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人を好きになったら自己肯定感が失われた話 14

◾️2月 荒む心

彼の誕生日の前日、彼が猫カフェに行った画像をあげていた。
うーん、きっと後輩の女の子なんだろうな。

確証もないけど、彼は1人でこんなところに行ったりしない。
男友達と行くとも思えない。
そうすれば、出てくる答えは1つだった。

その内しばらくすると、彼は裏垢に「先延ばししてるけどいつかこのまま付き合っちゃうのかな」と言って、
彼のメインのアカウントからもブロックされた。

ブロックされることには慣れていたけど、
いつか付き合っちゃうのかな発言は許せなかった。

私でも、待ってる女の子でもなく後輩の女の子を選ぶ理由が分からなかった。
好きじゃないって言ってたのはいつの間に覆ったのだろう。
私よりずっと短いその子を選ぶなら、
初めから私に勝ち目なんてなかったじゃないか。

その頃私は隊長や他の男子と交流を増やしていて、
バレンタインも彼のことは気にせず、
その交流していた男子達に義理でお菓子をあげることにしていた。

確かクッキーを作ったのだけど、
1人の男子に小馬鹿にされて腹が立って結局隊長に2人分あげることになった気がする。

しかし私達はここでは終わらなかった。

2月後半、また彼から急に連絡が来て裏垢からフォローされる。
私が本当にいなくなると、
手駒が欠けるから嫌だったんだろう。

彼とは3月の上旬、遊びに行く予定になった。
彼のことは気にならないというと嘘になったが、
もう振り回されるのは御免だと思っていたし、
いい加減愛も薄れていた。

それだけ彼は私を傷つけた。

「3月入ったら諦めるしかない」
そう彼がツイートしたのを見るに、恐らく彼の好きな女の子の受験も困難が立ちはだかっているのだろう。
以前はこのツイートを見たら、きっと嬉しく思っていたのだろうけど、
3年待ったのに後1ヶ月待てないという発言がどうにも都合よく映って、
手軽に乗り換えようとしているだけなんだろうなと呆れていた。

◾️3月 出会いと別れの季節

3月1日。私はまた隊長の家で横になってテレビを見ていた。
健康青汁!みたいな嘘臭いドキュメンタリー仕立ての長いCM(失礼)が流れる中、
私は告白された。
私は、OKをした。

疲れ切った心を癒してくれたのは隊長だった。
もう彼に振り回されたくなかった。
彼への愛は、いつからか執着だけになっていった。

3日、「付き合う前から決めていたから会うだけ会ってくる」と彼に許可をもらい、
私は何ヶ月かぶりに彼に会った。

彼には隊長とのことは言わなかった。
これ以上人間関係のゴタゴタを味わいたくなかった。

遊ぶ場所もプランも全部私任せ。
それは私を信頼しているわけではない。
彼は笑って言うのだ。
「1号と2号どっちが俺を楽しませられるか勝負ね」と。
1号は私で、2号は後輩の女の子だった。
名前すら呼ばずに数字扱い、しかも勝手に競わせて、王座で1人ふんぞりかえっている。

彼の機嫌を損ねるのは私の中でトラウマになっていて、
何事もなくその日を終えられるように祈りながら、
隊長とのことを言わなかったのは、私なりの報復でもあった。

お前はいつでも自分だけだと思っている哀れな男だ、と。

いつからお互いこんなに歪んでしまったのだろう。
楽しく苦しかった夏は、
どんなに正しくなくても2人とも真っ向勝負をして、
悩んで、もがきながらも自分達なりに誠実に生きていた筈だったのに。
それともそんな思いさえ、私の妄想に過ぎないんだろうか。
彼を天狗にさせてしまったのは彼の「一途に好きでいてほしい」という思いを真に受けて行動した私のせいなのだろうか。
ならどうすれば良かったというのだろう。
始まった瞬間から今まで1年間、長い間をかけて最悪なゲームオーバーへと進んでいただなんて知らなかった。


