメ、ダメ。惑わされないようにしないと)
万年赤点ギリギリの菜乃花、一瞬気の迷いが生じた。



水瀬「ははっ、教えて欲しそうな顔してるな?悪いな。先生という立場は辞めたくないから、答案は教えられない」

まともなことを言うので菜乃花は少し驚く。


菜乃花「先生辞めたくないなら、生徒に変なこと言わない方がいいよ?」
水瀬「なに言ってんの?俺が教師辞めたくないのは、菜乃花のためだから」
菜乃花「へっ?」
水瀬「菜乃花との幸せな未来予定図のために、真っ当な教師をしてるんだよ?」
菜乃花「……(顔が真っ赤に染まる)」

水瀬が吐く言葉は菜乃花には刺激が強すぎる
菜乃花の心臓はドキドキと激しくなる。


水瀬「答案は教えてやれないけど、勉強はいつでも見てやるよ?……みんなには秘密の特別授業」
菜乃花「な、水瀬先生を狙ってる女子にバレたら、なにされるかわからなからやめておく」
水瀬「それはこっちの台詞だけどな。まぁ菜乃花に手を出す男がいたら……俺が権力を使って、消すから心配すんな」
菜乃花(今のいっくんなら、ほんとうにやりかねないので恐怖しかない)

菜乃花「いっくん、今日の朝みたいに学校とかで呼び出しはやめて?」
菜乃花(やっぱり、学校で生徒と先生がこんな話してるのよくない……)
水瀬「ふーん、俺副担任なのに? 先生として呼び出ししても?」
菜乃花「勉強や進路のことで、なにかあれば担任の先生に相談するから!」
水瀬「……担任の先生ね、」
意味ありげに呟く水瀬
水瀬「……分かった。距離感を保つよ……ただ、俺が必要になる時が来るかもな?」
悪戯っぽく笑う水瀬。

菜乃花(私は知らなかった。いっくんの言葉の意味を――)
菜乃花(そして、私はこの言葉の意味を、早くも知ることになる)


第三話

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