当日のデートコースは、
日本科学未来館
( https://www.miraikan.jst.go.jp/m/ )

ダイバーシティ東京
https://mitsui-shopping-park.com/divercity-tokyo/ )

チョコレートショップ
(名前を忘れてしまった、、、)
とかだったと思うんだけど、
まーーーこれが上手くいかなかった。
調べたら今は出てきたんだけど、まず日本科学未来館が子供向け施設すぎてただ見て回るのがめちゃくちゃつまらないという……。
1〜2時間くらいつぶれると思ってたけど、確か30分くらいしかいなかったと思う。
私的には科学系の体験とかあるのは絶対楽しいよなぁと思っていたんだけど、全くそういうのはないっていう…。
彼もなんとか盛り上げてくれていたけど、私の中ではもうどうしよう状態。
そしてお昼ご飯にかったけど、精神面からか気持ち悪くて全然食べれない。
彼は元から結構食べるのが早いから、
先に食べ終わって見られる居心地の悪いやつを味わいながら無理やり飲み込んだ。

ウィンドウショッピングも早く終わってしまうし、
彼が「××(後輩の女の子)はマジで俺をいい気分にさせるのが上手いんだよなぁ〜、アイツと買い物行くとマジで色んなもの買っちゃうから金がなくなる」「今日着てるコートもアイツと見たやつだし」と信じられないデリカシーない発言をしたため、
私がムッとした表情をすると今度はなぜか彼が「何その顔」とブチ切れるのだ。
彼が以前ボウリングをしていて、私はその姿が見れなかったのでボウリングがあるダイバーシティを選んだはずが、彼に「やりたくない」と言われてしまい、
予定が狂うし、チョコレートを食べに向かう電車は無言で空気も重く、しかも16時頃向かう予定だったのにその時点で14時とかだった。
これが世紀の大絶望……。

駅に着いたのは良いが、彼の機嫌が悪い。
今日これ以降することもないし、これ以上一緒にいるのが苦痛だった。
全然楽しくない。
サークルも私は続けることになったけど、
彼は来年もという声はかからなくて(かかる人はめちゃくちゃ少ないし、彼は校舎の関係もあって特に少なかった)、彼は不貞腐れていたからサークルの話をするわけにもいかず、
そうするともう何を話したら良いのか、
というか何故話さないといけないのか分からなかった。

この後も最悪な気持ちが続くよりは、と思い私は「もう今日解散する?」と声をかけた。
するととんでもない形相で怒り始めたのだ。
彼の言い分としては、つまらなそうな顔をしまくるお前がうざいけど、チョコレートを食べてなんとか機嫌を直してやろうと思ったのにお前はなんでそんなことを言うんだ、そんなこと言うならもう知らねぇ勝手にしろ、とのことだった。
あぁ、もう私と彼は本当に合わないのだ。

彼のためにと作ったフォンダンショコラだけでも最後に渡そうと思ったけど、いらねぇ、と吐き捨てられた。
まぁこれは良い出来だったから、彼がいらないというなら良いのだ、それで。

私はなんだか急に笑えてきた。
隊長に電話をして「ごめん、今解散したからそっち行くね、多分もう2度と会わないと思う、私もすっきりした」と笑いながら話した。
こんなに呆気なく終わるものなのかと思ったけど、
未練と執着が全部消え去って、これまでにないくらいすっきりした。
今日この日が上手くいかなくて良かった、とそう思った。

彼のために作ったフォンダンショコラは隊長と一緒に食べた。
彼と私のことが気になっていただろうけど、
彼は何も聞かずに「美味しいね」と一緒に食べてくれた。

恋愛を乗り越えるためにした筈の恋愛で酷く傷ついて、
私はまた別の恋愛に走る。
ようやく少し落ち着けた気がした。

◾️後日談

とは言っても、その後しばらくは彼のアルバムは消せなかったし、裏垢も暇さえあれば確認していた。
全部一気に0にはできなかった。

Twitterを見ると、彼は「初恋を思い出した」とか言って第3の女の存在を匂わせていた。
どうやら出会い系を始めたらしく、
私は落ちるとこまで落ちたなと思っていたがなんと気になった相手に振られたというのだ。
いい加減に少しは目も覚めただろうかと思っていたけど、
散々他の女に手を出して、傷つけて、待てないとか言って約束も何もぐちゃぐちゃにした癖に「これであの子に振られたらどうするんだろう」と彼の好きな女の子に今更媚びて、何だかどこまでもとてつもなくダサかった。


そんな中後輩の女の子からある日電話が来て、初めてのことだったのでどうしたのだろうと思って電話に出ると「○○さんのこと諦めることにしました」と言う。
「私もとっくに喧嘩してもうどうでもよくなってるよ」と言ったが、彼女もその話は聞いていたらしい。
「それでその後別に好きな子ができた、って言われて私もう無理だって思って」と彼女は続けた。
それが例の出会い系の女の子のようだった。

彼女は多分、彼に元々好きな女の子がいたことは知らないのだろう。
可哀想だったし泣き続ける彼女に「もうやめよう、私達がこれ以上傷つく必要ないよ」と話した。
彼女と私は仲が悪いわけじゃなかった。
お互いの好きな人については知りながら話さなかったけど、むしろかなり仲の良い方だった。
私は彼女を心配に思う気持ちと、
彼の思い通りに事が進んで欲しくない気持ちと、
私が諦めたゲームをクリアして欲しくない気持ちみたいなものがぐちゃぐちゃに混ざり合いながらずっと話を聞いていた。

結局彼女は彼に諦める宣言をしたらしく、その後も多少いざこざはあったみたいだけど、多分結ばれはしなかった。
彼が最初に私と付き合わなかった理由のひとつの待っていた女の子からも「関係やめよう」と言われたらしくて彼はあっという間に1人ぼっちになった。
裏垢のフォロワーを私だけにして、
1人になったというツイートを読んだことを確認したら私もブロックして、
とうとう彼のフォロワーは0人になった。

その後も他の女の子の名前がそのアカウントでは呟かれていて「**待てないわけじゃないけど、性欲からか誰でもよくなりそう」とかいう発言や、
「セフレほしい」「でもヤリマンは嫌だから俺だけがいい「「尽くしてくれればなんでもいい」みたいなクズ発言はあれど、
付き合ったという話もなければ、フォロワーが増えることもそれから2度となかった。
私や後輩の女の子が異常だっただけで、そんな男に本気になる人などいるわけがなかった。
いや、私や後輩の女の子でさえ、常に不安と寂しさと苛立ちを抱えていて、本当に幸せになれるなんてただの1度も思ったことはなかった。
いつからか彼を手に入れる、ことだけが目的になっていて、彼と今後一生幸せに生きていくことなど願いもしていなかった。
ずっと前から関係は破綻していた。
その場の快楽に溺れていたのは彼だけじゃなかった。

4月、ようやく心から捨ててよかった、とそう思って彼の全ての写真を消した。

今はもう私もツイート内容を確認していないし、多分ツイートはある日から滞っていたからそのままなのだろう。

私は彼のことをもう好きではない。
そう思っていたけど、なんとその年の年末、私達がかつて大喧嘩した12月31日に彼から連絡が来たのだ。
内容は「おい、俺が呼んでるぞ」というスタンプ。

私は隊長と付き合ったり別れたりを繰り返して、ちょうど安定していた頃で、
本当に全く付き合う気はなかったけど、通知欄の名前を見た瞬間心臓がドキリとした。
もう忘れたと思っていた感覚。
前までは見た瞬間返信していたけど、もうそんなことはしない。
朝に来たLINEを昼過ぎに返すと、やる気がないと怒られたけどその通りだったから何も言い返さなかった。

「彼氏が好きな人は?」
そう聞かれて「ほら来た、元カノ永遠に自分のこと好きだと思ってる現象だ」と思った。
私は「ないしょ」と返した。
正直に言って色んな人にあることないこと広まるのは面倒だった。
「なんてつまらない返信だ」「ペットにしてあげようと思ったのに」
と、彼は続ける。
私は「またペットはごめん」と言うと、それ以降連絡は来なくなった。
まさか断られるとは思っていなかったんだろう。
以前の私ならペットだろうとなんだろうと、彼の目に留まるなら喜んで頷いただろうから。
正式に付き合う気もなければ、友達になる気もないんだなというのが改めて分かって私もすっきりした。
勝ち目のないゲームに誰が挑むというのだろう。
永遠の2番手以下を受け止めて、愛を返す人などどこにいるのだろう。
夢か幻でも見ている人なら別だろうか。
分かりながら自分を騙す必要などないと知ったら戻りたいわけない道だというのに。
1度覚めたら2度と見ることなどないのだ。


しかし隊長を含めてそれ以降何人かと付き合ったり、
恋愛感情をぶつけられたりしたけど、
私はそれを素直に受け止めることができなかった。

それは私のポテンシャルのせいなのだ、と。

恋愛依存気味で、人が自分に好意を抱いているというのが分からないと存在価値が分からないくらい不安で、
それなのにいざ面と向かって好きだとか可愛いとか言われると気持ち悪くて仕方なかった。
そう、蛙化現象を起こすようになっていった原因も突き詰めれば彼とのことがとても大きかったと思う。
( 記事になってます↓ https://note.com/momupanpan/n/n2d19f3493e53 )

自分なんかには価値がない。
私はブスで人の機嫌をとることしかできなくて、
どんなに人を好きになってもその人に認められることはないんだ。
いつからかそう思うようになっていた。
私は結局「可愛くなかったから彼に選ばれなかったのだ」という結論に至ったのだ。
彼の性格の問題はあれど、彼は好きな女の子がいたし、告白されて振られもしていた。
1番は不動じゃなかった。
それでも私は1度もその座につけなかった。
きっと誰よりも好きだったのに、誰よりも尽くしたのに報われなかった。

どんなに愛を注いで必死になっても1度も好きだと言ってもらえなかった悔しさは、いつの間にか自信のなさに変わっていった。
蔑まれるほど安心したし、へらへら笑ってなんでもない振りをしている方が楽だった。

自分なんかを大切にする人は「私のことを本当に分かっていないから大切にしようとするんだ」とさえ思うようになった。
人目を気にして取り繕った自分を皆好きになっているだけで、私は本当はできた人間じゃない。
それが分からないなんてこの人は私のことを買いかぶりすぎている、表面しか見ていないのだ、と。


あれから何年も経って、私のことを稀に本気でめちゃくちゃ好きでいてくれる人が家族以外にもいることを、3年以上経ってようやく受け入れられるようになってきた。
けれど1年間感じた不安や、1度失った自己肯定感は今も多分完全に回復はしていなくて、
上書きをする度に何とか淡い記憶に変わっていっている最中なのだと思う。
「なんでそんなに自信ないの」といつか言われないようになりたい、そう思いながら毎日少しずつ他の人との思い出で空いた穴を埋めていく。

今でも連絡が来たらあの日のことを嫌なことも嬉しかったことも全部思い出してしまいそうで、嫌になる。
けれど連絡はもう来ない。
お互いに引き裂いた絆だから。


∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴

なんだかめちゃくちゃハッピーエンドでも痛快エピソードでもないけれど、
前に進む力をくれて、私を大切にして、肯定してくれる人がいるからこそ、
その人に恥をかかせないような私でありたいと、今は思えるようになりました。

私はこの痛い経験を教訓としてここに記しました…
が、思い出しまくって辛かった…。(何してんだほんとに)
長くなりましたが、初めてのマガジンでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


辛い恋愛をしている誰かの未来が少しでも明るくなりますように。



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